魔王様と魂廻の儀 3
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視界が良好になった事で、魔法陣の上に現れた者がはっきりと見えてくる。
その者の身長は、人間の子供より少し大きい程度であり、黒装束を身に纏っている。
髪や目の色も黒であり、肌の色以外は黒一色と言った感じだ。
普通に見れば人間の子供だと思う者が大半だろう。
しかし魔王は遥か昔ではあるが、この者に見覚えがあった。
「成功した様だな。」
「うんうん、大成功だよ!上から見てたけど、まさか本当に神を召喚出来ちゃうなんてね!」
召喚された神は、ケラケラと楽しそうに笑いながら言う。
と言うのも魔王が住む下界から、神々の住まう神界に干渉した例は、今までに存在しないのだ。
神々は地上の様子を見る事を娯楽としているので、当然魔王の動向も掴んでいた。
魔王と言えどもどうにも出来無いと判断して、神々は自らの直接的な干渉は出来無いので、魔王を殺せる程の恩恵を与えた者を新たに誕生させようかと考えていた程だった。
しかし魔王が前例の無い事ながら召喚魔法で実際に神を呼び出してしまった。
神々からすれば異例の事態で、神界は少し騒ぎになっているのだが、呼び出された神は楽しんでいる様子である。
「我としては安心しているけどな。それに死を司る神である死神ならば、目的にも合っていると言える。」
魔王が呟いた通り、小さな子供にしか見えない目の前の者は死神である。
自分自身を殺してもらうのが目的なので、これ以上はない神と言える。
そして死神と言えば、怖い神と勘違いされる事が多いが、全くそんな事はない。
司っている物が死の概念と言うだけで、他の神々と変わらないのだ。
「確かにそうだね!でも残念ながら僕でも簡単に君を殺す事は難しいんだよね!」
「なんだとっ!?」
死神が楽しそうに放った言葉ではあるが、魔王にとっては聞き逃せない言葉である。
これで無理ならば本当に魔王には打つ手が無くなってしまうからだ。
「勘違いしないでね!二つ条件をのんでくれれば可能だよ!君には魔族の滅亡を阻止してもらった恩もあるからね!」
「ふむ、条件とはなんだ?」
どうせ殺してもらうならば、何を言われても受け入れるつもりではある。
「一つ目は魔王として死んだ後の事なんだけど、神になるか地上で人族に転生するか、どっちか選んでほしいんだよね!」
「転生だと?」
魔王は退屈な時間から解放される事のみを考えていて、転生するつもりは特に無かった。
そもそも魔族の滅亡を救う役割を終えた自分は、死んだ後その他大勢の魂と同じルートで輪廻転生を繰り返す筈なのだ。
再び神々が自分に関わって、特殊なルートに導かれる理由が分からない。
「そうそう!本来なら死んだ後に、魂の浄化をして全てをリセット、新しい命として生まれ変わるって流れなんだけど、君には難しいんだよね!」
どうやら魔王は普通の輪廻転生をする事が出来無いらしい。
「その理由は聞いてもいいのか?」
「うん!理由は簡単だよ!君が強くなり過ぎたんだよね!それこそ僕達神々と同じ領域まで迫っているんだ!恩恵を与え過ぎた僕達のせいでもあるんだけどね!」
死神が言った様に、際限無く成長する魔王の力は既に神々の領域までになっていた。
そこまで行ってしまった魂の浄化と言うのは、完全にリセットする事が難しく、別の方法を取るしかなかったのだ。
「神と同じくらいの領域であれば、いっそ神になれと言う事か。」
自分でも驚いたが、実際地上の者達とは異次元の強さを持っているのは明らかだ。
正しく神の領域の力なのだろう。
「そう言う事!でも神になっても今の君みたいな退屈な日々が続く事になるから、人族一択だけどね!」
神々の娯楽は地上の様子を見る事だ。
当然他にも仕事や暇潰しはあるのだが、暇過ぎて死にたいと思う魔王にとって酷な事に違いはない。
「何故人族なんだ?」
この地上には様々な種族が存在している。
しかしその中でも且つて魔族を滅ぼす原因であった、人族しか選択肢はない様だ。
「それはこの後に上で説明されるよ!それに人族なら寿命もあるし、魔族時代とは違った生活もおくれて楽しいと思うよ!」
魔王は役割を果たす事だけを考えて強さだけを求める人生を過ごした。
人族の生活なんて経験した事は無いので、退屈かどうかは分からない。
神になると言う選択肢が魔王時代と同じく暇な時を過ごすとなれば、死ぬ意味が無い。
それに簡単に死ぬ事も叶わなそうな神になる選択肢はあり得ない。
「選択肢が無いならば従おう。二つ目は?」
「自分に弱体化の魔法を掛けてほしいんだよね!一撃で死ねなくて痛い思いするのも嫌でしょ?」
そう言って死神は何も無い空間から身の丈の倍はあろうかと言う巨大な大鎌を取り出した。
不気味な赤黒い色をしており、大鎌の危険さがひしひしと伝わってくる。
「死を司る神がそれを使って即死させられないのか?」
死神が持つ大鎌は所謂神器と言う物だ。
地上に存在する凡ゆる武器とは、比較する事すら愚かと言える存在感だ。
「君が規格外だから心配なだけさ!僕であっても、同種の存在に簡単に死の概念は与えられないからね!」
「分かった。」
魔王は自身に様々なデバフを与える弱体化の魔法を使い、死神にはバフを与える強化の魔法を使う。
と言っても元々のスペックが非常に高いので、どちらも気休めにしかならないが、それは死神も理解しているだろう。
「準備完了だ。」
これから目の前の死神に殺されると言うのに、魔王は少しワクワクしていた。
こんな気持ちは未熟だった頃に勇者と対峙して以来であろう。
「了解!魔王ジークルード・フィーデン、君の願いは死神である僕が叶えよう!」
死神は身の丈の倍はある大鎌を軽々と振るい構える。
そして大鎌はドス黒いオーラを纏い、魔王は久々に自身の危険信号が仕事をしている事に気がつく。
「じゃあまた後でね!ちょっとチクッとしますよ!」
魔王は治療か!と心の中でツッコミを入れたかと思うと、突然意識がプツリと途絶えた。
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