表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

第4話 攻撃魔法

「ここが私の部屋よ」


 連れてこられたのは、パウゼ家の森の中に建てられた小屋だった。


「《《離れ》》に住んでいるのか?」

「そうよ。離れに住んでいるの。ちょっと待ってて、今着替えるから」


 メイド姿に扮してまでオレを追い返そうとしていたミリーナは、部屋に籠り、着替え始めた。着替えるまでゆっくり待とうと思っていたが、着替えながらミリーナがドア越しに話しかけてきた。


「それで、何から始めるの?」

「そうだな。まずは目標を立てよう。依頼書によると、基礎魔力の向上と書いてあるが、とりあえず魔力量と魔力放出量の増強を図ろう」


 僕がナタリー先生から受けた最初の講義を思い出しながら、目標を設定する。しかし、ミリーナは何か納得いかないらしい。


「ミリーナどうしたんだ」

「さっきのザイガーの話によると魔力量を上げると、私の死ぬ確率が上がるんじゃないの?」

「そうだ。だから対抗策を2つ考えてある。1つは、オレが定期的にミリーナから余分な魔力を吸う。2つ目は、毎回限界まで魔力を放出しておく」

「なるほど、そうすれば常に魔力量を低く抑えておくことができるということね」


 着替え終わったミリーナが部屋から出てくる。魔法使いの正装であるブレザーとスカートを着用している。それ以外にも驚くべき箇所があった。


「ミリーナは、アルワイト魔法大学に飛び級して通っているのか」


 15歳と言っていたから中学生くらいかと思っていれば、着ているブレザーとスカートは王国で優秀な人材が集まるアルワイト魔法大学のものだった。


「身分不相応なことはわかっているけど、私の魔力量とパウゼ家の威光によって半ば強制的に飛び級することになったの」

「それは難儀なことで」

「それで、どういった方法が最も効率よく魔力を放出できるのかしら」

「それはもちろん、攻撃魔法だ」

「——あなた、正気?」


 真顔で口を開きながら、空いた口が塞がらない状態のミリーナ。


「ザイガーは学校に通っているの?」

「なんでそんなことを聞くんだい」

「だって、攻撃魔法は、もはや学ぶ価値もない魔法だって習わなかった?」

「そんなことは一度も習ったことはない」


 もちろん学校に行っていないから習っていないのだが、それ以前に、ハイ爺は攻撃魔法を否定したことはないし、ナタリー先生に至っては、常に攻撃魔法を極めろと、それしか教えてくれなかった。だから、オレにとって攻撃魔法はそんな特別視するようなものではない。ただ、他の人々は攻撃魔法を嫌っていることは知っていたが、ここまでとは変に思われるとは思わなかった。


「魔法は元々魔族との戦争の道具。魔王リヴィーネと人魔協定が結ばれてから魔族と争う必要はなくなり、攻撃魔法は魔族との敵対の象徴として忌み嫌われるようになったのよ」

「それは知っている」

「なら、私は攻撃魔法は学びたくない。パウゼ家の人間なら尚更そこら辺は気をつけないといけないの」


 困ったことになった。攻撃魔法への忌避感は想像以上に強いらしい。このままでは攻撃魔法を教えることができない。だが、本人が嫌がっていることを無理矢理教えることはできないし、そもそも魔法を発動させるのはミリーナ本人。本人の意思なしに魔法は発動できないのだから、攻撃魔法を教えるのは諦めるしかなさそうだ。ごめんよハイ爺。金貨を持って帰るからそれで許してくれ。


「わかった。ならば、週2回魔力を吸い取ることと、ミリーナが得意そうな精神魔法の強化、薬剤魔法を教えるから、それらの魔法を極限まで使うことで、魔力量の増強を図ろう」

「それなら、文句はないわ。契約成立ね」


 それからオレは、自分が持ちうる精神魔法や薬剤魔法の知識を教え、ある程度魔力を吸い取ってから帰宅した。意外にも、オレはミリーナに魔法を教えることにワクワクしているらしい。


それから数ヶ月、喧嘩もすることもあったが、ミリーナは順調に魔法を上達させていった。


ミリーナに攻撃魔法を教えないとハイ爺に怒られる……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ