第17話 デートの内容を学院長に報告する王子様と悪役令嬢
カイル様とのデート(ほぼ戦闘)が終わり、私たちは学院に戻ってきた。街は落ち着いたものの、私の心には依然として不安が残っている。ここ最近の魔物の襲撃はあまりにも頻繁で、その強さも異常だ。やっぱり本格的に首謀者を探さないとまずいかも。
「リリアナ、何か気になることがあるのか?」
カイル様が私に優しく声をかけてくれた。
「魔物騒動の首謀者を探らないと状況はどんどん悪くなっていきますよね……それに、なぜこんなことをするのかもわかりません……」
私は少し悩みながら答える。ずっと違和感があった――首謀者の目的の検討が付かない。
「俺もそう思っていた。やはり原因を叩かなければならないな」
――やっぱりカイル様も同じことを考えていた。王国のほうでも調査を進めているみたいだけど、未だ判明していないんだよね、首謀者の正体と目的。ゲームのラスボス「魔将ライアン・ランツァ」だったらシナリオ中盤の時期に攻めてくるなんて早すぎるし。そもそも魔物の大群を率いて王都に攻めてくるタイプの敵だったからこんな回りくどい作戦はしないんじゃないかな。
「とにかく、学院長に報告しよう。早急に対策を考えなければならない」
カイル様の言葉に私は頷き、二人で学院長の元へと急ぐことにした。
私たちはすぐにグレイア学院長の執務室に向う。学院長はすでに私たちが街で魔物と戦ったことを知っていたらしく、冷静な表情で迎え入れてくれた。
「カイル王子、リリアナさん。ご苦労様でした。さっそく報告を聞かせてください」
学院長の落ち着いた声に、私は少し緊張しながらも街での出来事を報告した。カイル様も冷静に状況を補足し、私たちは今回の魔物の襲撃も、学院の結界を狙う何者かと同一犯である可能性を伝えた。
「ふむ、やはり……。魔物たちは何かしら強力な魔法で操られているのでしょう」
「操られている……ですか?」
私は学院長の言葉に反応した。魔物が誰かに操られている……。ただ魔物を放って暴れさせているわけではなく操作している。
――まさか……これって……。
頭の中に、ゲームのある記憶がふと蘇る。そう、これは……隠しボスの記憶。魔物を自在に操り、世界を混乱に陥れようとする敵。
「リリアナ、どうかしたか?」
カイル様が不思議そうに私を見つめている。
「あ、いえ……なんでもありません」
私は少し焦って笑顔で誤魔化した。――危ない、つい考え込んでしまった。ここで私がゲームのことを話してしまったら、絶対に不自然に思われる。
でも、私は確信している。この魔物の襲撃は、ゲームの世界で見た「裏の黒幕」が引き起こしているものだ。彼は禁忌の古代魔法を使って魔物を操る隠しボスだった。そして、その目的は……。
「学院長、これほど強力な魔物が次々と現れるのは、誰かが古代魔法を使っているということでしょうか?」
カイル様が鋭く質問する。さすがカイル様。ちゃんと古代魔法という答えにたどり着いてる!
そして、学院長は少し考え込みながら頷いた。
「そうですね。禁忌とされている古代魔法の力が使われている可能性は高い。結界の破壊も学院にある古代魔法に関する書物を狙っているのかもしれません」
私は心の中で確信した。やはり、この世界で起きていることは大筋ではゲームと同じ展開だ――そして、その敵が何を企んでいるかも、私にはわかる。
「その人の目的は学院にある古代魔法の知識を得て、世界全体を混乱に陥れようとしてるのかなー……」
私はなるべく自然な形で、助言するように言葉を発した。ラスボスを陰で操っていた隠しボス。それがこの世界では直接攻めてきているみたい。――でもあまり詳しく言いすぎないようにしなきゃ。
「確かに、その可能性は高いですね。ただ、現時点でその黒幕の正体を掴めてはいない。それでも古代魔法を操る者がどこかに潜んでいることは間違いないでしょう」
学院長は少し思案しながら、机の上の書物に手を置いた。
「文献によれば、かつて現れた魔物を操る者は、古代遺跡に拠点を構え、その力を蓄えていたという記録があります。だから、王都近郊の古代遺跡に何か手がかりがあるかもしれない」
――古代遺跡……やっぱりそうだ。ゲームでも隠しボスが潜んでいたのは、古代遺跡だった。その遺跡を拠点にして、魔力を集めて世界を支配しようとしたんだ。ゲームの通りなら、その遺跡に向かえば何かが見つかるはず。
「リリアナ、どう思う?」
カイル様が私に意見を求めてくる。私は一瞬戸惑ったけど、すぐに答えた。
「えっと、古代遺跡に行けば、何か手がかりが見つかるかもしれません。まずはそこを調べるべきだと思います」
「よし、決まった。学院長、俺たちで古代遺跡を調査させてもらえますか?」
「はい、あなたたちにその役割を任せます。現状、あなたたちの戦力は王国の騎士団にも匹敵します。だけど、くれぐれも慎重に行動するように。古代魔法は非常に危険な力です。下手をすれば、取り返しのつかない事態になるでしょう」
学院長は私たちに鋭い目を向けながら警告した。彼女の言う通り、古代魔法を扱うのは非常に危険だ。ゲームの中でも、魔物を操る力は圧倒的で、下手に挑めば、あっという間に敗北してしまう……。
――でも、私はゲームの攻略法を知っている。だから、なんとかなるはず!
「わかりました。私たちが慎重に調査を進めます」
私は自信を持って答えた。
――――――――――
私たちはしっかりと準備(もらったアイテムも装備)して、カイル様、エリオット先生、シモン、そしてクラリスと一緒に、王都の近くにある古代遺跡に向かった。この遺跡は、かつて魔法文明が栄えていた時代に造られたもので、現在は立ち入り禁止区域になっている。だけど、今回の状況を鑑みて特別な許可を得て、私たちは調査に赴いた。
「リリアナ、ここがその遺跡か?」
シモンが目の前に広がる巨大な石造りの遺跡を見上げながら尋ねてくる。
「そうだよ! あ、えっと、たぶん、ここの中に何か……」
私は慎重に言葉を選びながら答えた。――これ、ゲームで見たダンジョンそのものじゃん! という衝撃を隠さなければ。
遺跡の入り口は荒れ果てていて、今にも崩れそうな感じがする。しかし、その奥にはゲームで見た通りの扉があり、強力な魔力を感じる。ゲーム通りなら、この奥に黒幕がいるはずだ。
「気をつけて。中には強力な魔物が潜んでいるかもしれない」
カイル様が周囲を警戒しながら進んでいく。私はモフリを召喚し、炎の力で周囲を照らしながら慎重に遺跡の中へと足を踏み入れた。
――大丈夫。私はゲームでここを攻略したことがある。だから、きっと道は分かるはず。
私たちはこの遺跡の奥に進み、黒幕に近づいていく……。
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