07 きれいな曲のオルゴール
ログインしました!
出たのは、アシャとおしゃべりしていた、喫茶店の入り口脇。
そういえば、喫茶店の中でログアウトしたんでした。そういうところでログアウトすると、外に移動させられるんでしょうか?
今日夕方のログインでは、昨日ログアウトした場所に入ったので、同じ場所に入るのかと思っていました。
「アシャ……いないなぁ」
辺りと喫茶店の中を探りますが、姿が見えません。
首をかしげていると、メールが入っていることに気がつきました。
『誘ってくれた人と、コンタクトがとれたので、話を聞きに行ってきます。いい人たちだから、会ってみる? 紹介するよ』
ふむ。ゲーム友達さんと、合流中のようです。
アシャが言うなら大丈夫だと思うけど……。
『今日のところは、クエストをしてみるよ。一人でできそうな簡単そうなのから片付ける♪』
自分でできるところは自分でしちゃいましょう!
手元には、ちゃんと教えてもらったオススメクエストがありますからね♪
そうと決まれば、さっそくギルドに向かいます。
……って……。
「あれ? ギルドって、どっちだろう?」
広場から、急いで離れて、あとはアシャに付いていったので、現在地がよくわかりません。
オススメしてもらったクエストは、だいたい冒険者ギルドから始まります。
薬屋さんもありますが、そもそも薬屋さんがわかれば、冒険者ギルドもわかります。
「困った……」
喫茶店の前で立ちすくみますが、やっぱりわかりません。
仕方がないので、どちらがいいか指差して選んでいると、ふと、細い路地が気になりました。
喫茶店の真向かいの、人が一人通ることができるか、という路地です。
私は好奇心に駆られて、そこに飛び込みました。
せまい路地を、もうすぐ通り抜けられるな、と思った頃、足になにかが当たりました。
見てみると、それは埃を被った木箱です。
丁度手で抱えられるほどの大きさで、埃の下には、なにやら模様が描かれているのがわかります。
「なんだろ」
持ち上げようとして、手が滑りました。
「あっ」
かたん、と言って転がった箱は、弾みで蓋が開いてしまいました。パカンと上に開くタイプの箱からは、きれいな音楽が流れてきました。
「わぁ……」
箱の中はからっぽで、ただ曲だけが流れてきます。きれいでかわいい、踊りたくなるような曲。ショパンの曲だったかな。
「……これ、オルゴールだ」
箱の蓋のところも埃を弾いてみれば、ただ模様を描くのではなく、キラキラと光る鉱石でもって、模様が形作られているのだということがわかります。
「素敵。持っていっていいのかな?」
すると、アナウンスが流れました。
≪汚れたオルゴール を手にいれました≫
≪特殊クエスト『なくなったオルゴール』を開始します≫
特殊クエスト?
いえ、それよりも気になることがあります。
「なくなった? もしかして、これ、誰かの落とし物?」
だとしたら大変です。
もしかして、とステータスを開きます。
確かそこに、受けたクエストのリストが出て、詳細を確認できると、チュートリアルに教えてもらった……ので。
「あ」
ステータス画面から、クエストのタグを探していたら、『マップ表示』というものを見つけてしまいました。
忘れてました。あったんですよね、マップ。
何で切っちゃったんでしょう。覚えてません。恥ずかしい。
別枠で常に表示するように設定すると、クエスト欄に移ります。
――――――――――――――――
「なくなったオルゴール」〔特殊〕
汚れたオルゴールを拾った。誰かの落とし物らしい。探して届けてあげよう。
――――――――――――――――
「……これだけ?」
クエストに書かれた詳細には、予測以上のことは書かれていませんでした。
つまり、「ノーヒントで探せ!」です。困りました。
「んー……でも、気になるなぁ」
探さない、という選択はありませんでした。
とりあえず、現在地といっしょに、ある場所を探します。
「木製品だから……木工屋さんとか、あるかな?」
埃を被ったまま、地面にしばらく落ちていたのですから、まずはお手入れをしてあげたいけれど、繊細な鉱石を使っているかもしれないので、素人が扱っていいのかわかりません。
まずは、専門家を探します。
すると、けっこう近くに木材屋さんがあることがわかりました。
そこなら、製品を作るところも知っているはず!
私はマップを見ながら、オルゴールを抱え直しました。
すぐに、いろんな種類の木材が積んである場所が見えてきました。町の外れの木材屋さんです。
ちょうど、木材をリアカーのようなものに乗せようとしている人を見つけて、話しかけます。
「あのっ、……こんにちは」
筋骨隆々とした男性に、戦きながら声をかけると、その向こうから二人の男性が立ち上がるのが見えて、足が止まりました。
「おう、どうしたぃ、お嬢ちゃん」
「見ねぇ子だな?」
猫耳ゴスロリですからね。めったにいないと思います。
気さくな雰囲気に、ホッとしたので、さっそく本題にいきましょう。
「近くでこれを拾ったのですが、持ち主を探そうと思いまして。こういうものを取り扱っているお店とかはありますか?」
すると、一番若手の人と、一番壮年の人が近寄ってきて、オルゴールを覗き込みました。
「木箱か? こりゃ高そうな装飾だな」
「ただの木箱じゃねぇな。お嬢ちゃん、こりゃたぶん魔道具だ」
「魔道具?」
って、なんでしょう?
「魔法の力を込めた、特別な道具だ。確かに、探しているだろうな。うーん……ティフィーソなら、扱っているだろう」
「ティフィーソさん?」
変わった名前? ですね。すると、壮年の人が追加で教えてくれました。
「魔法屋だ」
魔法屋さん。確か、冒険者ギルドの近くにありましたね。魔法を使うなら、ここに、と案内してもらいましたっけ。
「行ってみます! ありがとうございました」
頭を下げて、きびすを返すと、彼らは手を振ってくれました。
高価な魔道具。いい情報をもらえました。
絶対に届けてあげなければ。
マップとにらめっこをしながら、メインストリートに走り出します。
お読みいただき、ありがとうございました。
今日からクエストが始まります。
これからの月詠とって重要なアイテムが手に入りますので、お楽しみに♪
ちなみに、オルゴールの曲名は『華麗なる大円舞曲』。
(8/18/2019 16時56分)
拾ったアイテム名を『汚れたオルゴール』に変更。