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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第1部 転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!
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第12話 学院を襲う黒き魔物

 平和が一番。学院生活も順調。悪役令嬢の断罪ルートを恐れていたのも昔の話! 私は今日も、モフリを撫でながら中庭でぼーっとしていた。


「リリアナ様、そんなにぼんやりしていて悩み事ですか?」


 いつの間にかに隣に座っていたクラリスが、優雅に微笑みながら私に問いかける。最近、クラリスとは随分仲良くなった。一緒に魔法の練習をしたり、食事をしたり、対立していたことが嘘みたいだ。


「大丈夫よ、おだやかに過ごしたいなぁって考えてただけ」


 モフリを撫でながら、私は正直に答える。モフリは私にぴったりくっついて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。


「そうでしたか、おだやか、いいですよね。……ところで、その、ですね、リリアナ様。本日はお話がありまして……」


 クラリスは言葉につまりながら必死になにかを伝えようとしている。


 そんなとき――突然、また警報音が鳴り響く。


 ゴォォォォン……ゴォォォォン……!


 それはまたしても魔物が学院の結界に接近したことを告げている。もう、どうしてこんなに魔物が頻繁に現れるのよ!?


「また魔物が……」


 クラリスと私はすぐに立ち上がり、警報の鳴り響く空を見上げた。遠くの森の方から、まるで生き物のようにうごめく黒い霧が学院の結界を覆い始めている。その中に、不気味に光る赤い目が浮かんでいるのが見えた。


「……何、あれ……?」


 私はその異様な光景に目を見張った。まるで黒い霧が生きているかのように、どんどん結界を侵食していく。そして、その霧の中には、何か巨大なものが動いている――。


「リリアナ様、あれはただの霧ではありません。あの霧自体が魔物ですわ!」


 クラリスが真剣な顔で言う。


「ええっ!? 霧が魔物!? どういうこと……?」


 と、驚いてみせたが、あれはゲームにもいた魔物だ。霧自体が魔物であり、さらにその中には龍が潜んでいる。ただ、ゲーム終盤の敵なので、このタイミングで現れたことにはとっても驚いてる。ヤバい。まだみんなの力が成長しきっていない以上、落ち着いて対処しないと負けてしまう可能性もある。


「いずれにせよ、すぐに対応しなければいけません」


 クラリスはすぐに落ち着きを取り戻し、私に目配せした。


「カイル様たちがすでに動き出しているはずです。私たちも急ぎましょう!」

「う、うん……!」


 クラリスの言葉にちょっと疑問! カイル様も戦うの? ゲームではこの時期ならカイル様は以前の襲撃のときのように避難しているはずなんだけど、この世界だともう戦えるのかな。


 ――――――――――


 私たちは学院の外に急いで駆けつけた。すでにカイル様、エリオット先生、そしてシモンが現場に到着していて、学院の周囲に漂う黒い霧を警戒していた。

 カイル様も戦うつもりらしい。ゲームよりも強さ的な意味で成長が早いのかもしれない。でも、はっきり言ってアレを相手にするなら私が頑張らないと!


「あれは一体なんなんだよ……!?」


 シモンが聞くと、カイル様は森の方を鋭く睨みながら答えた。


「あれは『黒霧獣くろむじゅう』だ。魔力を宿した霧そのものが魔物で、近づいた者の魔力を吸い取る厄介な相手だ。しかも、霧の中には本体である巨大な黒龍ザムダークが潜んでいる」

「おいおい、今度は黒龍かよ。 しかも、魔力を吸い取る霧の魔物なんて……そんなのどうやって倒せばいいんだっ!?」


 それを聞いたシモンは驚きながらも剣はしっかりと敵に向ける。目は真剣そのもの。彼はいつもこういう時にふざけた調子を見せるけど、その実、最も頼りになる存在だ。


「結界が持ちこたえる時間は限られている。私たちで霧を消し、本体を引きずり出すしかない」


 エリオット先生の冷静な声に、私たちは全員緊張を走らせた。


「リリアナ様、今回は私が霧を封印し、カイル様が結界を強化します。シモン様は本体に向けて物理攻撃を。そして、クラリス様とリリアナ様で霧を浄化する魔法を放ってください」


 エリオット先生は続けて指示を出してくる。


「霧を……浄化?」


 私は少し不安になりながら聞き返した。だって、火の魔法で浄化なんて、そんな繊細な魔法、私にできるの?


「リリアナ様、貴女の魔力は強大です。ですが、浄化の力は火の破壊力ではなく、炎の純粋なエネルギーで行うものです。焦らず、モフリと共にその力を引き出してみてください」


 エリオット先生が優しく諭すように言う。彼の言葉はいつも冷静だけど、その中に信頼の光が見える。よし、やるしかない。


「わかった、やってみる!」


 私はモフリに呼びかけ、魔力を込めて手を掲げた。すると、モフリはゴロゴロと喉を鳴らしながら、まるで私を安心させるかのように力強く炎を纏い獅子の姿になる。


「行け、モフリ! あの霧を浄化するのよ!」


 霧は徐々に学院の結界を侵食し始め、ところどころが黒く染まっている。その霧の中に、赤く光る目が見え隠れしていて、ぞっとするような恐怖を感じさせる。


「シモン、突撃だ! 霧の中にザムダークがいる。俺たちは本体に攻撃を仕掛けるぞ!」


 カイル様がすぐに指示を飛ばし、シモンが大剣を握りしめながらふたりは霧の中に飛び込んでいく。


「よっしゃ、行ってくるぜ! ザムダーク、覚悟しとけよ!」


 シモンは先行して大胆に霧の中へ突進していく。黒い霧が彼に絡みつくが、シモンの強靭な体力と意志で跳ね返している。さすが、フィジカル担当。


 その間、私はモフリと共に霧を浄化しようと魔力を集中させていた。モフリが一歩前に出て、霧の中に飛び込む。炎を纏ったモフリは、黒い霧に触れるとその部分が浄化されていく……! やった、これなら……!


「リリアナ様、上手くいっています! その調子です!」


 クラリスが水の魔法で霧をさらに浄化しながら、私を励ましてくれる。魔法の練習をふたりでするようになったおかげで息も合っている。


「こっちもいい感じ……でも、もっと力を……!」


 私はさらに魔力を注ぎ込み、モフリを強化した。すると、モフリの炎はさらに大きくなり、霧の大部分がその炎に包まれていく。これならいける!


「よし、今だ!」


 エリオット先生が封印魔法を発動し、ザムダークの動きを封じ込めるための結界を展開した。


 ゴゴゴゴゴ……


 ――でも、その時だった。


 結界の中から、巨大なザムダークの頭が突き出てきた。赤く輝く瞳が私たちを睨みつけ、その口からは不気味な黒い煙が漂っている。


「うわぁっ……!」


 思わず後ずさりしてしまった私。だって、あれ……めっちゃデカいし、怖すぎるんだけど!


「リリアナ様、落ち着いて! 自分の力を信じてください!」


 エリオット先生の冷静な声が響き、私は必死に気持ちを立て直した。そうだ、ゲーム終盤の敵を今の戦力で倒すなら私がしっかりしないと! 私はモフリに特大の力を注ぎ込み、ザムダークの方に向かって突進させた。


「いけ、モフリ! ザムダークを封じ込めて!」


 モフリは力強く走り、ザムダークに向かって飛びかかった。私から特大の魔力を受け取り大型化したモフリは、ザムダークに牙を立て、黒い霧をさらに浄化し始める。ザムダークは苦しそうに吠えたが、まだ力は完全には失っていない。


「シモン、今だ! 物理攻撃でとどめを!」


 カイル様が叫ぶと、シモンが笑いながらザムダークに向かって突進した。


「おう、待ってました!これで終わりだぜ!」


 シモンは巨大な大剣を振りかざし、ザムダークの首に向かって一気に振り下ろす――!


 ズガァァァン!!!


 シモンの一撃がザムダークの首を斬り裂いた瞬間、黒い霧が一気に晴れていった。ザムダークはうめき声を上げながら、そのまま霧となって消えていった。


「……やった、倒した……!」


 私はその場にへたり込み、モフリを抱きしめた。モフリのおかげで、なんとか黒龍ザムダークを倒すことができた……!


「ふぅ……これで一安心ね」


 クラリスも深く息をつきながら、私の隣に座り込んだ。シモンとカイル様は余裕の表情で立っている。やっぱり、二人は頼りになる。


「リリアナ、よくやったな。君は本当に頼りになるよ」


 カイル様が私に優しく微笑みながら言う。その言葉に、私の心臓がドキッとする。いやいや、そんなキラキラした笑顔で褒められると、照れちゃうからやめてよ……!


「え、えっと、ありがとうございます……」


 私は照れくさそうに頭を掻いたけど、内心はすごく嬉しかった。こんな状況でも、カイル様の頼もしさは異常だよね。


「ふふ、リリアナ様。カイル様のことばかり見ていたら、シモン様が拗ねてしまいますよ?」


 クラリスが冗談めかして笑った。――ちょ、ちょっと待って、クラリスさん、それはどういう意味ですか!?


「……リリアナ様、よく頑張りましたね」


 ふと、エリオット先生が優しく微笑んで私に声をかけてきた。彼も私を信じてくれたんだ……そのことが、なんだか胸に響いて、ちょっとドキッとする。


 ――え、なにこれ? 私、今二人にドキドキしてる!?


「ま、まぁ、もう疲れたし、そういう話は後にして、とりあえず学院に戻ろうぜ!」


 シモンが大きな声で言い、笑いながら肩をすくめた。――いや、確かに疲れたけど、シモン、顔が赤いけどどうした?


「ふふ、シモン様の言う通りですわね。今日はゆっくり休みましょう、リリアナ様」


 クラリスも優雅に微笑みながらそう言った。私たちは戦いの疲れを感じながら、それぞれ学院に戻ることにした。


 その途中、クラリスは私をチラチラ見ながらなにか言いたそうにしている。カワイイか!


「どうされました、クラリス様?」

「その、さきほど言いそびれたことなんですが……せっかくお友達になったことですし……お互い呼び捨て……に、しませんか?」


 なんだ、そんなことか……全然問題なし。正ヒロインと悪役令嬢の歴史的和解の瞬間かも。


「もちろんいいよ、クラリス!」

「ありがとうございます、リリアナ!」

読んでいただきありがとうございます!


今回の話、面白いと感じたら、下の☆☆☆☆☆の評価、ブックマークや作者のフォローにて応援していただけると励みになります。


今後ともよろしくお願いします。

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