23 朝焼け空の下で
他の調べものをするために、一度トップページに戻ります。
すると、見過ごしていた『お知らせ』の項目に、昨日の日付と、『限定キャラクターの出現を確認しました。』の文字がありました。
急いでクリックすると、詳細ページに飛びます。
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〔限定キャラクター〕
特殊な方法でキャラクターメイクをすると、稀に出現する、運営のお遊びキャラクター。
(以下は同運営の別ゲームを参考。だいたい同等と思われる)
ピーキーな強さを手に入れるタイプ、見た目が非常に特殊になるタイプ、特殊なクエストが付随したタイプなど、様々。
キャラクター自体が強力なタイプではなく、工夫次第で強くなるのは、他のキャラクターと変わらない。
逆に、タイプがうまく合わず、『公式縛りキャラ』『呪われキャラ』と呼ばれることさえあるが、運営曰く、「ハマればスゴい」キャラクターばかりだという。
つまり、種族や見た目、スキルが激レアなだけの普通のキャラクターなので、けして嫉妬や恐喝の相手にするべきではない。暖かく見守ろう。
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「……」
『公式縛りキャラ』『呪われキャラ』。
嫉妬や恐喝の相手。
でも、激レアなだけの普通のキャラクター。
限定キャラクターって、実は『ものすっごい珍しい!』以上のものではない、という衝撃の事実を知ってしまいました……。
それを思えば、『月詠』は、大当たりだったのかもしれません。
見た目は、特別可愛いし、レベルが上がりにくいけど可愛いし、武器も装備も付けられないけれど、可愛いし、戦闘になれば、檻とぬいぐるみに完全に守られて、動く必要が全くありません。らくちん。そして、可愛い。
……。
ああ、ルーニャの毛並みは落ち着きます。
しばらく、これを堪能しましょう。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*
ログインしました。
午後3時45分。ゲームの中は、夜明け前の爽やかな空気が漂い、空は薄く青を纏い出したところです。
「うわぁ……」
橙が生まれるには少し早いでしょうか?
ただただ、静謐の中を、ゆっくりと、外灯が消えていくのを見守ります。
「やほ、月詠。さっきぶり……どした?」
15、6分ほどしてからでしょうか。アシャがログインしてきました。
待ち合わせは、4時前。朝焼けが見られるといいね、と言って別れましたが、ちょうどいいタイミングでしたね。
「やほ、アシャ。空がね、キレイで見とれていたの」
私は空から目を離さないまま、アシャに挨拶をしました。
今は、藍色の空に、薄むらさきがかかりはじめた所です。
「ホントだ。キレイだね。私の好きな色だ」
声の角度から、アシャも見上げたようでした。
自分の口角が、上がるのがわかります。
すると、後ろからこんな声がかかりました。
「ダメだなぁ、ニィちゃん。そこは「君の方が綺麗だよ」って言わなきゃ」
後ろを見れば、10人ほどのプレイヤーたちが、同じように空を見上げて立ち止まっています。
そのうちの一人である男性が、ニヤニヤしながら、こちらと空とを、見比べていました。その、向こうから、お前ベタすぎるわ、という笑い混じりのツッコミが入っています。
私は、アシャと顔を見合わせると、大笑いしました。
「私より、アシャの方が綺麗です」
「月詠は、綺麗ってより、可愛いよね」
笑いあっていると、その男性が半目で、ハゼロ、と言い、仲間の人たちに爆笑されていました。
広場の一角が、笑いに包まれる中、空の赤みが増して行き、やがて、東の方向にある家の屋根から、真っ白な光が差し込みます。
自然に辺りは静まり、それからしばらく、私たちはそのまま、佇みました。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*
そのまま、10分ほどした頃でしょうか。
なぁ、と尋ねられます。
「あんたは、高レベルっぽいけど、ニィちゃんも同じぐらいなのか?」
私は、首をかしげました。
「私はまだレベル2です」
それを聞いて、アシャがこっそり聞いてきました。
「あれ? 月詠レベル上がってたよね?」
「へ?」
ステータス画面をこっそり開けると、『[レベル] 5』の文字が、見えます。
「うわぁ! レベルが5になってる! あんなに上がらなかったのに!」
「ああ……うん。ちなみに私は9です」
飛び上がって喜んでいると、アシャがそんなことを男性に伝えました。
男性は、きょとんとした顔をして、こちらを指差しました。
「ええ? 俺たちと変わらないのか」
男性のパーティーメンバーらしき人たちも口々に言います。
「課金アバターってことかな? まぁ、そういうのもアリだよな」
「俺たち、最近始めたばっかりなんだよ」
三人で楽しそうに頷いています。
「私たちもです! この子に誘われて」
「リア友なんです」
じゃあ似たようなもんだなー、と、話が盛り上がりました。
すると、自然にこう誘いがかかります。
「良ければ、一緒に狩に行かないか? 5人のフルパーティーの経験もしてみたいし」
「いいですね! 行きましょう!」
私は反射的にそう答えました。
後ろから、アシャが、ちょっと! と腕を引きました。
「あ、ごめん。勝手に決めちゃって……」
パーティーメンバーに相談なしはダメですね。親しき仲にも礼儀アリです。
「そうじゃなくて……」
「アシャ、初対面の人とは、組むの苦手なんだっけ……?」
忘れていましたが、アシャは、初対面の人が苦手です。表面的にコミュニケーションは取れますが、チームを組んだりするのは、ちょっと拒否反応があるのだとか。
クラスメイトでも、あまり話さない人とは、微妙に距離がありましたし……。
私が間に入れば、全く自然なのですが。
さて、どうしましょう?
「ちがう。『檻』どうするの?」
「あ」
アシャは、頭を抱えました。
あわわ……自分のことを忘れていました。
どうしましょう……?
お読みいただき、ありがとうございました。
すみません、しんみりしていますが、
多忙につき次回投稿日を未定とさせていただきます。
申し訳ありませんが、しばらくお待ちくださいませ。
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