表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/25

18.昇級試験4


「ふひッ」


 グリムドールは今度は俺たちの方に向き直り、笑みを漏らす。


 俺は背筋に走った悪寒を振り払うように、二刀の剣を振りぬいた。


「≪ダブルスラント≫!!」


 全身全霊の斬撃でグリムドールに斬り掛かる。しかし、その攻撃はその分厚い結界をわずかにえぐるだけだった。


 俺はすぐさま距離を取り、≪状態分析≫で戦果を確認する。


------------------------------

グリムドール


◇ステータス

レベル:27

BPバリアポイント:4,310/4,350

MPマジックポイント:0/0


------------------------------


 本当にわずかにバリアポイントを削っただけに終わった。

 ≪ダブルスラントLv3≫は、同格相手なら80ほどのダメージを与えられるが、今回は相手のレベルが高すぎるのだろう。半分しかダメージを与えられない。

 このペースで行くと、100回ヒットさせても倒せない。つまりその前に確実に魔力切れになってジエンドだ。


「ギャハハ!!」


 甲高い笑い声とともに、グリムドールはその大きな手で俺を押しつぶそうとしてくる。

 俺はそれを全身全霊の跳躍で避ける。


「クソッ!」 



 攻撃スキルこそないが、高ステータスから繰り出される物理攻撃は、格下の俺たちにとって十二分に致命傷になりうる。


 こちらは100回攻撃を当てないと勝てない。

 あちらは何度か当てれば勝利。


「無理ゲーすぎんだろ!!」


 ゲームだったらキレてる。


「≪魔斬剣≫!」


 サイラスも加勢してくるが、当然大したダメージは与えられない。ジャパニーズコトワザにある通り、焼け石に水だ。


 いや、むしろ。

 新しいオモチャを見つけたグリムドールは、サイラスの方に向かって猪突猛進。


「ひぃッ!?」


 ひるんだサイラスの身体をわしづかみにし、そのままボス部屋の入り口とは反対側に放り投げた。


「マジでやべぇ……なんとかしろよ、俺」


 あえて口に出して、俺は頭をフル回転させる。


 データだ。


 現状アイツを倒すには、最大火力で100回以上殴り続けないといけない。

 けれどそれは絶対に無理だ。


 ならばどうする?


 分解して考えろ。


 そうだハルト。シンプルな掛け算だ。

 攻撃力×回数=ダメージ

 たったこれだけの計算だ。


 この掛け算を最大化するには?


 MPを増やして攻撃回数は増やすのはどうだ。

 いや白魔術師がいれば別だが、剣士だけのパーティではそれは無理。


 なら攻撃力を増やすしかないか。


 例えば、スキルポイントを割り振って≪ダブルスラント≫のレベルを上げる?

 いや、そもそもポイントが足らないし、それで上がる攻撃力はたかが知れている。


 ならば、今あるスキルで、大きなダメージを与えるか?

 同じスキルで、二倍、三倍のダメージを与える。


 それならいけるかもしれない。

 例えば、属性によって与えられるダメージ量がかわるかもしれない。

 あるいは、当てる場所も大事かもしれない。

 

 

「≪状態分析≫!」


 俺はスキルを使って、現状を把握する。

 

------------------------------

グリムドール


◇ステータス

レベル:27

BPバリアポイント:4,300/4,350


------------------------------

 

 よし、今のBPは4,300だな。

 ここから、どのスキルを使って攻撃した時に一番効率よくダメージを与えらえるか見てみる。


 と言っても、俺が持っている二刀流以外の攻撃スキルは二つしかないが。


「≪マジックアロー≫!」


 弓矢の攻撃を当てて、その後すぐさま ≪状態分析≫で相手のBPの減り具合を調べる。

 そしてダメージ量/消費した魔力を算出。魔力量当たりのダメージ量を算出。


「≪アイスアロー≫!」


 続けて別の技でも試す。


 ひとまずわかったのは、≪マジックアロー≫も≪アイスアロー≫も≪ダブルスラント≫に比べると効率は悪い。MPはなるべく≪ダブルスラント≫に使った方がよさそうだ。


 では、こんどは当てる場所はどうか。


「ハッ!!」


 俺はグリムドールに向かって跳躍し、スキルを使わずに剣技でダメージを測る。


 脳天、目、脇、すね……ダメージが通りやすそうな場所を順番に攻撃して、ダメージ量を測っていく。

 ――けれど多少与えられるダメージに差はあれど、この劣勢を覆すほどの差は見つからない。


 全然突破口が見えない。

 焦りばかりが募る。

 このままじゃ絶対に勝てない。


 いっそ、能天気に気絶してやがる脳筋試験官のことは放って逃げるか?

 いや、いくらなんでもそれはできねぇか。


「クソッ!!」


 俺は怒りをぶつけるように、やけくそぎみでグリムドールの腹に向かって剣を突きさした。


 当然、攻撃は大したダメージを与えられず、結界に跳ね返される。

 けれど。


 俺はその中に、今までに感じたことがない感触を感じた。

 もしかしたら勘違いかもしれないが……本当にわずかだけど……「入った」気がした。


 俺はその感覚が正しいかを確かめるために、≪状態分析≫で相手のバリアポイントの減りを確認した。


 すると。


「今のは……効いてる!?」


 スキルの補正がないただの突き攻撃では大したダメージは与えられない。

 けれど、その量はさきほどまでとは明らかに違った。


「もしかして……へそ・・が弱点なのか??」


 赤ん坊の見た目をしたモンスターの弱点がへそ。

 それはかなりあり得る線だ。


 俺は確かめるために、先ほどと同じ場所に≪ダブルスラント≫を放つ。

 それまでであれば、大したダメージは与えられず跳ね返されていたが――


「ギィィア!?」


 グリムドールは、それまでのどこか楽し気な声色とはまったく違う、あきらかに苦しみから上げたであろう鳴き声を出す。


 俺はすぐに距離を取り、再びどれだけダメージを与えられたか確かめる。

 すると、


「やっぱりだ! ちゃんとダメージが入ってる!!」


 それまでと比べて倍ほどのダメージが入っていた。


 やはり、なぜかはわからないがアイツのへそが弱点になっている!

 

「サイラス! へそが弱点だ! 交互にへそを狙って攻撃するぞ!!」


 俺はそう指示を飛ばすと、サイラスも素直に俺の言うとおり攻撃を繰り出した。


 へそを攻撃すると常の二倍以上ダメージを与えられるみたいだ。

 であれば後は簡単な算数。


 俺たちの残りのMPを全て注ぎ込めば、確実に倒せる。


 だからもうMPを出し惜しみする必要はない。俺は全てを振り絞って剣を放つ。


「≪ダブルスラント≫!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ