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第9話 元魔王、スマホを持たされる

流石ホテルだ。寝心地は漫喫とは雲泥の差だった。ただ、朝食が別料金だったのがショックだった。これなら喫茶店のモーニングにすれば良かったかも知れないと反省をした。


昨日、勢いで契約した事務所には朝の公演が終わったら顔を出すように言われている。ハッキリ言って事務所の場所を覚えていない。たしか名刺を貰っていたはずだと探したら出て来たから電話をして11時に駅前に迎えに来てもらう事になった。


10時の公演の最後に今日の昼と夜はお休みしますと告げると残念そうな声が上がったが、こればかりはしょうがない。今日からは自由にできるようで出来ないのだから……契約は早まったかもと思ったが、寝る場所と食事が約束されているのだ。これには誰も勝てないはずだ。


いつもの様に地下街のトイレでお捻りを数えて戻って来ると専務が待ってくれていた。


「待たせて悪かった」

「いえ、早く来ただけですから。では参りましょう。社長が待っています」


昨日初めて自動車なる物に乗ったが、馬車よりは狭いが座席は良く、振動も無い。何より速い。

今回で2度目になるが素晴らしい乗り物だ。そんなことを考えていると専務が言った。


「今日から私が椿さんの専属マネージャーとしてスケジュールの管理や生活の管理をさせて頂きます」

「と言うと執事みたいな者か?」

「少し違います。椿さんはわが社の商品ですから、私の言う通りに動いてもらいます。少なくとも契約が切れる5年間はですが……」

「なに?俺が専務の命令を受ける側だと言うのか!」

「その通りです。それと、着きましたよ」


これも人間界の決まりなのか?? まさか魔人を使役するほど力を付けていたとは……

この千年誰も来なかったのはこういう事かだったのか…… まさか俺までも……

人間との契約は魔法より恐ろしく、迂闊だったと思い知らされた瞬間だった。


社長室に入ると昨日、社長だと言ってた女が居た。そう言えば名前を聞いただろうか??思い出せない。


「どうかしましたか?」

「あっ、あなたの名前が思い出せなくて……」


しまった。思わず口にしてしまった。


「私は川岸裕美(かわぎしひろみ)よ。この事務所の社長をしているの。そこに居るのは私の息子で川岸拓馬(かわぎしたくま)。専務を任せていて、今日からあなたのマネージャーよ」


そうか、この二人は親子だったのか……


「他にも居るのですか?」

「社員の事かしら? 居ないわよ。ついでに教えておくと、所属タレントも貴方だけ。先月逃げられちゃったのよね~」

「逃げられたのではありません。引き抜きに遭ったのです。東京の大手事務所に」

「あら、逃げたも同じじゃない」

「それより、椿さんのことです」

「それもそうね」


おいおい、ちょっと不安になって来たぞ……。大丈夫かここに居ても……


「既に何件かのオファーが入っています。早ければ3日後には仕事をしてもらいます。それまでに少しトークの勉強をしてもらいます。しばらくは駅前ライブは出来なくなると思ってください。それと、携帯を持っていないと聞きましたから、このスマホを使ってください。使い方は専務に聞いて下さい。私からの話は以上です。専務。後は頼みましたよ」


一方的なマシンガントークを聞かされた後、専務と一緒に部屋から出された。


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