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硝子の板

作者: 雑賀崎紫蘭

これは裕子さん(仮名)が高校三年生の時のお話です。



当時裕子さんは、高校の最寄駅から学校まで四十分ほど歩いて通っていました。入学当初は駅から学校まではバスで通っていたのですが、ある時からダイエットのために歩くようにしたそうです。

当時はいわゆるガラケーが主流で、今のようにスマートフォンの地図アプリなどなく、初めのうちはかつて自分が乗っていたバスの通り道を歩いていましたが、道幅が狭いわりに車通りの多い危険な道だったため、裕子さんはバス通りから一本離れた、車も人も少ない道を歩くようになりました。



その日の朝も裕子さんは、その道を歩いていました。

歩いていると、前から黒い軽自動車がゆっくりと近づいて来ました。

軽自動車とすれ違った瞬間、裕子さんの後ろで、カシャ、と何かが軽くぶつかる音がしたそうです。

「その時は、今の車が電柱か何かに当たったのかな、と思ったんです」

裕子さんは立ち止まって振り返りましたが、車は何事もなく走り去っていきました。

不思議に思いながら学校へ向かって一歩踏み出した瞬間…。


ガッシャーン!

裕子さんの目の前に、大きな硝子の板が降ってきました。

硝子の板は裕子さんのローファーの爪先からわずか数センチのところに落ち、粉々に砕け散りました。

「あの時振り返らずそのまま歩いていたら、私に直撃していたと思います」

幸い、硝子の破片は裕子さんに当たることもなく、裕子さんは無事でした。

裕子さんは、その道路に面した家の二階の窓硝子が外れて落ちてきたのかと思い、窓の方を見上げてみましたが変わった様子はなく、またその家の人が外に出てくる気配もありませんでした。

何だったんだろうと思いながら、裕子さんは警察に通報しようと、ポケットから携帯電話を取り出しました。

「でも私、その時ふと、あ、学校に遅刻しちゃうって思ったんです」

結局裕子さんは携帯電話をポケットに戻し、そのまま学校へ向かったそうです。



翌朝、裕子さんはまた同じ道を歩いて学校へ行きました。

前日に硝子の板が落ちてきた場所は、綺麗に元通りになっていました。

学校へ着いて、裕子さんは前日の話を友達にしました。

その近くに住んでいる子もいましたが、誰一人としてその話を知っている子はいませんでした。



あの硝子の板はどこから、なぜ落ちてきたのか。

そして、落ちてくる直前に裕子さんが聞いた音は何だったのか。

今でもわからないままです。



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