初めの夢
三題噺もどき―にひゃくじゅうなな。
四限目の終了の合図が鳴る。
待ちに待った給食の時間だ。
学校での楽しみと言えば、これか、休み時間か、美術の時間だけだ。それ以外は苦痛でしかない。
ちなみに、四限目は体育だったので、尚更給食が楽しみで仕方ない。
「……」
さっさと制服に着替える。
正直、この後は昼休みだしその後は掃除の時間なので、着替えなくてもいいと言われているのだが。私はその昼休みの時間に、図書館に行くのだ。汚れた体育服で入るのは、個人的には許容範囲外だ。なので、一人トイレに駆け込み着替えをしている。
他の皆は給食の準備中だ。いやはや、今週が当番でなくてよかった。
「……」
着替え終わり、教室に戻る。
と、もうほとんどの準備が終わっていた。
後は、当番の皆が給食着を片付けたり、最後の後始末をしたりする程度だろうか。
あぶない、もう少し遅かったら、変な気持ちになる所だった。
「……」
いそいそと席に着き、さて本日の給食は…。
「……ぇ」
なんだこれ。
「……??」
三種類ある皿のうち、そのすべてが紫で染まっている。
「……なぜ?」
白米が入っているはずの茶碗には、小さく刻まれた茄子?のようなものがぎっしりと詰まっている。
汁物の入っているお椀には、丸々とした茄子が浮かんでいる。液体そのものは透明なのものだから、茄子の色がにじみ出てて、もう紫の液体に見える。
残り一つのおかずが入るはずの小皿には、なんだこれ…。乱切りや細切りになっている、これも茄子のサラダ?だろうか。かかっているドレッシングらしきものも、紫だから、何が何だか。
「……うわ」
よくよく見れば、牛乳パックも紫だ。
どういうことだ。
「???」
一人混乱に陥っていると、当番の声が上がる。
何事もないように、いただきますのあいさつを済ませ、席に着きなおす。
そうして、誰一人この給食に疑問を持たずに食べ始める。
見た目が紫一色の、栄養の偏りもすごそうなのに、これに疑問を持たずに食べられるのか…?
混乱に混乱が重なり、手を付けようにも付けられず。
「……どうしたの?」
挨拶を済ませた後にも、そんな感じで未だに箸すら持っていない私を不審に思ってか。隣に座る彼女が声を掛けてきた。
「茄子苦手だっけ?」
―あぁ、これが茄子だという認識はあるのか。食べてるもんな。
「いや、そういうわけじゃ……」
―むしろ好物なのだが。
「??」
―怪訝に見つめてくる彼女。
しかし、このまま食べずに放っておくわけにも行かないし。腹は減っている。
「……っし」
なんとか意を決し、とりあえず一番マシそうなサラダに手を付けてみる。
細切りにされている茄子を箸で挟み、口に運ぶ。
「……ん?」
甘い。
茄子ってこんなに甘いものなのか……?そんな種類のもあるだろうけど。
これは……どちらかというと、野菜の甘さというより……。
「このドレッシング餡子だってー」
「っごふっ……っ」
思わずむせた。
なんでだよ…。なんでそこで餡子なんだ…。
いやしかし、どうりで既視感のある味だった。
実は最近、とあるところに家族旅行で訪れていて。
―いやはや、あれはほんとにいい思い出だ。こんな良く分からない茄子料理もどうでもよくなるほどに。
「大丈夫?」
「ん、へーき」
そうそう。
あれが一番だった。季節がよかったこともあって、山には紅葉が広がっていたのだが、それを観覧車に乗って見下ろしたあの景色はとても。言葉では言い表せないほどに美しかった。一生の思い出にしたいものだ。
「……」
それで、そこで有名な紅葉の葉の形をしたまんじゅうを食べたのだ。
それが割と好みの味で。つい最近まで買い置きして食べていたのだ。
あれを揚げたのもおいしいのだが、残念ながら猫舌なもので。
「……」
しっかし、茄子に餡子のドレッシング。
ドレッシングというか…。
うん。まぁ。しかし。これが案外あっているから怖い。
私の舌、こんなにバカだったか?
「……」
とりあえず、口直しにと、牛乳をてにとる。
―が、これも案の定というかなんというか。
紫の液体がどろとはいっていた。
茄子絞ったやつとかだったらどうしよう…。
いや、さっきの餡子もあるし、案外ぶどうジュースとか…。
「……」
いざ、と口に含もうと、紙パックの端を口につけたとき。
ジジジジジジーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「―――!?」
目が覚めた。
「…うぇ」
今日は一月一日の朝だ。
初夢これかよ…。
お題:学校・紅葉・観覧車