「不死身の女性」
翌日ユカリは光星の病院へと走り出す誰よりも早く息を荒らげながら愛する彼女の元へと走り出している。
数時間前〜
まだ夜が完全に明けてない時ふとユカリは起きた。ユイが帰って来ないと家族達から不安を煽られるような言葉がチャットで呟かれ居ても立っても居られなかった。そんな時アリアンロッドから一通のメールが届いた、その内容は昨日の出来事とユイが重体となって寝込んでいるとのこと。ユカリは身支度を整え学校よりも大好きな彼女のとこへと向かって行った。
現在、病院内を走り回ると道中からユイの話が聴こえた。少し立ち止まって耳を傾けるとそれは明るい話ではなかった。
「あのユイがね……誰か足引っ張ったのかしら?」
「かもね、あっ!もしかしてあの子じゃない?」
「地球からの女の子だっけ?確か……」
「サクラユカリ、あいつのせいじゃない?」
「確かに有り得るかもね〜魔力を持たない平民がまさかのあの騎士団にね〜」
「噂によるとお荷物で弱々しくて馬鹿って聞いたけど本当?」
「ホントホント!なんであんな使えない女の子を雇ったのかユイは分からないわね〜」
「くすくす♪止めなさいよ、ほら彼処の女の子。あれがサクラユカリよ」
「えー弱そ♪あれなら私でも倒せちゃうんじゃない?」
「あはは、弱そうだし身ぐるみ剥いじゃう?」
「ボコボコにしないように気をつけまーす♪」
するとロビーに入って受け付け付近から此方に向かって歩いて来る女の人が見えた、この人か。
恐らく憂さ晴らしか何かだろうが暴力を振るうのは戦士として恥じるべきだ、今まで日和見で生きてきたけど私はもう変わったんだいつまでも二重人格の仮面を付けている私じゃないんだ。
そうだよ、“殺してしまえば良いよ”
私は背後から聴こえる声に耳を傾け、拳を引こうとしたが誰かに覆い隠された。
「アンタ、邪魔よ」
ワインレッドの髪にお姫様のような顔立ちだが瞳は鋭く厳格な人柄、サナエちゃんだ。
「はぁ?サナエ・アポカリプスじゃない、そっか二人共幻影守衛騎士団だもんね」
サナエちゃんの傍若無人の態度に女性は苛立ちながら腕を組む。
「私の妹に何か?」
突然の妹宣言に血の気が引く、サナエちゃんも私を妹だと思ってるのだろうか?
「プッぷぷ!そんなモテなそうなお荷物が?あはは!」
彼女は吹き出して笑うとその仲間たちも笑った。サナエちゃんの表情は変わらず眉間に皺を寄せている。
「アンタもマシな子選んだら?魔力も無いのに戦士名乗るなんて阿呆らしくて笑っちゃうわ♪」
汚い笑い声が聴こえ目障りな音を奏でる。早く殴ってやりたい。
「用が無いならいいかしら?私達暇じゃないのよ」
どうでも良さそうに私の手を掴んで颯爽と立ち去ろうとすると女性達はいちゃもんを付けてきた。
「一発殴らせてよ、サンドバッグにはなるんじゃない?」
「薄汚いから妹から離れなさい、じゃないと私達の“姉”が殺しに来るわよ?」
脅し文句に怯まぬ相手にサナエは溜息を漏らす、背後に居るとも知らずにね。
その事を知らずに女性のリーダー格はユカリに鉄拳制裁を与えた、腹を殴り髪を引っ張り壁に激突させた。鼻血が流れユカリの苛立ちも気になるが背後から漂う殺意を感じ取れていないのが逆に怖かった。
病院内はパニック状態になっていた、こんな騒動が起きてる状態でまともに診察すら出来ておらず看護師達は困り果てていた。
ユカリの顔面に膝蹴りを与えると蹲って倒れてしまう、サナエはユカリを助けようにも別の女性に捕まり身動きが取れない、リーダー格の女性が腰にぶら下げている剣を引き抜き突き刺そうとしたその時
、その女性の頭が宙を舞った。




