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6.初戦


 チュートリアルクエスト前に、突然決まった決闘。

 俺は不良少女?リンディに促されるままギルドの裏にある広場に出ていった。

 他の冒険者たちも見物についてくる。


「アイツバカだな」

「リンディは魔法剣士だからな」

「外れスキルで家を追放された奴が勝てるわけねぇよな」


 俺の前評判は上々のようだ。


「アタシの名前はリンディだ。クラスは≪魔法剣士≫だ!」


 少女は不良少女らしく?名乗りを上げる。

 自らのクラスを明かして敵に情報を与えるとは、なんと愚かなことか……。


「決闘のルールは≪ワンヒット≫だ。いいな」


 リンディは剣を抜き、その剣先を俺に向けてそう言った。


 ≪ワンヒット≫は文字通り、相手に一撃を食らわせた方が勝ちという決闘形式だ。


 一撃でも攻撃を受けたら致命傷になるじゃないか……と思うかもしれないが、この世界ではそうはならない。なぜならば、通常・・冒険者は≪ライフバリア≫という身を守る結界魔法を習得しているからだ。≪ライフバリア≫はよほど強力な攻撃でもなければ防いでくれる。従って、一撃までならば攻撃を受けても無傷でいられる。

 それゆえに、この世界では≪ワンヒット≫形式の決闘が、比較的「安全な娯楽」としても楽しまれていた。


「ああ、わかった」


 最も、俺は攻撃に全振りしている関係で、Lv1のライフバリアしか習得できていない。

 相手の一撃がクリティカルヒットしたら致命傷になってしまう可能性もある――だが。


 俺にはデータがある。

 変数は極めて少ない。

 単純な計算をすれば、俺が負ける可能性はほとんどないことがわかる。


「その二刀流で、どこまで戦えるかな??」


 リンディは俺の腰に差さっている左右二本の剣を見て笑った。

 ≪二刀流≫は剣技スキルを磨いた先にようやく手に入る上位スキルである、というのがこの世界の常識だ。それゆえに、俺のことを「カッコつけで二刀流を真似している」痛い奴だと思っているのだ。


「言われなくても」


 俺は二本の剣を抜いて構える。

 それが試合開始の合図。


 先に動いたのはリンディだった。


「≪魔斬剣≫!!」


 魔法剣士お得意のスキルを繰り出してくる。≪魔斬剣≫は剣に魔力をまとわせるスキルで、そのまま斬りかかってもよし、斬撃を飛ばして遠距離攻撃にしてもよしと、かなり便利な技だ。


 だが、所詮は平凡な初級技だ。


「≪ダブルスラント≫!!」


 俺は切り札である二刀流攻撃を繰り出す。


 ――二人の攻撃が交錯する。

 そして、勝敗は果たして一瞬だった。


「――ッ!!!」


 剣が交わり、次の瞬間吹き飛ばされたのはリンディの方であった。


 瞬殺。そう表現するのが正しいだろう。


 少し離れたところの地面にたたきつけられたリンディ。≪ライフバリア≫の結界に守られて身体的なダメージはないはずだ。しかし、しばらく呆然として起き上がれずにいた。その顔には驚愕の表情が浮かんでいた。


「お、おい今の見たか?」

「あいつ、上級スキルを使ってたよな?」

「まだ適性の儀を受けたばかりのひよっこなのに?」

「≪双剣士≫クラスだったのか!?」

「いやいや、外れクラスだって話はなんだったんだよ!?」


 周囲の人間が、リンディの驚きを代弁する。


 俺は倒れていた彼女の元に歩み寄っていき、彼女に手を差し出す。


「これで十分か?」


 俺が尋ねると、リンディは素直にその手を握り返してきた。俺はそのままぐいっと引っ張り上げる。


 その間リンディの目は俺のことを直視していた。

 ――俺はその色が妙にキラキラしていることに気が付く。

 

 そして、次の瞬間、


「アニキ! アタシを舎弟にしてください!!」


「しゃ、舎弟……?」


 突然の掌返しに俺は目を丸くする。


「まだ同じレベル1なのに、アタシの10倍強い人に会うなんて思わなかったっス! アタシは兄貴についていくっス!」


「お、おう……」


 俺はその勢いに圧倒される。


 正直なところ、別に舎弟など欲しくはなかったが、ただ、そのまっすぐな目を見ると、とても断れる雰囲気ではなかった。


 ……こうして、俺は図らずも舎弟を手に入れてしまったのである。


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