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転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!  作者: 雪見クレープ
第1部 転生したら悪役令嬢になって断罪されそうになっても、魔法が最強すぎて王子様に面白い女認定される!
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第10話 火の猫に名前をつけてあげて

 魔鳥を討伐してから数日。学院内では、私のことを「火の猫を操る最強の魔法使い」なんて呼ぶ人も出てきた。前回は「魔物を一撃で倒した最強の魔法使い」だったよなぁ……。いや、魔法が強すぎて暴走してるだけだし、正直そういう目立ち方は本当に勘弁してほしい……。だけど、あの猫――火の猫が本当に生きているかのように動き回ってるおかげで、最近ちょっと困ったことになっている。


 というのも――。


「リリアナ様、あの火の猫がまた勝手に学院中を走り回っております!」


「えぇっ!? また!?」


 朝の授業が終わった後、学院のメイドさんが私に報告に来た。私の魔法で生み出した火の猫が、どうやらまた学院の廊下を自由気ままに走り回っているらしい。生き物みたいに可愛い動きをするんだけど、機嫌が悪いときは炎が強くなって触ったら火傷するし、誰も近づけない(私は大丈夫)。……って、これ、ほんとに精霊とかじゃなくて魔法なんだよね?


「モフモフしてるけど、たまに炎の塊になっちゃう……どうしよう……」


 私は学院の廊下を急いで駆け抜けながら、何とか火の猫を見つけようとする。学院内で火事にならないように結界があるとはいえ、毎回こんなことを繰り返すわけにもいかないし……。


「そろそろちゃんと名前をつけてあげた方がいいのかな……?」


 そう思いながら廊下を進んでいると、先に庭に出ていた。そこには……やっぱりいた! 火の猫が、悠々と芝生の上で丸くなって転がっている。まるで自分の領地みたいに堂々と寝そべっているのが、なんとも自由奔放だ。


「もう、火の猫ちゃん! 勝手に動き回るのはダメでしょ!」


 私は猫に駆け寄り、叱るつもりで声をかけた。でも、火の猫は私の声にまったく動じることなく、ゴロゴロと喉を鳴らして気持ちよさそうにしている。いや、ゴロゴロって……炎が喉を鳴らすって、どういう仕組み? もうちょっと魔法らしくしてよ!


「リリアナ、君の猫がまた自由に動き回っているのか?」


 突然、優雅な声が背後から聞こえた。振り返ると、そこにはカイル様が立っていた。銀髪を風になびかせ、まるで絵に描いたような美男子っぷりを見せつけている……でも、最近どうも私に優しすぎる気がするんだよね。


「カ、カイル様……そうなんです、この猫がどうも言うことを聞いてくれなくて……」

「ふふ、魔法で形作った猫が本当に生きているような動きをする、とてもおもしろい」


 カイル様は微笑みながら、火の猫をじっと見つめている。カイル様がこうして近づいても全く平然としている猫……というか、この子、王子様の前だからちゃんとしてよ!


「リリアナ、名前はつけているのか?」

「え、名前ですか?」

「そうだ。生き物のように動いているなら、名前をつけてやるべきだろう? それに、名前をつけることで、君の魔法との繋がりも深まるはずだ」


 カイル様の言うことはもっともだ。そうか、名前をつければこの猫ももっとおとなしくなるかもしれない……!


「たしかに……でも、何て名前にしよう?」


 私は少し悩んだ。普通に「フレイム」とか「ヒート」とか、火に関連する名前も考えたけど、なんだかベタすぎる気がする。しかも、この猫は炎なのにすごく柔らかくて、まるでモフモフのぬいぐるみみたいだし――。


「よし、モフリにしよう!」

「モフリ……?」


 カイル様が少し驚いた顔で私を見つめる。


「ええ、モフモフしてるし、なんだか可愛いから!」

「ふふ、リリアナらしい名前だな。だが、いい名前だ」


 カイル様は微笑みながら頷いた。よかった、カイル様も気に入ってくれたみたい。でも、これでモフリがおとなしくなってくれたらいいんだけど……。


 すると、その時、もう一人の人物が静かに現れた。


「リリアナ様、また問題を起こしているようですね」


 ――エリオット先生は今日もいつもの無表情で、少しだけ興味深そうにモフリを見ている。


「エリオット先生。たしかにちょっとだけ問題は起こしましたけど、今は大丈夫です。この子に名前をつけたので少しはおとなしくなると思います」

「ふむ……名前をつけることで、確かに魔法との繋がりは強くなるでしょう。しかし、それは同時に、リリアナ様がその魔法に対する責任を持つということでもあります」


 責任……そうか、モフリに名前をつけたことで、私はこの火の猫に対してもっとしっかりした「飼い主」として振る舞わなければいけないってことだ。名前をつけたからって、ただ可愛がるだけじゃなくて、ちゃんと管理しないと。


「リリアナ様、その火の猫がこれ以上暴走しないように、しっかりと制御してください。貴女の魔力は非常に強力ですから、猫であっても油断は禁物です」


 エリオット先生の言葉に、私は再び背筋を正した。そうだ、モフリは私が責任を持って管理するんだ。


「わかりました。ちゃんと制御してみせます!」


 そう言って、私はモフリに優しく語りかけた。


「モフリ、もう勝手に暴れないでね。これからはちゃんとおとなしくしてね」


 すると、モフリはゴロゴロと喉を鳴らしながら、私の足元にスリスリしてきた。おぉ、これで少しは言うことを聞いてくれるようになったかも……!


 そんな時――突然、学院の警報が再び鳴り響いた。


「……また魔物!?」


 私は驚いて振り返る。


「どうやらそのようだ」


 カイル様がすぐに反応し、冷静に周囲を見渡す。


「リリアナ様、急ぎましょう。警報音からすると今度も何か大きな魔物が現れたようです」


 エリオット先生も無表情ながら、少し緊張感を滲ませている。


 私は二人に続いて、急いで学院の外へと向かった。これ以上学院に被害を出さないためにも、私がモフリと一緒に何とかしないと――!


 外に出ると、すでに巨大な魔物が現れていた。それは……雷龍らいりゅうゼトール。雷を纏いながら、空に向かって吠え、周囲に激しい雷光を撒き散らしている。


「また龍!? 今度は雷龍だなんて……!」


 ゼトールは空を舞い上がり、学院の塔に向かって突進しようとしている。もしあの塔が壊されたら、学院の結界も無効化されてしまう! 私たちは急いで雷龍を止めなければならない!


「リリアナ、今度も君の魔法が必要だ」


 カイル様が私に冷静に指示を出す。


「でも、雷を相手にするなんて……私の火の魔法が効くのかしら?」


 私は一瞬不安になった。火は雷に弱いかもしれないし、下手に近づいたら感電しちゃうかも……。


「大丈夫です、リリアナ様。モフリがきっと役に立ちます」


 エリオット先生が淡々と答える。


「モフリを信じて、いつも通り力を発揮してください」


 ――そうだ、私がモフリを信じれば、きっと大丈夫なはず!


「わかりました、いくわよ! モフリ、出動!」


 私はモフリに指示を出し、ゼトールに向かって駆け出させた。モフリは炎を纏ったまま素早く地面を駆け抜け、まるで生きた猫のようにゼトールの周りを俊敏に動き回り始めた。


「すごい……!」


 私はその動きを見て驚いた。モフリは雷を避けながら、絶妙なタイミングでゼトールに飛びかかり、爪で炎を叩き込んでいる。しかも、その炎がゼトールの体に巻きつき、少しずつダメージを与えているようだ。


「やった!モフリの攻撃が効いてる!」


 モフリは次々とゼトールの攻撃をかわしながら、華麗に立ち回っている。もしかして、モフリってただの火の猫じゃなくて、もっと特別な魔法の存在なのかも?


「リリアナ、今だ! 一気に雷龍を仕留めるんだ!」


 カイル様の声にハッとし、私は魔力をさらに集中させた。今こそ、モフリに全力で魔法を注ぎ込んで……!


「モフリ、もう一度、全力でいって!」


 私が叫ぶと、モフリは一瞬立ち止まり、全身にさらに大きな炎を纏った獅子となった。そして、そのままゼトールに突進し――


 ズガァァァァン!!!


 モフリの炎がゼトールに炸裂し、雷の光と炎が交差する。眩しい光の中で、ゼトールの咆哮が響き渡り、その巨体がついに地面に崩れ落ちた。


「や、やった……!」


 私は思わずその場にへたり込んだ。モフリが見事に雷龍ゼトールを倒してくれた……! こんなに強くて、頼りになる存在だなんて……!


「素晴らしい。さすがだ、リリアナ」


 カイル様が満足そうに微笑んで、私に歩み寄る。


「お見事です、リリアナ様。モフリも、貴女の魔力と見事に共鳴しています」


 エリオット先生も静かに私を褒めてくれた。


「ありがとうございます……でも、モフリのおかげです」


 私はモフリの頭を撫でた。モフリはまたゴロゴロと喉を鳴らしながら、私に甘えてきた。なんか、もう完全に可愛いペットになってるけど……まぁ、いいよね!

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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