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25 牛乳屋さん

お久しぶりです〜


 4人でパーティーを組むことになりました。


 モトさんは前衛防御型、ミデラちゃんが魔法型。アシャが前衛攻撃型なのでバランスは良さそうです。


 私はアシャに、『補助型』と紹介されました。詳しいステータスは内緒。特に称号は隠すことに。


 そういえば、ロップイヤーさんにも称号は隠しました。チュアルくんからブロックされて……。

 あれ? むしろ、アシャには教えて大丈夫だったのかな? 今になって心配になってきました。契約書も何も交わしてないし……



 ……こっそり、運営さんにメッセージを送りました。私にとってアシャは親友で、信用できる人だという文もつけて。


 すぐに『入手方法を教えていないなら大丈夫』『情報屋には不特定多数に広がる恐れがあり、ある程度のブロックが必要だった』という説明が帰ってきました。運営さん返信対応早すぎませんか。



 そんなやりとりをこそこそしている間に、街中で受けられるパーティークエストの場所に着いていました。


「戦闘以外のパーティークエスト久しぶりなのだ~!」

「いや、このゲームじゃ初めてだろ」


 ミデラさんとモトさんが軽く応酬する中、クエストの内容を聞きます。


「んと……『朝の配達』クエスト?」


「そそ。この牛乳屋から指定場所に向かってできるだけ早く配るっていうクエスト。街のあちこちになるから、二人以上のパーティーになってないと移動速度がかなり高くなきゃ断られる」


 パーティークエストはリーダーの手続きだけで受領できるそう。報告もリーダーだけ。

 今回のリーダーはアシャがします。


「報酬がAGIアップだから、何回もやると移動速度も上がるんだけど。でも一人でできるレベルにまで上がってたら美味しくなくなる。だから低レベルのパーティーで受けるのが推奨なんだ」


「回数制限あるのか?」


「一日一回か二回が限度だけど、翌日朝にはまた受けられる。私としてはガンガン受けたいな。モトには美味しくないだろうけど」


「ハハ。できるだけ近くの場所もらうぞ」


「今AGIはモトと月詠変わらないんだよね……んーじゃ、近い方が3ヶ所対応で」


「うっ、がんばるわ……」


 モトさんが近いところを確保しようとして失敗していました。モトさんとはかなりレベルが離れているはずだけど、AGIが上がりにくい職業みたい。


「配達は、こことここと……全部で10ヶ所。西側の一番遠いとこ2ヶ所は私がやるから、南の3ヶ所ミデラよろしく」


「ラジャなのだ♪」


 ミデラちゃんが軽い感じの敬礼をします。かわいい。


「一番近いこの3ヶ所がモトだから……こことここを月詠よろしくね」


「ん! わかった!」


 クエスト開始手続きをアシャに任せて、牛乳屋さんのお兄さんから預かった牛乳ビンを分けます。

 一件につき二本ずつ。割らないようにインベントリに収納して走り出しました。


「うししー。今日こそアシャさまに勝つのだ~!」


「ぐ。レベル差で今はAGI負けてるんだった……なら!」


 すごい勢いで飛び出していく二人の後ろ姿に、モトさんが声をかけました。


「お前ら牛乳ビン割るんじゃねーぞ!」




 結局、アシャとミデラさんは僅差でゴールしたらしいです。

 一番最後になった私が帰ってきた時には、息を切らせて倒れ込む巨体と、ぴょんぴょんと髪を揺らしてはしゃぐ、くるくるヘアの少女。そして「魔法職に負けた……」と落ち込むエルフというカオスな状況になっていました。


 タイムとしては早い方だったらしく、多めの報酬がもらえ、時間的にはもう一度出来そうだったので、モトさんと場所を交代してもう一度やりました。


「そう言えば、ゲームなのに息が切れるんですか?」


「映像酔いな。重戦士が走ると画面の揺れが激しくなるんだわ」


「うわぁ」


 リベンジ達成で腕を振り上げるエルフの隣で聞けば、落ち着いたばかりのモトさんが答えてくれました。


「重戦士好きだからいつも選ぶんだけど、今回は失敗だったなー」


「映像酔いしやすいんですか?」


「ああ。車酔いとか船酔いはしたことないのにさ。バグじゃねーかとまだ疑ってるよ」


「バグじゃないんですね?」


「重戦士の仕様なんだそうだ。戦闘中みたいな短距離では発生しにくいから、移動中だけのものだな」


「……そんな仕様があったんだ、知らなかった」


 アシャが茫然と言ってます。


「Wikiには書いてないんだよ。まぁ、全職業こっそりそういう鬼畜仕様があるらしいぞ」


「そうと知ってたら、このクエストにしなかったのに」


「ハハハ。楽しかったし、いいさ」


 大業に笑うモトさんに、アシャはすまなそうにしています。

 そこに、ミデラちゃんが爆弾投下しました。


「魔法職には、MP枯渇を繰り返すと画面がぐるぐる回り出す仕様があるのだー」


「ちょ、死活問題じゃん!」


「枯渇しないようにMP管理すれば大丈夫なのだ♪」


 けらけらと笑うミデラちゃんは、なんの問題も感じていなさそう。ミデラちゃんは映像酔いしないのかな。


「剣士は検証中で見つかってないらしい。あんまり致命的なものではなさそうだな」


「見つかってない、って逆に怖いな。月詠は……ああ」


 ……ぬいぐるみますたぁは、ぬいぐるみの仕様が明らかにそうですよね。いいもん。可愛いから。そもそも種族特性が鬼畜だから問題ない。


 牛乳配達は、その後しばらくで受付時間が終わってしまったので、また機会があれば、ということになりました。

 結構楽しかったけど、モトさんが苦しそうだしもういいかな。


「次はなにする予定だったんだ?」


「んー……どうする? 月詠」


 どうする? と言われても。なにするか予定決めてたかな?

 首を傾げていると、アシャに耳打ちされます。


「彼らと戦闘、行ってみる?」


 !!


 初対面とはいえ、アシャとは面識があり付き合いも長い二人。彼らにあの檻を見せるのか。

 行きずりの野良パーティさんとは信用度が違います。でも、見せていいものか……。


 私は、モトさんとミデラちゃんをじっと見ます。モトさんは自然体で、ミデラちゃんはキラキラした目でこちらを見返しました。


 今、パーティクエストをやってみて、すごくすごく楽しかった。

 この二人なら、いいんじゃないかな。

お読みいただきありがとうございました!


不定期更新続きますが、引き続きご愛顧いただけると嬉しいです。

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