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幻影道 第三巻   作者: SAKI
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「紡がれる物語・サナエ編」

 翌日、昨日は流石に血を流し過ぎて頭痛やら吐き気があったけど何とか皆にもバレずにやって退けた、皆に心配されたくないし何よりカイトに勘付かれるのはとても抵抗がある。私はキャラクターを演じなければならない、だから今日もバレずに生きている。


 シェアハウスの食費はプレアのせいで大分減るのが早い、米に調味料、材料や菓子類、飲料ほかの物が全て早くて食費がバカにならない。いつもはカイトが来てくれるけど今日は喫茶店の仕事のせいで居てくれない、一人寂しくスーパーへ歩いてゆく。


「学校帰りに一人なんて物哀しいじゃない」


 何故か今日は誰かと居たい、そんな気持ちを抑えてスーパーへ歩むとそこに彼女が居た。


 茶髪のボブ、ルビー色をしたミニスカートが本当に似合う可愛い女の子が…


「ユカリちゃん?」


 私の呼び掛けに彼女が振り向くと微かに微笑んだ。


「あっ、奇遇だね!サナエちゃんもお買い物?」

 

 どうやらユカリちゃんは家の食材の買い出しに来たらしい、ユイの苦労を少しでも減らそうとやれることはやってるらしい。私もコクリと同意するとユカリちゃんは提案する。


「そっか、なら今日は安く済むかな?サナエちゃんお買い物上手だし!」


 あまり家計についてとやかく言う必要は無いけどユカリちゃんの家はそもそも節約とかしてるのかしら?


「別に私みたいに貧乏人がケチって安く買ってるだけだしユカリちゃんは好きな物買ったら?」


「うぅ…そうなんだけど……貯金したくて…」


 そう言うともじもじと手を合わせる、後ろめたい気持ちとかじゃないみたい。


「なんか欲しい物でもあるの?ユイに頼めば――― 」


「だ、駄目だよ!わ、私……実は家族の誕生日とか年中行事とかで皆で楽しくしたいからそこに貯金を充てたくて……皆でお揃いのガラスコップとか御守りとか……でも私服に浪費しちゃうかもしれないからって…それで……」


 赤面しながら健気なユカリちゃんは口をモゴモゴする。何この可愛くて健気な生き物、家族の事をそこまで考えてるなんて良い子過ぎる。


「分かったわ、アンタがそうしたいなら教えられる範囲で教えてあげる感謝なさい」


 そう告げるとユカリちゃんは有頂天で高らかに抱き付く、正直お持ち帰りしたいけどユイに怒られるから止めた、こうして私は初めて家族の役に立った。


 価値の無い私にでも可愛い妹の前では背伸びしたい。気高く振る舞い、時には冗談を混ぜたりして会話が出来た。ユカリちゃんは聞き上手なのか微笑んだり相槌を打ったりするだけじゃなく冗談に乗っかったり驚いたりと本当に優しくて捨てた親が憎らしく思えてきた。


 どうしてこんな女の子が病を患ったりしてしまったのだろうか、ユカリちゃんは何も悪くないのに。


 そんなことを考えながらも買い物を済ませると五体満足とユカリちゃんから感謝された、帰りまで付いてきてくれて心の底からお礼を言いたいけど恥ずかしくて、勇気が出せなくて言えなかった。


「今日はありがとう!サナエちゃんももし私に相談したいことがあったらいつでも聞いて!私は家族を信じてるから辛いことや悲しいことも全部受け止めるからね!」


 その一言が私の涙腺を攻撃した、言われたこともない優しさはカイトと同じだ。あいつも全部受け止めてくれる、だから初めて好意を抱いた。


 私の自傷行為も受け止めてくれるのだろうか?彼女は私を受け止めてくれるのか、喉から出したい言葉は喉仏まで来ていたが飲み込んでしまった。


「ふん、アンタに相談される程私はヤワじゃないわよ?」


 また言ってしまった、虚無の強がりは何も生まない、虚構な私の人物像は誰にも知られない。誰も私の心を開けてくれる人は沢山いるのに私は引き籠もって閉じてしまう、変われない私は嫌だ、変わらない私なんて大嫌いだ、だから……【切らない】と私が私でいる為に、私が自我を保つ為に自らの身体を傷付けて刻む、失敗したくないと。


 夕日が沈むとユカリちゃんと別れてた後またループする。


 いつまでも終わらないループを繰り返す、くるくると、紡がれる物語はまだ終わらないのだから。


 幻影道 第三巻 終

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