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8.俺だけがデータを持っている


 俺たちは、突然ボスの間に閉じこめられてしまった。

 それは教官も含めて全員にとって、まったくもって想定外の事態だった。


「グアァァァッッ!!」


 ミノタウロスは俺たちにその赤い眼を向け、ひときわ大きな咆哮をあげた。

 肌で感じる威圧感。今まで幾度となく圧倒的なボスモンスターと対峙してきたが、それは全てゲーム世界の話だ。


 しかし、これは現実。

 そう、命がけの戦いだ。


 ダンジョンは俺たちに悩む時間さえ与えてくれない。

 俺はなんとかこの状況を冷静に受け止めようとする。


 扉が一度閉まってしまった以上、外に出る方法はたった一つ。

 ボスを倒すしかない。


「た、戦うしかない!」


 教官のアンガスが言った。その声は少し上ずっていた。ギルドでそれなりの地位にある彼でさえ恐怖を覚えるような状況なのだということを、嫌でも認識させられた。


 だが、アンガスが言うとおり俺たちには選択肢はない。


「私が前線で戦う。皆は隙を見て援護してくれ」

 

 そう言ってアンガスは剣を抜き、ミノタウロスに向かって駆け出した。


「≪インビジブルストライク≫!」


 上位剣技スキル。圧倒的な加速から繰り出される突撃攻撃だ。

 目にもとまらぬ速さで間合いを詰め、その剣先がミノタウロスの胸部に達する。

 だが、


「ッ!!」


 アンガスの顔が驚愕に包まれる。


 その攻撃は、例えボス相手でも十分に有効なスキルのはず、だった。

 けれど攻撃はミノタウロスに少しのダメージすら与えることができなかった。攻撃は弾かれ、剣が教官の手から弾かれた。

 そのままミノタウロスの拳が彼を弾き飛ばす。


「教官!!」


 アンガスが赤子の手をひねるように吹き飛ばされた。

 パーティの中で最も高レベルの彼でさえ歯が立たないとなれば、他のビギナー三人では叶うはずもない。


 そんな絶望的な状況。

 もはや俺たちは、座して死を待つのみなのか――


 ――いや。

 こんなところで諦められるか。

 女神から与えられた二度目の人生。

 今度こそ最強になると決めたこの人生。

 こんなところで諦められるわけがない。


 俺は状況を把握するため、ミノタウロス相手に≪技能分析≫を使う。



----------------------------

ミノタウロス


◇スキル一覧


 エクストラバリアLv3

  消費MP:20/分

  説明 :攻撃力100以下の攻撃を無効化する。



 アッシュアックスLv1

  消費MP:10

  攻撃力 :30

  説明 :

  習得条件:器用さ10、剣技10

 

------------------------------

 

 敵が持っていた技は2つだけ。しかも唯一の攻撃スキルは、平凡な攻撃スキル≪アッシュアックス≫だ。

 しかし、問題はもう一つのスキルだった。


「≪エクストラバリア≫。アイツの防御は、攻撃力100以下の攻撃を無効化する」


 俺は仲間にその絶望的な状況を説明した。


「私の攻撃でもダメージを与えられななかった……」


 教官の顔は絶望に染まっていた。

 教官でさえダメージを与えられないとなると、レベル1の自分たちにはなすすべがない

 即ち、それが意味するのは――――死。


「ふぁ、ファイヤーボール!!」


 ジェイドが半ば狂乱しながらスキルを放つ。けれどレベル1の人間が放つような技では、これっぽっちもダメージを与えることはできない。


「グァッ?」


 ミノタウロスの注意を引いてしまったジェイド。赤き眼光に見据えられたとき、ジェイドは恐怖のあまりその場に座り込んでしまう。


「たっ、た、助けてくれえぇ!!」


 ジェイドをかばうように、リンディがミノタウロスへ向かって勇敢に立ち向かう。


「≪魔斬剣≫!!」


 けれど、試すまでもなく彼女の攻撃もやはりミノタウロスを傷つけることはできない。

 いまや、その場にいた全員が絶望していた。

 教官を含めて、ここにいる全員が勝利は不可能だと思ってやがる。



 ――――ただひとり、俺を除いて。


 かすり傷一つ、つけることさえできない。

 確かにそれは絶望的な状況に映るだろう。


 だが、俺だけは違う。


 ≪分析者≫のスキルによって、俺はこの状況を客観的に分析できる。

 つまり俺だけが勝機データを見いだせる!!


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