表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

拡張

 オレはミリーナに連れられて、小屋の地下に降りた。小屋の地下にこれほど広大な広場があるとは知らなかった。


「元々ここは、私の訓練所なの。エーデおばさんは、人魔協定下の平和な世の中なのに、とにかく攻撃魔法だけ極めれば良いって言って、私がここにきた頃にはよくここで練習させられてたわ」


 昔を懐かしんでいるのだろう——、目を細めて地下広場の奥を見る。



「攻撃魔法を練習しているなんてこと外にバレるわけには行かないから、こんなに大きな広場を作ったのに、私ったら攻撃魔法の才能がなかったの、すぐに魔法が制御できなくなって、暴走してしまい、現界させたい魔法がうまく出せなくなる。昔からそうなの」

「ちょっと見せてみて」


 ミリーナは杖を出すと、魔法を放った。


直進魔法グラデス・ゲーヘン


 まさかの直進魔法グラデス・ゲーヘン、ミリーナがこの魔法を使えることに面を食らう。


「ミリーナ、君は、直進魔法グラデス・ゲーヘンを使えるのか?」

「えへへ、黙っててごめんね、実はエーデおばさんに教えてもらった魔法なの。こんな魔法使う人いなかったからガイザーがこの魔法を使うところを見たときは驚いたわ」

「オレも先生やハイ爺意外に、この魔法を使ってる人を見たことがない」

「ハイ爺?」

「あ、オレの育ての親みたいな、今一緒に暮らしてるおじいさん、先生の師匠みたいなんだけど」

「そうなんだ、じゃあ、エーデおばさんもその人と知り合いなのかな」


 確かに、ハイ爺がここの家庭教師の依頼を持ってきたのは不自然だった。後で聞いてみよう。


「それで、私の攻撃魔法どうだった?」

「魔力量が多いから、すごい威力だ。ただ、出口が小さいみたいだから、魔力を効率よく外に出せていない。そのまま出し続ければ出口が壊れてしまい、暴走してしまう」

「そう、その通り、エーデおばさんも同じことを言っていたわ」

「私の魔力の出口は狭い。だから攻撃魔法には不向きなの」

「一概にそうとは言えないよ」


 オレの言葉に、ミリーナは目を見開きながらこちらを見る。何か対処法があるの?と顔に書いてあった。


「僕が出口少しずつこじ開けるから」

「そんなことできるの?」

「うん、ただ無理矢理だよ」

「え、なんだかそれ怖い」

「まあ、最初は怖いよね、大丈夫優しくするから」

「え……、なんだかいかがわしい匂いが——」

「いや、変なことはしないから、はい、手をオレの手と合わせて」

「こ、こう?」

「そう、そして目を瞑って」


 彼女の魔力回路を調べると、芸術とも言えるほど綺麗な魔法回路をしていた。これは天賦の才能、この回路を思う存分使うことができれば、魔王すらも倒せるかもしれない。ゆっくりと、出口を広げていく。時々苦痛でミリーナの眉間に皺がよるが、少しは我慢してもらわないと出口は大きくならない。


「終わったよ」

「ふう、結構痛かったわね」

「さあ、少し直進魔法グラデス・ゲーヘンを打ってみて」

直進魔法グラデス・ゲーヘン——、すごい出やすい!!」

「まだコントロールが効かないのは仕方ない。確か、前線に行くのは2ヶ月後だったよね。2ヶ月でどこまで伸びるかわからないけど、とにかく直進魔法グラデス・ゲーヘンを伸ばそう。最終目標は、このタングステンの塊を打ち抜けるようになるまで頑張ろう」

「タングステン?」

「最も重い石のひとつだよ。これを打ち抜けたら、僕の家庭教師としての役目は終わりだ」

「わかったわ、ねえ、これができたら——」

「ん? どうかしたか?」

「これができたら、昔の勇者みたいに、私も強くなれるのかな」

「そうだな、なれるんじゃないか」


 それから毎日、ミリーナは魔力を使い果たし、その場に倒れ込んでしまうまで直進魔法グラデス・ゲーヘンをタングステンの岩に向けて放ち続けた。その集中力は凄まじく、日に日に威力とコントロールが増していった。これは本当に2ヶ月以内にタングステンの岩を打ち砕いてしまうかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ