08 魔法屋さん
本日、2話目の投稿となります。
前話少し修正しています。
まだご覧いただいていない方は、ご注意ください。
魔法屋さんは、メインストリートに二件並んでいました。
明るい雰囲気のお店と、怪しい雰囲気のお店です。
どちらがいいとかはないのですが、やっぱり怪しい雰囲気のお店には入りづらいですね。
なので、まず明るい雰囲気のお店に入ります。
「いらっしゃい」
入るとすぐに店員さんが声をかけてきました。
女性……かと思いましたが、男性? いえ、関係ないですね。とにかく本題を話してみましょう。
「こんなものを拾ったので、持ち主を探そうと思いまして。高価な魔道具だときいたのですが、こういうものを取り扱っていらっしゃいますか? お手入れもしてあげたいんですが」
すると、店員さんは、目を真ん丸にして、あらあらまぁまぁ、と言いました。
「すてきな魔道具ね。いいえ、うちでは扱ってないわ。お手入れも、隣のティフィーソばぁちゃんのお店の方がいいわね」
おおぅ。やっぱり、隣の怪しい雰囲気のお店がティフィーソさんのお店なんですね。そして、おばあさんなんですか、そうですか。
「入りづらい? 一緒に行ってあげようか?」
「お願いします……」
私は魔法屋のオネェさんと一緒に、怪しいお店に行くことにしました。
「ティフィーソばぁちゃん、いる~?」
怪しいお店の扉をくぐると、すぐにオネェさんは中に声をかけました。
すると、
「うるさいねぇ! 商談中だよ、フュカルノ」
という、ちょっぴり気むずかしそうな声がカウンターから聞こえました。ビクッとしちゃった。
そこには、黒っぽい服装の男性が立っています。これ、他のプレイヤーのひとですね。
邪魔してごめんなさいっ。
「あら、ごめんなさい。待ってるわね」
魔法屋のオネェさん……フュカルノさんは、悪びれもなく、手をヒラヒラさせて、そこに立ちました。
私は軽くお辞儀をしてから、辺りを見渡します。
乾いた植物と、薬品の臭い。あとは、革と本の臭いでしょうか。辺りに蔓延しています。
実際、たくさんの本と吊り下げられた植物と、よくわからないびん詰めがたくさんありますね。
魔女らしい雰囲気に、ドキドキします。
しばらく待っていると、カウンターで話していた男性が、こちらにお辞儀をして扉を出ていきました。
そして、ちょっと不機嫌な声が降ってきます。
「なんだい、フュカルノが来るなんて珍しい」
カウンターから出てきたのは、目付きの鋭い、背の小さなおばあちゃんでした。黒い服に、無造作に縛った銀髪。とっても魔女っぽいです。
私はお辞儀をして挨拶しました。
「はじめまして」
「ふふ、この子が珍しいものを持ってきたのよ」
フュカルノさんが背を押したので、私は埃を被った木箱を、ティフィーソおばあちゃんに渡します。
≪ティフィーソに 汚れたオルゴール を渡しました≫
「こりゃあ……」
ティフィーソおばあちゃんまで、目を見張りますか。相当高価なものなのかな、と思っていると、
「ずいぶん汚れているね」
と、顔を歪められました。そっちですか。なるほど。
「落とし物みたいなの。持ち主を探してるみたいなんだけど、その前にキレイにしてあげたいんですって」
「そりゃあ、殊勝なことだね」
おばあちゃんは、埃を吹き飛ばして、ゴホゴホと咳き込んでいました。ああ……ハンカチかティッシュがあれば、ちょっとは拭いてたんですけど。
「予算は?」
「よさん?」
そこで、やっと、ハッとしました。お店に頼むのに、無料な訳がなかった。
しかも、高価な魔道具ですから、お手入れだけでもだいぶんかかりますよね。
「すみません、持ち合わせが今はなくて。後払いでもいいですか?」
慌てて言うと、おばあちゃんは目を眇めて、いいだろう、と言いました。
「もしなければ、コイツを売りゃあいいしね」
「えっ、それは困ります!」
オルゴールは私のじゃないんですから、勝手に売られちゃ困ります!
「じゃあ、頑張って見合う金額を持ってくるんだね」
ふぇっふぇっふぇっと笑う、ティフィーソおばあちゃんのその言葉に合わせるように、アナウンスが流れました。
≪特殊クエスト『魔女への支払い』を開始します≫
クエスト化してる! しかも、魔女確定ですか!
そんなことを考えている間に、どんどん話は進んでいました。
「出来上がりは、三日後だね。ついでに、動くかどうかみてやろう。それまでに稼いでおいで」
そういって、ふたを開けると音楽が流れます。
「素敵。異国の曲ね」
「ふぅむ。マレビト製かもしれないねぇ。ならば、すぐ壊れるか、なかなか壊れないかの二択だね」
二択なんですか。と、いうか、気になる単語がありますね。
「マレビトっていうと……」
「数年前から、国のあちこちに現れた『この世界の人間ではない存在』のことさ……分かりにくいが、あんたもそうだろう?」
「えっ」
あ、やっぱりプレイヤーのことなんですね。
数年前、というのは、ゲーム中の時間と現実の時間との差のためでしょう。
確か、現実での一日が、ゲームの中では三日だったはずです。
あれ? っていうことは……
私は思わず、クエストを確認しました。
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「魔女への支払い」〔特殊〕
魔法屋の魔女、ティフィーソに、ゲーム時間三日(明日同時間帯)以内に40,000gz払い、手入れされたオルゴールを受取りましょう。
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よんまん。
ちなみに、今の全財産、3,000gzです。
明日は金曜日です。ああ、あと一日ズレていれば良かったのに。
ちょっと、必死に稼ぎましょう。
お読みいただき、ありがとうございました。
このお話のゲームでは、リアルの八時間で一日が過ぎます。
プレイヤーからは、『朝クール』『夕クール』『夜クール』と、それぞれの時間帯に通称がついています。(公式には123と数字がついています。)
魔女のクエストの『同時間帯』というのは、この『クール』が同じ『クール』であることで、例えば今、主人公は『夕クール』に入っているので、
「明日、金曜日の『夕クール』の終わりまでにクエスト条件を達成」が、クリア条件となります。
基本、『夕クール』にしか入れない主人公。
達成できるのか!?
誤字脱字その他、ご指摘いただければありがたいです。
▼誤字報告 機能がページの一番下に▼
ありますので、ぜひご活用くださいませ!