21.ちょっとした魔眼
事件が一件落着した後、俺は一旦宿に戻ってきた。
Cランク以上の上級クエストを受けたかったが、明日にならないと新しいライセンスは発行されないとのことなので、一旦クエストを受けるのはやめておいた。
代わりに、今日は新たなスキルを試すことにした。溜め込んでいたスキルポイントを≪状態分析≫のレベルアップに注ぎ込む。
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スキルポイント3を≪状態分析≫割り振りました。
◇保有SP:2
◇保有スキル一覧
技能分析Lv 3
状態分析Lv 3 ← New!
ライフバリアLv 1
剣士の誇りLv 3
シャープラッシュLv 1
マジックアローLv 1
狩人の捌きLv 1
ダブルスラントLv 3
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既にLv2の状態でも俺に多大な恩恵をもたらしてくれた≪状態分析≫が、次はどう進化するのか。
俺は早速その効果を確認する。
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状態分析Lv3
消費MP:1
説明 :使用後5分間、相手のステータスを表示する。
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「持続時間が伸びた……だけ?」
今までは、使うたびに“その時点の情報”を表示するだけであったが、おそらく今後は1回使えば5分間はデータをリアルタイムで更新し続けてくれる、というようなことだろう。
俺は想像どおりかを確かめるため、早速≪状態分析≫を使ってみる。
すると、視界の端に自分のステータスが表示された。
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ステータス【ハルト・スプリングスティーン】
レベル:20
バリアポイント:20
マジックポイント:98/100
経験値:31,340/715,700
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表示されるデータの種類はは今までと変わりない。
となると、後はデータがリアルタイムに更新されるかどうか。俺はあえて≪技能分析≫を使って魔力を消費してみる。
すると、やはりステータス画面の魔力量もリアルタイムで更新された。
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ステータス【ハルト・スプリングスティーン】
レベル:20
バリアポイント:50
マジックポイント:97/100
経験値:31,340/715,700
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うーん。確かに毎回技を使わなくてもステータスを更新できるのは便利だけど……
スキルポイント3に見合うかというと、正直微妙だ。
元々、元々消費MPが極端に小さかったので、見たい時に都度都度確認するという運用で特に問題はなかった。なので「MP1で5分間見たい放題」と言われても、あまりメリットを感じない。
「いや、もしかしたらもっとすごい何かがあるかも……そう信じたい」
俺は諦めきれず、何かもっとすごい効果がないか探ることにした。
とりあえず実際にモンスターとの戦闘で使ってみよう。
俺はそう決めて、近くのダンジョンに繰り出すことにした。
立ち上がって、剣を手に取り靴を履く。
そして宿を出ようとした瞬間。
ふと入り口の鏡に映った自分の姿に目が留まった。
自分の頭の上に何やら数字が浮かんで見えたのだ。
「お?」
50/97。
白い文字でそう書かれている。
「これって……俺のステータス……?」
俺はその予想を確かめるため、もう一度≪技能分析≫を使って、魔力を消費する。
そして鏡を見てみると、数字は「50/96」と変わっていた。それはちょうど俺のステータス画面に映るバリアポイントとマジックポイントの数字と同じだった。
「……ポイントが見える!?」
今までステータス画面上でしか見えなかったものが、まるで拡張現実のように、情報が物体の近くに重なって見える。
これはうれしい進化だ。
今まで、数字はステータス画面上でしかみれなかった。従って、モンスターとの戦闘中に数字を確認するには、相手から視線をそらしてステータス画面を見る必要があった。現代で言うところの「ながらスマホ」状態だったのだ。
今後それをしなくてよくなったのは、地味だが戦闘面でのメリットが大きい。
そして、俺はもしかしてと期待を込めて、もう一つ実験をしてみる。
剣を抜いて、自分の手に刃を当てた。もちろんライフバリアが俺の体を守ってくれて、体は無傷。だが、その瞬間確実にバリアポイントは削られる。
そして――
見ると、剣を当てたところに「1」と数字がポップした。
慌てて鏡で頭上の数値を確認すると「49/97」とバリアポイントの方が1ポイント分減っていた。
「おお!」
さながらRPGゲームのように、与えたダメージも可視化されたのだ。
これも地味だが俺にとってはめちゃくちゃありがたい!
例えば、昇級試験の対グリムドール戦。相手の弱点を探るために、色々な場所を攻撃して、その都度ステータス画面でダメージ量を確認していたが、今後はそんな作業は不要になる。
攻撃したときに、どれだけダメージを与えられたのかが瞬時に分かれば、相手の弱点を探るのはぐっと楽になる。
これは俺としては、“ちょっとした魔眼”を手に入れた気分だ。
実はグリムドール戦を終えて、ちょうど「モンスターの弱点を探る方法」を確立するために検証をしようと思っていたところだ。魔眼はそれに大いに役立つだろう。
よし。さっそく、いろいろ検証してみよう。