25.技能強奪の力
前の2話(24話・25話)を少し加筆しました。内容は以下の通りです。
・エリーゼを追放した男の名前が「ゴイル」であることを追記
・ゴイルのスキル構成・ステータスをハルトが確認するシーンを追記
大筋に変更はありませんので、読み直していただかなくても大丈夫とは思います。
突然のパーティ結成から一夜明けて。
俺とエリーゼは、早速ダンジョンへと繰り出した。
やってきたのは≪沼地の古神殿≫。以前、レベル上げでお世話になったダンジョンだ。
「あの、ここって結構モンスターのレベル、高いって聞くんですけど……大丈夫ですかね?」
エリーゼがおずおず聞いてくる。
エリーゼの今のレベルは11。このダンジョン出現するモンスターは大体15前後はあるので、“格上”を相手にすることになる。
「私、前のパーティでも攻撃力不足って言われてて……」
前のパーティから追放されたばかりのエリーゼは、自信なさげにそう言った。
だが、俺に言わせればそれはまったくもって杞憂だった。
「俺のスキルをコピーして使えば格上とも戦える。絶対大丈夫だ」
エリーゼが前のパーティで活躍できなかったのは、周囲が弱すぎた――もっと具体的に言うと周囲が弱いスキルしかもっていなかったからだ。
エリーゼの持つユニークスキル≪技能強奪≫を最大限活用すれば、少なくとも俺と同じくらいは戦えるはずだ。
「いざとなったら俺がカバーに入るから。まずはやってみよう」
心配そうなエリーゼにそう言い聞かせる。エリーゼは半信半疑という感じで俺についてくる。
少し進んでいくと、さっそく魔物に遭遇した。
デスガエル。
2メートルほどの黒い蛙で、身体能力が高く意外に手ごわい相手だ。
デスガエルのレベルは14。レベル11のエリーゼにとっては間違いなく格上だ。
だが。
「エリーゼ、俺の≪ダブルスラント≫を使ってくれ」
そう言って俺はエリーゼに手を差し出す。
「あ、はい!」
エリーゼは俺の手に軽く触れる。
その後、俺は自分のステータス画面を開くと、≪ダブルスラント≫の横に「使用不可」の文字が現れていた。
「ゲロゲロッ!!」
デスガエルは奇声を発したのち、俺たちに向かってとびかかってきた。
「エリーゼ、やっちまえ!」
俺が言うとエリーゼは「は、はい!」と返事をしてから地面を蹴り上げた。
「≪ダブルスラント≫!!」
斬り上げで一撃、そして流れるような斬り落としでもう一撃。
流れるような連撃が、デスガエルの身体を三等分にした。
「えっ?」
文字通りの瞬殺。
それをやったエリーゼ本人が一番驚く結果。
確かに、格上のモンスターを瞬殺するなんてことは通常ありえないので、エリーゼが驚いたのも無理はない。けれど、俺からすれば想定通りの結果だった。
「言った通りでしょ?」
エリーゼのユニークスキル≪技能強奪≫は、他人のスキルをそのまま使える破格の性能を持っている。つまり、自分よりはるかにレベルが高い人が持っている強力なスキルを、そのまま借りて使うことができるのだ。
そんな彼女が「足手まとい」なはずがない。
「私、てっきり技を奪ったら、攻撃力が下がってしまうんだとばかり思ってました……」
エリーゼはそう告白する。
なるほど、エリーゼは火力がでないのは自分のせいだと思い込んでいたのだ。
いや、そう周囲の人間の勘違いに引っ張られて、そう思い込まされていたのかもしれない。
「もちろんレベル差の影響はあるけど、それを除けばちゃんとスキルが持つ本来の力を発揮できてるよ。他人のスキルだから威力がでない、なんてことはない」
ゴイルは、彼女が火力不足だと断じたが、それはある意味正しかった。
だがその原因は彼女にはない。
ゴイルが弱いから、その技を使うエリーゼも弱くなってしまっていただけなのだ。
他人のステータスやスキルの能力を定量的に把握できる俺には、そのことがちゃんとわかっていたが、彼女自身はそれを言葉で説明されても信じられないだろう。
だから、実践で実感してもらったのだ。
ただ、それでもまだ彼女は自分の力を信じきれないようだった。
「で、でも、私がハルトさんのスキルを奪っちゃったら、ハルトさんは戦えなくなっちゃいますよね……」
エリーゼはその事実に行きあたってしゅんとする。
ただ、俺はそれは大した問題ではないと思っていた。
「えっと、スキルってすぐに返してもらうことはできるの?」
「はい。スキルは返したい時にいつでも返せます」
「そうか。なら、交代で使えば問題ないな。二人分のMPを使って、今までの二倍≪ダブルスラント≫を打てるようになるなら、めちゃくちゃ助かる」
長期的に見れば単純に火力が二倍になるのと同じだ。
「それなら……良かったです」
エリーゼは、ようやく自分が「足手まとい」ではないと納得してくれたようだ。
「それに、今は仲間の代わりにスキルを使うだけかもしれないけど、次にレベルアップしたらわからないよ」
俺の言葉に、エリーゼはあまりピンときていない様子だった。
なので、俺はさらに付け加える。
「今は味方の技を“奪う”だけだけど、もしかしたら敵の技を奪えるようになるかもしれないってこと」
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