元魔王様と孤児院の貧困事情 3
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ジルは男の子がフライドポテトを盗んでしまった店まで戻る。
取り敢えず捕まえた後にしっかり叱ったと報告すると、不満そうな表情をしていた。
本来であれば犯人である子供を連れてきてほしかったのだろう。
なのでお詫びの気持ちとして盗んだ分の代金と自分用に大量に商品を買ってやると、機嫌を直してそれ以上は突っかかってこなかった。
一先ず店との揉め事は収められたので、買ったフライドポテトを摘みつつシキ達の場所に戻る。
シキに見張ってもらっていたのもあって、誰も逃げ出してはいない。
「あー、ジル様ずるいのです!」
ジルが屋台で購入したフライドポテトを食べている事に気付いたシキが不満の声を漏らす。
「先程混ざって食べていただろうに。心配しなくても多めに買ってきている。」
ジルはそう言って無限倉庫のスキルで先程購入した物を取り出して渡す。
「それなら安心なのです。」
自分の分があると分かればシキにも文句は無い。
ジルから受け取って美味しそうに食べている。
「お兄ちゃんもっと頂戴。」
「ん?」
小さな女の子の一人がジルの服の裾をちょいちょいと引っ張りながら言う。
店にいく前に出しておいた山盛りのフライドポテトを乗せた大皿は既に綺麗に無くなっていた。
「あれだけ出したのに足りなかったのか?」
お腹を空かしている子供と言っても、四人くらいならば充分な量だと思っていたが足りなかったらしい。
「うん、もっと食べたい!」
「すっごく美味しかった!」
「こんなに美味しいの食べたの初めて!」
女の子達は口々にそう言ってジルにお代わりを求めた。
まだ食べられると言うのもあるが、初めて食べた美味しい料理をもっと食べたいと言う気持ちの方が強いのだろう。
「お、おいお前達!」
店からフライドポテトを盗んだ男の子はその様子に困惑している。
女の子達と違ってまだジルを完全に信用出来無いのだろう。
「その前に場所を移すとしよう。」
ここは表通りから外れた裏通りだ。
治安もあまり良くなく、子供達のいるべき場所では無い。
「…どこに連れていく気だ?」
男の子が警戒する様にジルに尋ねる。
衛兵に突き出されるのではと考えているのかもしれない。
自分だけならば構わないが、歳下の女の子達は巻き込みたく無いのだろう。
「孤児ならば普段暮らしているのは孤児院だろう?取り敢えずそこへ向かうとしよう。」
「っ!?俺がした事を言いふらすつもりか!」
孤児院であれば運営しているこの子供達の育ての親もいるだろう。
ジルが今回の事をその者達に言うのではないかと男の子は考えた。
「知られたくないのだろう?そんな事はしない。他にも腹を空かしている子供がいるならついでに食料を渡そうと思ってな。」
「信用出来るか!」
ジルは本心から言っているのだが、男の子はどうしても信じられない様だ。
「お兄ちゃん孤児院にいきたいの?」
どう説得しようかと考えていると、会話を聞いていた女の子の一人がジルに尋ねてくる。
「ああ、皆で食べた方が美味いだろう?案内してくれるか?」
男の子と話していても埒があかないと考えたジルがターゲットを変えて言う。
男の子よりも幼い女の子達なら説得もしやすいだろう。
「駄目だ!皆が奴隷にされるかもしれないんだぞ!」
男の子がそう言うと女の子達はその言葉を聞いて怯えた様な表情になってしまった。
孤児院は援助や寄付があると言っても子供が多ければ、やり繰りが大変である。
そしてお金を稼ぐ手段としては、何かに秀でた子供を養子や奴隷として買ってもらうと言う方法もある。
皆に満足に食べさせてやれないのであれば、裕福な者に子供を高く買ってもらい、残った者達にそのお金で食べさせてやる事が出来るので、売る選択肢も現実的な手段なのである。
だが子供達は大人の事情で家族同然の仲間と離ればなれにされる事を望んでいる者は少ないだろう。
この男の子もそれを望んでいないので警戒しているのだ。
「皆を連れていっちゃうの?」
女の子は怯えながらジルに尋ねる。
男の子と同じ様に女の子達もそれは望んでいないのだろう。
「そんな事はしない。見てみろ、我は精霊付きだ。精霊ってのは、悪人には懐かないんだぞ?」
ジルはそう言ってフライドポテトを食べているシキを呼び寄せ、掌に乗せて見せながら言う。
正確にはジルの言った事は正しくは無い。
精霊と契約する条件は、個々の精霊が契約する者の事を気にいるかどうかであり、資質や能力も時によっては関係するが最終的には精霊の判断で決まる。
なので悪人と契約する精霊がいる可能性も否定出来無いのである。
「そうなのです。ジル様はとっても優しい方なのです。奴隷狩りと一緒にするのは駄目なのです!」
めっ、とちょっと怒る様な仕草をするシキ。
しかし掌に乗るくらい小さなシキが怒っても全く怖さなど無く、むしろ可愛らしさしか感じられなかった。
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