13.最速レベルアップ
≪沼地の古神殿≫
王都から数キロ離れたところにあるダンジョンだ。その名の通り、廃墟になった神殿が広い沼地に鎮座している。
このダンジョンはあることで有名だった。
一言で言うと「とにかくめんどくさい」のだ。
出現するモンスターが「しぶとい」やつばかりで、倒すのにとにかく時間ががかる。その上、苦労して倒したところで有用な素材が手に入るわけでもない、というおまけつきで、冒険者から忌避され続けているのである。
結果、発見から数十年以上たつが、攻略されることなく放置され続けている。
ここはそんな「外れダンジョン」だが、経験値を効率的に稼ぐ方法を知っている俺にとって、ここは絶好の「狩場」だった。
俺はぬかるんだ地面を進んでいく。
そして数分歩くと、早速とあるモンスターに遭遇する。
「リバイバルスライム……!」
大した攻撃スキルは持っていないので、ある意味安心できる相手だ。
しかしその名の通りダメージを与えても「復活」するのだ。
煮ても焼いてもすぐに元通り。魔力切れになるまでダメージを与え続けないと倒せない。そんな「めんどくさい相手」。
一般的に、リバイバルスライムと戦うのは「時間の無駄」なので、遭遇したら「逃げる」のが最適解と言われている。
ゆえにここのリバイバルスライムも長年放置され続けている。
「≪状態分析≫」
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ステータス【リバイバルスライム】
レベル:15
BP:0
MP:1,200/1,200
経験値:1,100/113,100
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見ると、やはり高レベルに成長していた。
通常リバイバルスライムは、レベルで言うと10程度が平均のモンスターと言われている。しかし数十年倒されることなく成長し続けたことで、レベルは15にまで達してしまっているのだ。
こうなると倒すのも一苦労なので、ますます放置されてしまうという悪循環に陥る。
「でも、今の俺にとってはめちゃくちゃ好都合なんだよな」
俺は思わずニヤリと笑って呟いた。
何度も蘇る高レベルモンスター。
それはすなわち、経験値を稼ぎ放題ということだ。
「悪いけど、“サンドバッグ”になってもらうぞ」
俺は剣を抜いて、勢いよくリバイバルスライムに斬りかかった。
「ダブルスラント!」
魔力を含んだ斬撃が、スライムの体を三つに斬り裂く。剣圧によって切り裂かれた泥状の身体は背後にあった壁に叩きつけられ、べちゃりと形を失う。
しかし次の瞬間、四散した体は一か所に吸い寄せられ、再び半円状の形を取り戻す。
普通の冒険者なら溜息をつきたくなる瞬間だろうが、俺は違う。
俺は再びスライムと間合いを詰め、その体を連撃で切り刻んでいく。何度斬っても、しぶとく復活するが、それでもめげない。
――そのまま俺は10分ほど剣を振るい続ける。
もう何度斬り刻んだかわからないが、リバイバルスライムはまだまだ魔力を残しており、一向に倒れる気配がない。
だが、
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レベルアップしました。
Lv5 ⇒ Lv6
SPを1獲得しました。
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10分間も「格上」相手に戦い続けた結果、俺はすごい勢いで経験値を稼ぎ、あっという間にレベルを上げることに成功した。
俺の編み出した「格上サンドバッグ作戦」が有効だと証明されたのだ。
「もっと行くぞ!!」
俺はスライムに向き直り、もう一度気合を入れ直す。
剣を振るい続けているので体力は着実に減っているが、最速で成長しているという事実にアドレナリンが出て、むしろ気力は増していた。
それから次の15分で、さらにレベルが上がる。
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レベルアップしました。
Lv6 ⇒ Lv7
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それでもまだ剣を振るい続け、またまたレベルアップ。
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レベルアップしました。
Lv7 ⇒ Lv8
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さらにさらに剣を振るい続けて一時間。
リバイバルスライムがもう何度目かわからない復活をすると、そこでようやく魔力が切れたようだ。心なしか、スライムの目に恐怖の色が見えた気がした。
「これで最後だ!」
ダブルスラントをリバイバルスライムの身体に叩き込む。その体が四散したのはもう何度目かわからないが、もう復活することはなかった。
そして、最後の一撃で経験値がたまり、俺は再びレベルアップする。
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レベルアップしました。
Lv8 ⇒ Lv9
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リバイバルスライム相手にダメージを与え続けた結果、たった一時間で4つもレベルを上げることができた。
しかもその間一度もダメージを食らうことなく、である。
これで“格上サンドバッグ作戦”は、最速レベルアップに有効だと証明された。
この≪沼地の古神殿≫には、他にも放置されてレベルが上がっている≪リバイバルスライム≫がうじゃうじゃいる。それらをサンドバッグにし続ければ、もっともっとレベルを上げることができるだろう。
「よし、もっとレベルをあげてやるぞ!」




