ローズの最後の言葉・・・タイタニック・・・
26年ぶりにタイタニックを観て、やっとラストシーンにスッキリしました。
1997年公開の大ヒット映画「タイタニック」、当時映画館で見たと思うのですが、それなりに感動したけど腑に落ちない部分があったのを覚えています。それはラストシーンでローズがジャックと結ばれたと勘違いしていたからなんですね。たった3日の出来事に固執しすぎてその後の生涯連れ添った旦那や家族をないがしろにしていないか、というモヤモヤが燻っていたわけです。
今回再度視聴して細部を見直し、さらに時代背景や伏線回収など、いろいろな人の感想などを拝見し、この物語をやっと自分なりに解釈できたと思います。
さて、映画タイタニックを理解するためにはいくつかの伏線があります。これは一度の視聴ではすべてに気づくのは不可能でしょう。その時代背景から見ていきますと、まずこの時代のイギリスの身分制度が厳しかったこと、上流階級の人は同じ上流階級の人としか結婚できないことや、男性は仕事、女性は家庭へという男女格差も厳格だったことを当時の前提として捉えておく必要があります。
次に映画の主人公たちの設定ですが、ジャックはアメリカから絵描きになろうと渡欧したが、夢破れアメリカに帰国しようとする、でもポジティブシンキングな貧乏人です。ローズは上流階級だが17歳で政略結婚させられそうになり、その後の人生に希望を持てず鬱になりかけという感じでしょうか。そこで大事な伏線がいくつかあります。
まずはジャックのスケッチブックに描かれた「パリのカフェでありったけの宝石を身に着けて、死んだ恋人の帰りを待つ老婆の絵」ですが、これが一番大きなプロットかと思います。ジャックがローズにこんなふうになってはいけないという暗喩ですね。
そこで「君は生き残るんだ。そして、君はたくさんの赤ちゃんを作って、子供たちが成長するのを見守るんだ。年を取って、暖かいベッドで死ぬんだ。ここじゃない。いいね?」というジャックの最後のセリフにつながります。タイタニックが沈没し救助を待つ中、ジャックの死を確信したローズが、ここで一緒に死んでしまったり、恋人の喪失を引きずって、いつまでも感傷に浸って独り身でいるような人生を選択してはならないと決心できたので海の中のジャックの手を離すことができたんだと思います。
「馬にまたがって乗る女性になる。」
ジャックから言われた言葉ですが、当時のイギリス女性の馬の乗り方はサイドサドルという横乗りで、またがって乗るのは上流階級の女性としては非常識と考えられていたようです。なので馬にまたがるという行為は身分やしきたりにとらわれず自由に生きることを示唆しています。
「女性にとって大学は人生の伴侶を探す場である。」
ローズの母がこぼした言葉ですが、17歳のローズに金持ちの婚約者が決まったため、伴侶を見つけるためわざわざ大学に行かなくてもいいという意味にもとれます。
目を閉じた老ローズのベッドサイドには、ちゃんと大学を卒業した写真と馬にまたがっている写真が飾られています。これは結婚相手を探すためではなく自分のために大学を卒業し、馬にまたがることも可能な自由な人生を送ることができた、ということを示しています。
ローズはタイタニック沈没後からローズ・ドーソンとジャックの姓を名乗ったことで、家柄を放棄し母親と決別して自分らしく生きていくことを決意したこと、人生の最後にジャックと約束したことの全てがかなえられたことが分かります。
さて、こういったエピソードから推察して、もうすぐ人生を終えようとしているローズはあの世でジャックと再会したら一番にどんな気持ちを伝えたいでしょうか?
私がローズの立場なら感謝を伝えるしかないと思うんですね。あの時は確かに愛していたし悲恋ではあったけど、あなたのおかげで自分は生まれ変わることができたと。ジャックと出会っていなければ、タイタニックで自殺を完遂か、生きていたとしても好きでもない結婚相手と鳥かごの中の生活のような人生を送らなければならなかったはず。そう考えたら、自分はなんて幸せな人生を送れたんだとジャックに感謝する気持ちでいっぱいでしょう。
ラストシーン、ローズはベッドの中で息を引き取って(と確信しています)、魂は沈没船からあの日に戻ります。もちろんローズにとって人生で一番大事な日と場所であったことは間違いないのですから。
あのセレブレーションを結婚式と解釈する方もいらっしゃいますが、私はそうは思いません。結婚式ならジャックが正装でもいいんじゃないと思うのですが、ラストシーンは三等船室の普段着ですよね。いやローズはウエディングドレスを着ていたじゃないか、という人もいるかもしれませんが、たまたま白っぽいドレスを着ていただけですよ(笑)当時流行していたベールも被ってないしね。
ということで、私はタイタニックで亡くなった方と同じ場所(天国)にやってきた場面だと思っています。天国へのドアが開き、天国への階段を上りながら幸せな人生を送れたことに祝福を受けていると。なのでローズは、踊り場で待っているジャックにはまず「ありがとう」と言いたいのではないでしょうか。
抱きしめてキスするその刹那、ローズがジャックの肩に手を回すとき、わずかながら躊躇している様がみてとれますが、結婚式の誓いのキスというより感極まってキスしたように感じました。だって一途に思い続けていたら躊躇せずガバッと行くだろうし、ローズのリアル夫にも申し訳ない感じになっちゃいますよね。
セリフはありませんがアイラブユーではなく「サンキュー、ジャック」これが私なりのローズのラストメッセージだったんじゃないかな、そんなふうに思います。