3.技能分析
転生してたった10分で実家を追放された俺は、そのまま王都へとやってきた。
幸い、少しだけだが手持ちのお金があったので、安宿を取って部屋で一息つく。
正直なところ、実家から追放されたことに関して、俺はなんとも思っていなかった。“ハルト”からすれば18年育った家かもしれないが、“杉浦悠斗”からすればなんの思い入れもない場所だ。
むしろ、あんな短絡的な思考回路の持ち主と関わらずに済むのだから、お祝いでもしたいくらいだ。
それよりも今は、この「剣と魔法の世界」でどう強くなっていくか。そのワクワク感で胸がいっぱいだった。
「さて、どうやってスキルポイントを割り振るか……」
俺の目下の課題はそれであった。
この世界には≪スキルポイント≫という概念がある。
スキルポイントは、適性の儀を受けると10ポイント、その後レベルがあがるごとに1ポイント付与され、これを割り当てることで新たなスキルを習得したり、スキルのレベルを上げることができる。
ポイントは、自分のクラスに固有のスキルに割り当ててることもできるし、それ以外のスキルに割り当てることもできる。つまり、この世界ではクラスに関係なく、様々な技を習得できるのである。
ただし、自分のクラス以外のスキルを習得する場合、効果は劣ってしまうという制約はあるのだが。
そんなものは知恵と工夫でいくらでもカバーできる。
俺は自分のステータス画面を開いた。
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保有SP:10
◇習得済/レベルアップ可能スキル(要求SP)
技能分析Lv1 (2)
◇習得可能スキル(要求SP)
ライフバリア (1)
身体強化 (1)
剣技強化 (1)
シングルスラスト (1)
シャープラッシュ (1)
ファイアーボール (1)
アイスニードル (1)
マジックアロー (1)
...
...
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ウィンドウを開くと、こんな感じで習得可能なスキルの一覧が出現する。
適性の儀を終えたばかりなので、各系統の“初歩スキル”が並んでいた。
俺が現時点で覚えているスキルは≪技能分析≫という非戦闘用スキルだけだ。従って、モンスターと戦うためには戦闘向けスキルを覚える必要がある。
問題は、どのスキルを覚えるかだが……
“ハルト”の知識の中には、どのスキルが有用で、それはどうやって身につければよいのかというデータはない。
なぜなら、この世界の人々には、スキルの“効果”や“習得条件”を客観的なデータとして確認する術がないからだ。過去の人々の経験則による知識が断片的に伝わっている程度である。
だが、俺は曖昧な根拠でスキルの割り振りを決めたりはしない。
データを元に、どのスキルが一番有用で、どのクラスが有用かを検証したい。≪分析者≫というそれに最適なクラスを授かったのだから、なおのことそうすべきだ。
そして真っ先にいきついたのが一つの仮説。
「……≪技能分析≫がレベルアップしたら、スキルの特性がわかったりするか……?」
現状覚えている唯一のスキル≪技能分析≫は、他人の覚えているスキルを把握するというものだが、覚えているスキルの名前はわかっても、その中身まではわからない。
だが、スキルポイントを割り振ってスキルのレベルを上げれば、今以上の情報が得られるはずだ。
絶対有用な情報が得られるスキルになる、という確証はないが――
一般的に、スキルポイントを自身の≪クラススキル≫に割り振るのが悪手になることはまずないと言われている。
ここは自分を信じて早速試してみるべきだろう。
「よし……」
ハルトはさっそく、スキルポイントを≪技能分析≫に割り当てることにした。
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スキルポイント2を≪技能分析≫に割り振りました。
≪技能分析≫がレベル2にあがりました。
◇保有SP:8
◇保有スキル一覧
技能分析 Lv2 ← Up!
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「さぁ……これでどうだ」
ハルトはさっそくレベルアップした≪技能分析≫を使ってみる。
ここには対象が自分以外いないので、とりあえず自分を対象に取る。
すると、技能分析の結果がステータス画面に現れる。
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ハルト・スプリングスティーン
スキル一覧
【分析系統】
技能分析Lv2
消費MP:1
効果 :対象の保有スキルと、その効果を一覧化する。
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「やっぱりだ!」
レベルを上げる前は、相手の保有するスキルの名前がわかるだけだった。
だが今は効果までわかる。
やはりスキルのレベルを上げていくと、わかる内容がどんどん増えていくのだ。
ハルトは≪技能分析≫にはスキルポイントを振る価値があると判断して、さらにポイントをつぎ込むことにした。
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スキルポイント3を≪技能分析≫割り振りました。
≪技能分析≫がレベル3にあがりました。
◇保有SP:5
◇保有スキル一覧
技能分析 Lv3 ← Up!
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そしてもう一度≪技能分析≫を自分に使う。
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ハルト・スプリングスティーン
スキル一覧
【分析系統】
技能分析Lv3
消費MP:1
効果 :対象の保有スキルとその効果、習得条件を一覧化する。
習得条件:なし(初期スキル)
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「大当たりだ!!」
まさしく期待していたとおりの結果になった。
スキルの名前、効果に加えて、習得条件までわかるようになった。
つまり、他人に対してこの≪技能分析≫使いまくれば、ありとあらゆるスキルの効果と習得条件を知ることができる。
これは実質、この世界の攻略本を得たにも等しい。
そう、まさに攻略本。攻略本チートだ。
俺だけが「強くなる最短の道」を知った上で、スキルの習得を行えるのだから。
その恩恵は計り知れないだろう。
「よし、まずはどのスキルが強いか確認しよう……」
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