第2話 元魔王、お金を稼ぐ
本日2話目です。1話をお読みでない方はそちらからご覧ください。
ランダムに書いた地名の中から爪楊枝が選んだ場所は名古屋だった。どうしてこの街が入っていたのか…… たまたま語順が揃ったという偶然が引き起こしたことなどさすがの元魔王マカロニア3世も知るはずが無い。ただ人間が魔界に干渉しなくなってから千年。人間界が大きく様変わりをしていて元魔王の知っている人間界で無いことは確かと言えた。
目の前にある大きな建物や馬が引かない車、魔法ですらなかなか出せない色とりどりの明かりと目に映る全ての物が初めて見る物ばかりでその進歩に驚きを隠せずキョロキョロと辺りを見渡しながらただ立ち尽くす。通称お上りさんと呼ばれる行動で、東京ではよく見られるが名古屋では滅多に見られないからそれだけで周りからの注目を集めていた。
我に返った元魔王は記憶の情報を急いで書き換える魔法、『変換』を発動した。
途端に激しい頭痛と眩暈に襲われたが、1分もしないうちにそれも収まった。
「なるほど……ここは電車の駅前と言う場所に居るのか……」
よく見ると駅舎の出入口の大きく名古屋駅と書いてあるのが読み取れた。
周りを歩く人たちの会話が聞こえて来ていたが、その内容も理解が出来る。上手く情報の書き換えが出来たようだ。
すると、先ほどまで判らなかった大きな建物はビルと言い、馬が引かない車は自動車という事もわかったし、色とりどりの明かりは信号機で車や人の行き来を調整する機械だと判明した。
正直に言おう。魔法が使えない人間界の文明が発達し、魔法に頼り切った魔界の文明は到底足元に及ばない。それだけ人間の知恵が魔法を凌駕してきたのだろう。これは魔人達も見習うべきだと魔界に引きこもっていた自分を反省したのだった。
さて、書き換えた情報の中に今の人間界ではお金が無いと何も出来ないとあった。魔界では物々交換が主流で常設の交換市が有ったがここでは一旦お金に換えてお金で物を貰う仕組みらしい。
という事は、今の俺は一文無しという事か……。となるとメシも食えない……。困った。
「さぁさぁ道行く皆様。お急ぎで無いなら今から始めるジャグリングを是非ともご覧あれ~」
声のした方を見ると一人の青年がこん棒の様な物を高く放り上げては掴み放り上げては掴みを繰り返していた。
「これは手始めですが、次はもっと高度な技をご覧入れます~~~」
急ぎ記憶の情報を開くとこれは大道芸と言って終演後もしくは途中に見物人から見物料を頂きながらお金を稼いでいる人だという事が理解できた。
それならと元魔王は魔法で曲芸をすれば見に来た人から見物料が貰えるかもと速攻で真似る事を決めた。ただ、あの青年の近くでは邪魔をしかねないといくばくかの距離を取り魔法による曲芸を始めたのは良いが、すぐに警官……(これも新たな情報で確認した)がやってきて止められた。どうやら道路占用許可証と言うのが必要だからと近くの交番に連れていかれ、厳重注意をされる羽目になってしまった。