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俺の場合編 : バナナ、それは案外滑る

「なんでよ!今日は付き合って一年記念日だよ!忘れちゃったの?!」



目の前でデカイ声を出して癇癪を起こしている女が居る。こいつは俺の生きてた頃の彼女で桐宮きりみや 佳奈かなという。


大学1年のときに同じサークルで出会い、2年かけてやっとの事で口説き落とした愛しの天使マイエンジェルだ。なんとその間4回も告白したんだぜ。すごくね?



「ホントごめんって。これからバイトなんだよ。絶対どっかで埋め合わせするから」



彼女に向かって手を合わせる。この女見た目は可愛いんだけど、いかんせん性格がややキツイ。初めて見かけたときとかホント天使だと思ったんだよな。蓋を開けたらあくま、だったんだけどな、懐かしい。


まぁそんなS入った彼女だが俺はMなので何の問題もない。むしろ罵倒されるのは大歓迎だぜ~(ルパン風に)てなもんだ。だがこれは自分に非がある事なので少々申し訳なく思う。っつか付き合った日とかよく覚えてるな。



「バカ!アホ!ドジ!鳥頭!」バシバシ



罵詈雑言をあびせかけながらバッグをブンブン振り回して俺を殴ってくる。おお、この痛みたまらん…じゃなくて!



「いてぇ。あで、ちょ、金具がマジにいてぇ。だからごめんて、わかった。できるだけ早くバイト終わるよう頼むから待っててよ」



「うるさい!ドM!レイパー!死ね!」ブンブンブン



「うぇ、ふが、人聞きの悪いことを言うな、あぶふ、あと何度も言うが俺はドMじゃない、ハードMだ」



「うるさい!!痴漢男!変態!!」ビュオン!バコーン





ひとしきり罵詈雑言を叫んで締めの一撃を繰り出すと、走って玄関を出て行ってしまった。いてぇ…鼻血が止まらん。しかし朝っぱらからなんつー卑猥な言葉を……。


いいですかまだ22といううら若き乙女、ましてや俺のエンジェルがそんな単語を使うなんて…。女子としてあるまじきことではないですか?



だがそれがいい。(←香川さんは「う、うん…」みたいなリアクションだった)



話を戻そう。拗ねた佳奈が出て行くのはよくある話で、ここで重要なのが、ちゃんと追いかけてやらなくてはならないということだ。


以前、似たようなシチュエーションで放っておいたら戻ってきて



「なんで追いかけてくれないのよ!」



と言われて、股間を蹴り上げられた。正直アレはハードMの俺でもきつかった。ゴールデンボールとは体外に出た内臓でだな、その辺の説明はカットするけど(詳しく知りたい人は烈○王氏に聞いてみよう)ホント悶絶した。その日はずっとたてなかった。



そんな半殺人事件みたいなことがあったので、二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、佳奈をすかさず追いかける。



いつもどおりの交差点を渡ったところで待っている。わかりやすい。



「おーい、佳奈ー」



大声を出して呼びかける。信号は赤だが大丈夫だろ。俺は思いっきり信号を無視して横断歩道を駆け抜ける。



プワーー!!プワーー!!



「あ、大介!危ない!」



佳奈が叫ぶ。横からダンプが突っ込んでくる、フッそんな事は百も承知!俺の特に鍛えていない脚力をもってすれば!わたりきれる!



全力疾走し駆け抜ける、そして最後の一歩を大きくジャンプ!!華麗に着地しておラヴリーエンジェルに向かってこう言うのさ



「心配かけさせんなよ」



と、もちろん歯を光らせて。



さぁ、着地だ!どりゃああーー!!



その時のことホント冗談と思いたい。いやな、着地までもいったんだわ。ちゃんと。そこまではしっかり計算どおり。


だけど俺の脚が大地を踏みしめることはなかったんだ。着地点に…その…今時ねぇだろって感じだけど…バ、バナナが置いてあって、それに滑ってドカーンと。



最後に言ってやったね




「そんなバナナ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~



「これが俺がここに居る理由です。」



なんとも恥ずかしい。そして情けない壮大な話だ。もはや逆に悲壮感すら出ん。



「そ、そうか。大変プスプスだったね。」



途中までは神妙な顔をして聞いていた香川さんだったが、今は鼻をプスプスさせている。



「笑ってくれてもいいですよ。というか笑ってください。そうじゃなきゃ浮かばれません!」



そう!芸人として!ただ死んではいけないのだっ!芸人じゃないけど。



「いやいや(プスプス)人として(プス)そんな事はでき(プスプス)ない」



「めっちゃプスプスなってますよ!いっそ笑って下さい。」



その後プスプスが収まるまで時間を要する香川さんであった。死因すらネタにできるここの場所に感謝だ。




「もう、次は香川さんの番ですよ。僕だけに話させて教えないなんて無しですよ。

いやでも聞きますから」



「あぁ、そうだね。春原君にだけ話させるのは確かに不公平だ。ただそんなに面白い話ではないけど、構わないかい?」



気のせいだろうか、香川さんの顔が一気に暗くなったような気がする。これは触れちゃいけない。しかしなぜか聞かずには居られない。そんな心があった。


そしてそれが勝ってしまった。



「いいですよ。お願いします。」



「そうか、それじゃあ。結果から言うとね、私は妻に殺されたんだ」


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