元魔王様と人族の街 2
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「突然倒れるからほんま焦ったで。」
男性は目の前でパンをバクバクと食べているジルに向けて言う。
ジルが突然地面に倒れ伏したのは、空腹によるものだった。
男性は空腹で倒れたジルに、一先ず自分の食事として馬車に積んであったパンを提供した。
それなりの量があったのだが、もの凄い勢いでジルの胃袋に吸収されていき、あっという間に無くなってしまった。
「ふぅ、美味かったぞ。久しく忘れたいたが、これが空腹だったか。」
魔力を得られれば生きていける身体だった魔王の頃は、空腹という経験自体が殆ど無かった。
そもそも食事をした事自体少ない。
理由は食事からも魔力は得られるのだが、他にも効率の良い手段は幾らでもあるからだ。
なので国自体の食に対する意識が低く、人族の住む国程発展していなかった事もあり、味なんて追求する輩もいなかった。
なので男性に譲って貰ったパンは、市場で販売されている焼き立てでもない普通のパンだったのだが、美味しい食事をした事が無かったジルにとっては、とても満足のいく物だった。
「どや?少しは腹が膨れたか?」
男性は水の入った皮袋を渡しながら聞いてくる。
「ああ、礼を言うぞ。」
ジルは受け取って水で喉を潤す。
パンに水分を持っていかれていたので丁度良い。
「礼を言うんはこっちの方や。ほんまに助かったで。もうちょっとで死ぬとこやったわ。」
「気にするな、たまたま通りがかっただけだ。」
ジルとしても現在地や人里の情報等を知りたいといった下心で助けたので、それ程感謝されると少し気まずい。
「わいの悪運も未だ捨てたもんやないな。そや、名乗ってなかったな。わいはシュミット、行商人をしてるんや。」
「我はジルだ。」
シュミットの差し出した手を握ってジルも名乗る。
怪我をした馬を馬車から取り出したポーションで直していたのだが、あれも商人としての売り物だったのだろう。
アーマードベアの襲撃で幾つか駄目になった物もありそうだが、無事な物もあるので全てを損失した訳では無さそうだ。
「ジルさんか、名前も男前やな。ところでこんな森まで足を運ぶって事は、ジルさんは冒険者なんか?」
「こんな森?」
こんな森と言われても、転生してきたばかりなので何について言っているのか分からない。
「あら?知らへんの?ここは魔の森っちゅう場所で、魔物以外なんもおらへん場所なんや。」
どうやら少し危険な場所の近くに転生していた様だ。
と言ってもジルの実力からすれば全く問題無いのだが、普通の人族にとっては危険な場所には違いないだろう。
「そうだったか。我は旅の最中でこの辺りの地形に詳しくなくてな。人里を探してはいるんだが。」
「ほんまか!?ならわいの馬車に乗ってってえな!もちろん謝礼も払うし、街にも案内するで。それに強い護衛がいれば道中安心や。」
渡りに船と言わんばかりにシュミットがジルの手を握って頼んでくる。
初対面の自分を簡単に信じ過ぎではとジルは思ったが、自分にとっては都合が良い事なので文句は無い。
「冒険者でなくてもいいのか?」
「問題あらへんよ。ジルさんはわいの目利き的に盗賊とかでも無さそうやしな。」
商人と言うだけあって自分の人を見る目を信用しているのだろう。
まさか盗賊どころか魔王の転生体とは見抜けなかった様だ。
「なら乗せてもらおう。ところで魔物しかいない森で護衛も付けずに何をしていたのだ?」
魔物以外何もいない森に商人が護衛も付けずに一人で入るのは自殺行為である。
実際にジルが助けに入らなかったら、シュミットは殺されていただろう。
「あははは、魔の森に入るつもりは無かったんやで。ただ遠目に少し珍しい魔物が見えてな。多少ならわいも戦えるから、追いかけてたらアーマードベアに目を付けられてしもうたんや。」
どうやら珍しい魔物に目が眩んだ結果らしい。
本来ならば入らないのだが、金になる物は商人として見過ごせなかったのだろう。
「成る程な。アーマードベア程度であれば、幾らでも任せるといい。」
魔王時代は魔物の強さなんて気にした事は無かった。
等しく直ぐ死んでしまう印象だったので、アーマードベアが魔物の中でどれくらい強いのかは知らない。
それでも小石を投げた程度で呆気なく倒せるならば、今の自分なら大抵の魔物はなんとかなるだろうと思えた。
「ほんま心強いで。ほな早速行こか、アーマードベアはわいの馬車に乗らんから勿体無いけども。」
馬車と同じくらいの大きさがあるアーマードベアを乗せてしまえば、馬車が重さで潰れてしまう。
素材は売れるのだが諦めるつもりの様だ。
「ならば我が持とう。」
ジルは無限倉庫のスキルを使い、アーマードベアを異空間に収納する。
「なっ!?ジルさん、それって収納系スキルやないか?」
アーマードベアが突然消えて無くなったので、シュミットは驚いている。
「そうだな。何かに使えるなら待って行こうと思ってな。」
「なんて羨ましいんや。」
収納系スキルは商人にとって喉から手が出る程欲しい物だ。
馬車の他にも商品を持ち運べるとなれば、大きく稼ぎに影響してくる。
「道中欲しい物があったなら、我が収納して運んでもいいぞ。」
シュミットが羨ましそうに見てくるので、そう提案してやると大喜びで御者台に向かっていった。
これは街へ着くのが大分掛かるかもしれないと、少し提案した事に後悔するジルだった。
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