元魔王様と初めての依頼 9
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突然折れてしまった刀を見て、背後で二人の仲間が慌てている。
そしてそれを好機と見て武器の無いジルにゴブリン達が襲い掛かる。
「ふむ、さすがに負担を与え過ぎた様だな。」
しかし周りの反応とは違い、本人は折れた刀を見ながら至って冷静であった。
魔法やスキルが存在しない世界から取り寄せた武器だったので、そう言ったものに対応していない為、魔法の力に本体が耐えられなかったのだ。
それでも使い勝手は良かったので、いつか魔法やスキルにも対応した物を作ろうと考えるくらいには、刀と言う武器を気に入っていた。
「グギャア!」
近くにいたゴブリンジェネラルが得物を失って呆然と立ち尽くしている様に見えるジルに向かって、手斧を振り下ろしてくる。
しかしその手斧を平然とジルが片手で受け止めてしまったので、敵味方関係無く皆が驚いている。
「武器が無いと戦えないとでも?」
ジルは空いている手を使い、ゴブリンジェネラルの首を手刀で刎ねる。
刃物で斬られたかの様な断面に見えるが、理由はジルの両手が魔力によって覆われていたからだ。
「詠唱破棄に魔装、想像の遥か上を行くわね。」
「彼を見たら新人が皆やる気を無くしてしまわないか心配ですね。」
その様子を見たエルーとゾットは驚きを通り越して呆れた様な顔をしていた。
詠唱破棄と言うのはジルの隠されたスキルにもあるが、今回は別の意味で使われている。
本来魔法を使う場合に重要となるのは引き起こす現象のイメージである。
それをアシストする形で使われるのが詠唱なのだが、当然魔法は何度も使っていればイメージが確固たるものへとなってくる。
そうすると詠唱を必要とせず、イメージだけでも魔法を使える様になってくるのだ。
最もそこまで至るには、数百回、数千回と同じ魔法を扱う必要が人によってはあるので、簡単に辿り着ける領域では無い。
そして魔装と言うのは、自身の魔力を身体や武器に纏わせる技法である。
魔力を纏わせる事によって、攻撃力、防御力、速度等の基本的能力を高める事が出来る便利な技術なのだ。
これは魔法の適正やスキルを持っていなくても、魔力を持つ者ならば誰でも習得可能である。
しかし難易度はそれなりに高く、ひたすら反復練習をして使える様に慣れるしかない。
なので魔装を使える者は実力者の証とされている。
便利な能力なのだが習得難易度はそれなりに高く、新人冒険者であればまず使える事は無いのだ。
「魔装の良い練習台だな。」
ジルは転生後の人族の身体で試す様に、魔装した手で周りのゴブリン達を次々と葬っていく。
手を動かすたびに肉が切られ、骨が折れ、身体に穴が空き、死体が積み上がっていく。
もはやゴブリンキングは振り返る事すらしていない。
圧倒的な力を見せ付けるジルに恐怖を抱いているのか、震える足で必死に逃げていた。
「中級火魔法、ファイアウォール!」
ゴブリンを殴り殺していたジルが、そろそろ集落の外に逃げ出しそうになっていたゴブリンキングに向かって遠くから魔法を使う。
するとゴブリンキングの行く手を阻む様に、火の壁が地面から現れる。
メラメラと燃え盛る高き壁を前に、逃げられない事を悟るゴブリンキング。
「随分と逃げ越しな王だな。」
絶望しているゴブリンキングの後ろ姿に話し掛けるジル。
既にゴブリンキング以外のゴブリンは全て殺され、地面に転がっている。
「仮にも王の名を冠する魔物ならば、配下を見捨てず共に戦ってる姿が見たかったのだが。」
これは前世が王の名を冠した自分に少し重ねた言葉だ。
魔王ジークルードは、その圧倒的な個人の力により、誰の力を借りずとも一人で何でも解決出来る様になってしまった魔王であった。
神々からの使命に関係無く、仲間にも当然死んでほしくは無かった。
なので他者に頼らずとも一人で戦える力は有り難いとさえ思い、仲間の力を借りずに単独で戦う事が多かった。
だがその力は留まる事を知らずに膨れ上がり続け、望んでいないのに仲間を遠ざける事にも繋がる。
その結果仲間達と何かを共に行うと言う経験が、魔王の長き人生に比べるとあまりにも少なくなってしまった。
後に一人になってから戦いやそれ以外の事でも、もっと仲間達と共に様々な事を成し遂げたかったと、いなくなってから初めて後悔した。
そうしたいと思った時には既に自分ではどうする事も出来無くなっていたのだ。
しかし目の前にいるゴブリンキングは違う。
統率個体と呼ばれるゴブリンキングは、配下のゴブリンを統率して行動する事が可能だ。
個人の戦闘能力が突出している訳では無く、統率する事によって真価を発揮する。
故に共にジルと戦う事だって出来たのだが、実際は自分が逃げる為の時間稼ぎとして配下達を使った。
その結果が自分以外は全滅である。
過程は大きく違うが、二人の王は同じく孤独になった者同士ではあった。
「王とは民や配下を守り導く存在。己が命を長らえさせる駒では無く、困難を乗り越える仲間として率いるべき存在。まあ、我には説教をする資格は無いか。」
自分の場合は一人で事足りるので、仲間達に頼った事は少なかった。
そんな自分と違い気軽に頼る事の出来る王が、自分が生き残る為に仲間を見捨てる行動を取った事が、非常に残念に感じた。
「我も選択を間違え無ければ、多少は思い出が増えたのだろうな。」
魔力が膨大となり仲間達と切り離される未来は変えようが無い。
それに至るまでが魔王にとっての人生を選択出来る期間だった。
魔王人生は仲間達ともっと過ごしたかった後悔はあるが、神々に言われた通りに魔族を救えた喜びもあるので、まずまずの人生と自分では言えた。
「だが貴様の選択は最悪手だったな。」
「グギャアアアア!」
死を前にやけくそで反論する様にジルに殴り掛かってくるゴブリンキング。
「勝てないと分かった時に、仲間と共に逃走する事で統率していれば、全滅とまではならなかったかもしれん。まあ、我から逃げ切れたかは分からんが…なっ!」
そう言って哀れな選択をしたゴブリンキングの首を刎ねた。
宙を舞い床に転がった首と合った目には、何に対する事か分からないが後悔の色が浮かんでいる様にジルには見えた。
自分の前世には後悔した部分もあった。
この人生は後悔なんてしない様に、精一杯自由に生き抜こうと新たに思うジルだった。
閲覧ありがとうございました!
定期的に投稿していこうと考えているので、お暇なときにでもご覧になって頂ければ嬉しいです!!!




