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23 朝焼け空の下で

 他の調べものをするために、一度トップページに戻ります。

 すると、見過ごしていた『お知らせ』の項目に、昨日の日付と、『限定キャラクターの出現を確認しました。』の文字がありました。

 急いでクリックすると、詳細ページに飛びます。



 ― * ― * ― * ― 

〔限定キャラクター〕

 特殊な方法でキャラクターメイクをすると、稀に出現する、運営のお遊びキャラクター。

(以下は同運営の別ゲームを参考。だいたい同等と思われる)


 ピーキーな強さを手に入れるタイプ、見た目が非常に特殊になるタイプ、特殊なクエストが付随したタイプなど、様々。

 キャラクター自体が強力なタイプではなく、工夫次第で強くなるのは、他のキャラクターと変わらない。

 逆に、タイプがうまく合わず、『公式縛りキャラ』『呪われキャラ』と呼ばれることさえあるが、運営曰く、「ハマればスゴい」キャラクターばかりだという。

 つまり、種族や見た目、スキルが激レアなだけの普通のキャラクターなので、けして嫉妬や恐喝の相手にするべきではない。暖かく見守ろう。


 ― * ― * ― * ― 



「……」


『公式縛りキャラ』『呪われキャラ』。

 嫉妬や恐喝の相手。

 でも、激レアなだけの普通のキャラクター。


 限定キャラクターって、実は『ものすっごい珍しい!』以上のものではない、という衝撃の事実を知ってしまいました……。



 それを思えば、『月詠』は、大当たりだったのかもしれません。


 見た目は、特別可愛いし、レベルが上がりにくいけど可愛いし、武器も装備も付けられないけれど、可愛いし、戦闘になれば、檻とぬいぐるみに完全に守られて、動く必要が全くありません。らくちん。そして、可愛い。



 ……。


 ああ、ルーニャの毛並みは落ち着きます。

 しばらく、これを堪能しましょう。




 ○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*



 ログインしました。


 午後3時45分。ゲームの中は、夜明け前の爽やかな空気が漂い、空は薄く青を纏い出したところです。


「うわぁ……」


 橙が生まれるには少し早いでしょうか?

 ただただ、静謐(せいひつ)の中を、ゆっくりと、外灯が消えていくのを見守ります。


「やほ、月詠。さっきぶり……どした?」


 15、6分ほどしてからでしょうか。アシャがログインしてきました。

 待ち合わせは、4時前。朝焼けが見られるといいね、と言って別れましたが、ちょうどいいタイミングでしたね。


「やほ、アシャ。空がね、キレイで見とれていたの」


 私は空から目を離さないまま、アシャに挨拶をしました。

 今は、藍色の空に、薄むらさきがかかりはじめた所です。


「ホントだ。キレイだね。私の好きな色だ」


 声の角度から、アシャも見上げたようでした。

 自分の口角が、上がるのがわかります。


 すると、後ろからこんな声がかかりました。


「ダメだなぁ、ニィちゃん。そこは「君の方が綺麗だよ」って言わなきゃ」


 後ろを見れば、10人ほどのプレイヤーたちが、同じように空を見上げて立ち止まっています。

 そのうちの一人である男性が、ニヤニヤしながら、こちらと空とを、見比べていました。その、向こうから、お前ベタすぎるわ、という笑い混じりのツッコミが入っています。


 私は、アシャと顔を見合わせると、大笑いしました。


「私より、アシャの方が綺麗です」

「月詠は、綺麗ってより、可愛いよね」


 笑いあっていると、その男性が半目で、ハゼロ、と言い、仲間の人たちに爆笑されていました。


 広場の一角が、笑いに包まれる中、空の赤みが増して行き、やがて、東の方向にある家の屋根から、真っ白な光が差し込みます。


 自然に辺りは静まり、それからしばらく、私たちはそのまま、佇みました。




 ○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*




 そのまま、10分ほどした頃でしょうか。

 なぁ、と尋ねられます。


「あんたは、高レベルっぽいけど、ニィちゃんも同じぐらいなのか?」


 私は、首をかしげました。


「私はまだレベル2です」


 それを聞いて、アシャがこっそり聞いてきました。


「あれ? 月詠レベル上がってたよね?」

「へ?」


 ステータス画面をこっそり開けると、『[レベル] 5』の文字が、見えます。


「うわぁ! レベルが5になってる! あんなに上がらなかったのに!」


「ああ……うん。ちなみに私は9です」


 飛び上がって喜んでいると、アシャがそんなことを男性に伝えました。

 男性は、きょとんとした顔をして、こちらを指差しました。


「ええ? 俺たちと変わらないのか」


 男性のパーティーメンバーらしき人たちも口々に言います。


「課金アバターってことかな? まぁ、そういうのもアリだよな」

「俺たち、最近始めたばっかりなんだよ」


 三人で楽しそうに頷いています。


「私たちもです! この子に誘われて」

「リア友なんです」


 じゃあ似たようなもんだなー、と、話が盛り上がりました。

 すると、自然にこう誘いがかかります。


「良ければ、一緒に狩に行かないか? 5人のフルパーティーの経験もしてみたいし」


「いいですね! 行きましょう!」


 私は反射的にそう答えました。

 後ろから、アシャが、ちょっと! と腕を引きました。


「あ、ごめん。勝手に決めちゃって……」


 パーティーメンバーに相談なしはダメですね。親しき仲にも礼儀アリです。


「そうじゃなくて……」


「アシャ、初対面の人とは、組むの苦手なんだっけ……?」


 忘れていましたが、アシャは、初対面の人が苦手です。表面的にコミュニケーションは取れますが、チームを組んだりするのは、ちょっと拒否反応があるのだとか。

 クラスメイトでも、あまり話さない人とは、微妙に距離がありましたし……。


 私が間に入れば、全く自然なのですが。


 さて、どうしましょう?



「ちがう。『檻』どうするの?」


「あ」



 アシャは、頭を抱えました。

 あわわ……自分のことを忘れていました。


 どうしましょう……?

お読みいただき、ありがとうございました。


すみません、しんみりしていますが、

多忙につき次回投稿日を未定とさせていただきます。

申し訳ありませんが、しばらくお待ちくださいませ。



誤字脱字その他、ご指摘いただければありがたいです。


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ぜひご活用くださいませ。

 

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