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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第2部 魔法が最強すぎてラスボスにも面白い女認定される悪役令嬢
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第26話 婚約者という設定

 煌びやかなシャンデリアが輝き、ワルツの旋律が舞踏会場を満たす。

 貴族たちの視線を浴びながら、私はカイル様の腕の中にいた。


(カイル様に手を差し伸べられて断るなんて、あるわけないよね!)


「リリアナ、君とこうして踊るのは久しぶりだね」

「えっ……そうでしたか?」


(私はカイル様と踊った記憶はないから、もしかすると私がリリアナになる前の話なのかも……)


「学院生活でなかなか機会がなかったからね。それに……今夜は君を独占できて嬉しいよ」


 ――な、何この甘い言葉!?


 カイル様は優雅に微笑みながら、私の手を軽く握り直す。

 彼の手のひらは温かく、心なしか少しだけ力がこもっていた。


「リリアナ、君の踊りは本当に美しい」

「そ、そんなことは……!」

「もっと自信を持っていいんだよ」


 彼の瞳が優しく細められた瞬間、ワルツのリズムがピークを迎えた。

 私はそっと目を閉じ、彼のリードに身を任せる――。


 ――そして、その一瞬を、多くの貴族たちが見ていた。


「見ました? カイル王子とリリアナ様!」

「やはりお二人はお似合いですわ……!」


「でも、正式な結婚の発表はまだなのよね?」

「そうよね。婚約者なのに、どうしてなのかしら?」


 貴族たちの間で、囁き声が広がっていく。


「まさか、何か問題があるのでは……?」

「もしかして、王宮が婚約の見直しを検討している……?」

「それとも、新たな婚約者候補が……?」

「……例えば、“紅の剣士”ライアン・ランツァ様とか?」


「!!!?」


 私は耳を疑った。


(え、ちょっと待って!? なんでライアンの名前がここで出てくるの!?)


 ダンスを終え、カイル様の温もりが少し離れる。


「確かに、リリアナ様はあのライアン様とも親しげに話しておられましたわね」

「もしかして、彼は新たな婚約者候補では……?」


「いえ、それはさすがに……」

「でも、最近の王国の流れを考えると……」


 ――なんでこんな話になってるの!?!?!?


 私は混乱しながらカイル様を見上げた。


「……カイル様、これは一体……?」

「……なるほどね」


 カイル様は冷静に微笑んだまま、貴族たちの会話を聞いていた。


「王宮の重臣たちが、僕たちの婚約をどう扱うべきか考え始めているんだろう」

「えっ!? つまり、どういうことですか!?」

「僕たちの婚約が既に決まっているのは事実だよ。だけど、今回の件でライアンの存在が影響を与えているみたいだね」

「影響……?」

「王宮の中には、彼を王国の“新たな戦力”として迎え入れたいと考えている者もいる。そして、その方法として――」


 カイル様は軽く私の指をなぞるようにしながら、静かに言った。


「……君との縁談を持ち出してくる可能性がある」

「ええええええええええ!?!?!?!?」


 私は思わず叫んだ。


(いやいやいや、何言ってるんですか!? 私、もうカイル様と婚約してるんですよ!?)


「ほう……そういう話になっているのか」


 その時、低く響く声が割り込んできた。


「っ!?」


 振り向くと、そこには――ライアン・ランツァ。


「噂というのは面白いものだな」


 彼はどこか楽しそうに微笑みながら、ワイングラスを揺らしていた。

 赤い液体が揺れ、まるで彼の瞳の色と同じように妖しく光る。


「ライアン、あなたまでそんな他人事みたいに言わないでください!」

「いや、俺には関係ない話だろう?」

「それがもう関係ないとは言えなくなってるんですよ!!!」


 私は思わず叫ぶ。


「今、貴族たちは“あなたが私の新たな婚約者候補かもしれない”って話をし始めてるんですよ!?」

「……ほう」


 ライアンが微かに目を細めた。


「それは、俺にとって悪い話じゃないな」

「ちょっとぉ!?」

「君は王子の婚約者なのは知っているが……貴族社会とは面倒なものだな」

「本当に面倒なんですよ! だから、ライアンさんも少しは空気読んでください!!」

「ふむ……」


 ライアンは私の手元を見つめ、ゆっくりと笑う。


「なら、こうしよう」


 彼は手を伸ばし、私の手を取り――


「“もし”君が俺を選ぶなら……その時は全力で迎えに来るとしよう」

「っ……!?」


 彼の深紅の瞳が、私をまっすぐに見つめる。


(な、なにこの展開!?)


 貴族たちは一気にざわめき、カイル様の眉がピクリと動いた。


「ライアン、それ以上の冗談は控えてもらおうか」

「冗談かどうかは、君が決めることじゃない」

「……!」


 さすがに展開が急過ぎる……!

 王子の婚約者である私をライアンと政略結婚させる?


 イケメン二人に言い寄られているこの状況を楽しめないくらいに頭をフル回転させる。


 すると、ふとある考えが思い立った。


(そうか……逆なんだ……。私の結婚相手じゃなくてカイル様の結婚相手が変わる……)


 ゲームではカイル王子は正ヒロインのクラリスと結婚するんだった。

 もしかすると、ここにきて運命がそのシナリオに修正させようとしているのかも……?


 ………………。


 ……いやだ。

 私はもうカイル様のことが……。


 ――こうして、王宮では“リリアナを巡る婚約騒動”という新たな噂が誕生してしまった。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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