「夢の中」
もう駄目、ユイが好きで堪らない、ユイが居ないと何処にも行きたくない。ユイ、ユイ。
名前を呼び続けていると誰かの声が聴こえる。何処から聴こえてるのかと空を見上げるとその声は確かに聴こえていた。その声は誰かの叫び声??一人じゃない。皆の声??
「サナエちゃん!!どうしちゃったの!?」
「サナエちゃん!!」
私はまるで夢でも見ていたような感覚で我に返って状況を確認する。ユイとは抱き合っていない、それどころか無理矢理止められている。一体何があったのと私ですら理解できない。ユイを抱こうとする手を止めて地面に腰を降ろした。
「な、なんだったの?」
「それはこっちのセリフよ……急にキスを求められるから本当にしちゃいそうになったもん」
「ゆいゆいは子どもなら誰でもいいの?」
「家族は特にね♪でも…………」
ユイは何かに気になることでもあるのか真剣な表情で考え込む。
「何か気がついたのかい?」
カイトは代弁して言葉を掛けるが首を横に振った。
「ううん、何でもない。単なる性欲が爆発したかもしれないし、お姉さんには分かりません♪」
ズゴッと全員ユイに期待していたが舌を出して謝るユイに肩を落とした。
「アンタに聞いて損したわ」
「ごめんね~♪」
のほほんとした雰囲気でユカリちゃん達は後々購入した物を伝える中私は疑問を抱いた。
ユイの目が笑っていなかった。まるで憎悪を抱いたような憎しみを瞳に宿していた。ユイは何かに勘づいているのだろうか?私はそれを聞こうとしたが場の雰囲気が許さなかった。
「よぉ~し!戻りますか!」
「「おお~!」」
ユイの掛け声に思わず声を出してしまった。結局私が何故ユイを襲ったのかは何も分からないでいた。
「サナエちゃん??」
疑問が解消出来ず解せない表情にカイトは声を掛けてくれた、心配しているのか不安な表情を浮かべている。
「いいえ、何でもないわ。お腹が空いてきたし今日は食べるわ!」
私は空元気に振る舞うと少し怪訝な表情を取られたがこれは私では解決出来そうにない。バーベキューを楽しみながらしれっとユイに聞く必要がありそうね。
サナエはユイに疑問を残したままスイカズラへ戻ることにした。帰ろうと一歩踏み込もうとしたその時ユイっぽい声が背後から聴こえた。
「疑問を忘れなさい」
目の前にいる筈のユイが何故か背後から聴こえたことに私は更に疑問を深めた。何か隠している、それだけは確信を持っていた。




