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幻影道 第三巻   作者: SAKI
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「愛すべきクローバ」

「うふふ!!」


 スライムの猛攻は止まらずユイはガードも意味なく身体で受け続ける、オルカはご満悦にも玩具のように遊ぶ中ユイは虎視眈々と狙いを定めていた。


 奴の行動で最も隙が多く生まれる場所、それはスライムが私の背後まで伸ばして叩きつける時だ。あの攻撃が反撃の合図となる、必ず仕留めてこれまでの鬱憤と仕打ちと私を辱めた恨みを晴らす。


「水虫植物マラクスネペンテス!」


 攻撃を耐え凌ぐと奴は魔法で隙を塞いでしまった。研究員上層幹部達は皆魔法という名の人体錬成した【錬成魔石】を武器や装飾品に身に着けて魔力増幅装置込みの魔法を放つ。その威力は一級魔導士の非にならならい程の強力さを秘めている、それに彼等の魔石は持ち主の魔力が尽きない限り無限に唱え続けられるトンデモ能力だ、避けないと流石に不味い。


「ちっ」


 舌を打ちながらオルカの魔法を躱す、だが奴は何度も魔法を放つ、その度に躱し続けると当然私だけ徒労になり動きが鈍くなってしまう。その為その魔法が頬を掠めてしまった。


 肉が溶ける痛みと焦げるような臭いに耐えながら奴が魔法を使うならやり返す。


「Xフレイム!!」


 火龍のようにとぐろ巻く炎でオルカ本体ではなく下半身のスライム本体目掛けて放った炎は業火の如くその炎に身を包まれる。


「あぁァァァァァ!!」


 効果的面か彼女は悲鳴と共に巨体の身体は瓦解し攻め込むチャンスだと判断し間合いを詰め寄る。それが間違いだとは知らずに。


「なんてね☆飛沫!」


 転げ落ちた下半身から霧雨のような物が身体に掠めるように通り過ぎたその瞬間全身に針が刺さったような激しい痛みを感じる。どうやら先程の霧雨に原因があるようだ。


「・・・・・」


 霧雨の正体は飛散したスライムの破片のようだ、抜いて見ると赤い鮮血と共にガラスのような鋭い棘が身体中突き刺さっていた。


「あはは!あははははははははははははは!!」


 沢山血が流れてる!面白いなぁ…でも私のは面白くないなぁ……


「あらあらとても狂ってることで♪そんなに血が見たいなら…えい☆」


 突き刺さったスライムが私の体内から一気に抜け落ちる、まるで汗のように流れる血の臭いが私の脳味噌を溶かしていく。まるで媚薬、悪く言えば薬物の快感に晒されて高揚感に抱かれもう止まらない。


「アンタの血は何色なのかな?まさか赤色?ねぇねぇ〜腹の中にある血、私に見せてよ!!」


 もう止まらない、何もかも感じない、殺したくて鉄の味が舌の中で染み渡っている。


 脚を踏み込み、勢い任せに走る、攻撃が飛んで来ようが視界がスローのように遅く寸前で躱せてしまう。縦横無尽に研究室内を駆け巡り、その動きに焦りが生じて来たのか近付くに連れて猛攻が大きくなる。でもそれでも回避し剣を捨て、超至近距離の間合いに持ち込む。


「せいや!!!」


 下半身と直結している部位に手を突き刺し腹の中にある臓物を取り出してやった。ヌルヌルしてて活きのいい腸だ。内蔵も肝臓を引き抜きまるで箱の中にある物を手探りで探すかのようにドキドキしながら楽しい臓物を抉り全身に浴びるように血に浸かった。甘美な快楽に喘いでしまいそう。歪んだ顔が幸せで顔面目掛けて炎を放った。


「ユイ…私がどれだけ育ててやったと思ってるの!!」


 戯言が聴こえるけどどうでもいいか。


「アンタの身体は私が作ったのよ!それをアンタは!」


「だからといって胸を揉んだり薬物投入する鬼畜がいるのかしら?私は何千回薬物を投与されたと思ってるの?あはは♪」


 私が巨乳なのはこいつのせいなのかな?


「胸は天然よ♪ま、その身体は薬物まみれだけどね。だからもう一度アンタを…」


 五月蝿いから喉元を私の下着に隠してある杭で突き刺してやった。


「ひ、飛沫!」


 潰れた目で魔法放つもんだから距離を取ると簡単に避けられた。


「死んであの世で懺悔なさい」


 もっといたぶってやりたいが血が流れ過ぎた、骨は剥き出しだし煩わしいくらいの灼熱の痛みは流石に身体が堪えてしまう。だから一撃で屠ることにした。


「アンタ達が生み出せなかった唯一無二の属性の魔法の威力たっぷり味わせで逝かせてあげる」 


 全身の力を抜き、深呼吸する。心臓がバクバクと鳴り響くのを抑えて右腕に力を溜める。


 闇のオーラがユイを包み右腕が肥大化して悪魔のような黒腕を作り身体を低くする。


「サヨウナラ」


 獲物を捉えたユイは静かに言葉を放ち猛突進する。


「闇魔法極大魔法"星喰らい"!!」


 振りかざしたその腕はオルカを飲み込むように巨大化し隕石が激突したような爆裂音が研究所全体に轟くと同時に背後から大勢の足音にユイは気付くことは無かった。

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