きりがよくない
小説を書く場合も、イラストを描く場合も、何パターンかの選択肢があってどれを選ぶか迷うこともあります。
迷うぐらいですのでどちらを選んでも品質には大差ないのですが、こういうのってなかなか決まられないかも。
第三者からみれば『どっちでもいいこと』に時間をとられるのですね。
いくら考えてもきりがないですし、サイコロとかコインの表裏で決めた方が時間効率がいいこともあります。
その森ではトネリコの木が白い花をさかせていた。
木の根元に小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、ういろうが乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね。白猿さん。ネットのニュースの話で『ぎなた読み』っていう言葉があったの。ダジャレの一種だと思うけど、どういう意味だろう?」
「子狸くん。『ぎなた読み』は言葉の切り方をわざと間違えて別の言葉にする遊びだな。『弁慶がなぎなたを持って……』という文を、間違って『弁慶がな』『ぎなたをもって』と読んだ人がいて、『ぎなたって何?』と周りに聞いたのが発端らしい」
「そうだったんだ。んとね。例えば『ひもをだしてくびにかけてください』という文は『ひもをだして、くびにかけてください』『ひもをだし、てくびにかけてください』の二通りの読み方ができるよね」
「そうだな。自分が小説を書く場合、読点を正しく入れて誤読をふせごう。ところで、子狸くんは『キリマンジャロ』って知っているか?」
「んとね。たしかコーヒー豆の産地だとおもうの」
「キリマンジャロはアフリカのタンザニア連合共和国の山で、コーヒー豆の名産地だ。ちなみに キリマが山で、ンジャロが白、白い山という意味なんだ」
「へぇー。そうだったんだ」
「では、ハワイに大昔にカメハメハという王様がいた。これはどこで切るかわかるかな?」
「え? ぼく、よくわらんないの。もしかして名前がカメハメで、最後のハは王様の称号かな?」
「カメハメハは本名ではなくて、あだ名なんだ。カは英語での冠詞Theのような感じで、メハメハは孤独という意味。孤独な王様って呼ばれていたんだ。では次の問題、熟語の『五里霧中』はどこで切る?」
「んとね。距離を表すのが五里で、その範囲が霧の中っていう意味だと思っていたの」
「五里霧中は、判断材料がそろわなくて、先の方針が立たない時に使う言葉だな。広い範囲で霧が立ち込める『五里霧』という言葉があって、その中っていう意味だ」
「んとね。白猿さんが出した問題って、普段切ることがない言葉なの。日常的に切って使う言葉の例はないの?」
「あるぜ。『ヘリコプター』という言葉はどこで切る?」
「普通は略して『ヘリ』って呼ぶの。でもこういう問題で出すってことは『ヘ』『リコプター』で分けるのかな?
「旋回するという意味の『ヘリコ』、翼をあらわす『プテロン』を合わせた言葉だ。だから本来はヘリじゃなくてヘリコって訳すべきなんだよな」