あきらめ
あきらめが
すこし大人びてきたころに
わたしのことは、なんとなく
あきらめてください。
胸の、いくらか
透きとおるような
愛情などは、いつの日か
ぬくもりのなかに
融けてしまって
二度とはもどらない。
ことばが爪を立てるとき
記憶はおびえてしかたない。
あきらめが
すこし大人びてきたのなら
わたしのことは、すんなりと
あきらめてください。
遠いひかりの平行線が
ただのかたちになるまえに
わたしのことを、いまよりも
憎んでしまうまえに。
愛は、憎しみに似るから。
わたしは、凡庸だから。
うつつとゆめのずれの渦巻き
風花のきらめき
すべてすべて、凡庸だから。
あきらめるために
愛さないでください。