「屋烏之愛」
ユカリちゃんとユイちゃんは服を着替えてスイカズラを出た後サナエちゃんはあれ以降むすっとして会話に参加することは無かった、どうやらユイちゃんの態度が気に入らないみたいで眉間に皺を寄せてる。短気と言うか高飛車と言うか彼女は喜怒哀楽の中で怒の化身かと言うぐらい直ぐに怒る。それに対して優しくしたり宥めると拳が飛んで来るほど短気。
皆からも評判はイマイチで学校側の人間も良く思われていない、入学当初は苛めを受けていたのだがキレたサナエちゃんを相手にした女学生が逆らえなく成る程の暴力を振るい病院送りになった。学校側も彼女に対しての罰を施したが全く変化無くそれどころか苛めや傷跡を見せて学校側を黙らせる程の強者と化した。
それ以来彼女に逆らう人は消えて孤高の女王と君臨した彼女だったが本当は寂しくて僕に泣き付いたこともしばしばあったな。
そう思うと今のサナエちゃんは家族に恵まれてるのかな?
「よ~し!お姉さんとサナエちゃん、それにカイトちゃんにユカリちゃんが買い出しで他は調理班に決定~!」
話し合いの結果またユカリちゃんと一緒になれたことを幸運と感じつつサナエちゃんを擁護する側になってしまった。
「いいなぁ~ハーレム、両手に華……」
「君は女の子にしか興味無いのかい?」
「あったりめぇだろ!しかも巨乳が二人だぞ!?こっちなんか貧乳と根暗と無表情男だぞ!?見ろよこの格差!プレアはある意味―――ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
言葉を言い終わる前にプレアちゃんの手が首を掴み技を決める。
「誰が貧乳だ!!」
「ゴリゴリしてるからだろ!」
「なっ!?このクズがぁぁぁぁ!!」
プレアちゃんのフェイスロックが炸裂すると悲鳴を上げる、確かに痛そうだ。
「さ、僕達は買い出しに行こうか」
「おいちょっと待て!助けろよ!?」
「カイトさん早く行って下さい、この変態さんは私達で始末するので」
わなわなとノアちゃんも裁ち鋏をチョキチョキと音を鳴らす。何を絶ち切ろうとしてるのだろうか?
「え、えっと……それじゃあ行こうか!」
僕達はさっさとその場から立ち去ると背後から悲鳴が響き渡る。御愁傷様、女の子は大切にね。
こうして僕達は買い出しへと出掛けることになった。
☆★☆★
「ね~サナエちゃんいつまでも拗ねてるの?」
少しするとまだ拗ねてるサナエちゃんにユイちゃんは顔を覗かせる。
「ふん!」
相変わらず頑固だ、頑固で高飛車でナルシストの最悪な三拍子を揃えた性格をしているせいで他を寄せ付けないオーラを醸し出しているのに全く効いていないユイちゃんは流石だ。
「拗ねてるサナエちゃんも可愛いけど皆で楽しくしようよ♪お姉さんは皆の幸せが一番の報酬だからね♪」
「ふん」
それでも屈しないユイちゃんはついに頭に手を伸ばした。
「っ!?」
初めての頭を撫で撫でされると顔を真っ赤にして拳を飛ばすが普通に避けられてまた撫でる。抵抗するがやっぱり撫で撫でされる、しまいに頭に煙が登り恥ずかしくて倒れてしまいそうだ。
「や、やめい!!」
はらりと躱わしついには抱き締めた。ユイちゃんの包容力と母性には暴力なんざ無に等しい。
「も、もう~!!何なのよ~!!」
「皆のお姉さんです☆」
「聞いてないわ!!」
プンスカ怒ってもユイちゃんは動じない、二人の百合しい雰囲気を微笑ましく見つめるともう一人の女の子は羨ましそうにユイちゃんを見つめている。
「二人もおいで♪」
それに気付いたユイちゃんは僕達は視線を送ると彼女はぱあっと笑顔になって二人だけの空間を作った。愛情沢山二人は買い出しを忘れていつまでもイチャイチャとしていた。
「あの輪だけは入りたくないわ……」
「た、確かに……」
屋烏之愛、彼女達の輪に入ることなら弾き飛ばされるか飲み込まれてしまうだろう。僕とサナエちゃんは二人の雰囲気を壊さないよう距離を取ることにした。




