20 ちょこっとだけ、最前線情報
≪
グラスウルフの皮 ×3 を獲得しました。
グラスウルフの牙 ×4 を獲得しました。
グラスウルフの魔石 ×2 を獲得しました。
≫
檻が消えると、私から4、5mは離れていたラビは、すぐに手元に戻ってきました。
ごく普通の、ぬいぐるみとして。
「ありがとう、ラビ」
私は、ラビの額に自分の額をくっつけて、お礼を言いました。
そして、『ぬいぐるみヒール』をかけていると、嬉しそうなアシャが近寄ってきました。
「ありがとう、月詠。助かった」
「ううん。アシャが無事で良かった」
首を振ると、ニコリと笑まれます。尊い。
そして、私の腕の中のラビを撫でると、また、ありがとうと言いました。
私、でなく、ラビに対してのありがとうです。
「ラビは強いね。さすが首狩兎だ」
「私もびっくりしちゃった。あんなに強いなんて」
ホーンラビットを見れば、充分戦闘もできるのだとわかりましたが、それでもこのぷよぷよの角で突撃できるとは思えません。
まさかの蹴撃とは、意外でした。
「首狩兎は、ホーンラビットの最終進化形と言われているらしいよ。最前線のエリアにいるモンスターだって」
「え」
Wikiに載ってたよ、と言われましたが、見ようとしたら止められました。アクティブモンスターのいる、フィールドで見るのは危ないから、とのこと。
まぁ、後で見ましょう。
「そんなに強いモンスターなんだ……」
「召喚獣にはいなくもないけど、従魔にした人は一人しかいないんだって」
ひぃ。そんなの初期に召喚できるようになっちゃダメなんじゃ。ぬいぐるみだけど。
青くなっていると、クスクス笑いながら、アシャが恐ろしい追加情報を出してきました。
「まぁ、『白虎』ほどじゃないけど。そいつ未討伐のフィールドボスなんだって」
「フィールド……ボス?」
えっ、ホワイトタイガーって、ボスなんですか?
「えっ、いやいや。ボスが召喚されてるとか、ダメでしょ」
そう言うと、前に進みながらもアシャは首を横に振りました。
「いや、エリアボスを召喚獣にしてる人とか、従魔を進化させていったらフィールドボスになったとか言う人は、けっこういるみたい」
「えっ、そうなの……?」
ボス、普通に召喚できるものなの……?
育てたらなっちゃった、とかは、わからなくもないですが。すごくがんばったんでしょうね。
「わりと、このゲームのランカーさん、無茶苦茶だよ。なんでも切れる剣とか、当たるまでどこまでも追いかけてくる魔法とか、普通だし。空だって飛ぶし、瞬間移動合戦とかもあるし」
「なにそれ」
もしかして、このゲームって、なんでもアリなんでしょうか。そういえば、いつだったか『自由度、半端ない』が裏コンセプトだと、教えてもらったような。自由すぎます。大丈夫なんでしょうか?
「どうやってゲームバランス取ってるんだろうね?」
そう言って先を行くアシャに、同意の相づちを打たざるをえません。
それからしばらく、二人で狩りをしました。
経験値は戦闘に参加しなくても、パーティーで等分されているようですが、モンスタードロップは、攻撃しなければ手に入らないようです。
「ダメージ比率でドロップ量が変わるみたいだけど、代わりにパーティー人数が増えるほど、ドロップする総量は増えるみたい。今だってホラ。合わせると、今倒した頭数より多いでしょ?」
今倒したグラスウルフは、5匹。
ドロップはあわせて皮が8、牙が11、魔石が6です。
「5より大きな数ばっかり」
「牙は二本あるはずだから、10のはずだけど。どっちにしても多いか」
パーティー上限は6。
人数が増えた方が、ドロップ総数が増えるので、同じモンスターから出る、別の素材が欲しい同士でフルパーティを組んで、狩りをするのが定番らしいです。
そうして、あとで交換するそう。
「ギルドでよくパーティー募集してるよ」
「そっか……」
アシャはパーティーを組みたいのでしょうか。
まぁ、他のゲーム友達もいますし、組みたいんでしょうね。
けれど、私は……。
「私は、しばらくはアシャと二人で、ゆっくり遊びたいな」
「ふふ、そうだね。ゆっくり……じっくり、のんびり行こうって言ったもんね」
私の意見に、アシャは同意してくれました。
ちょっぴり申し訳ない気分と、わかってもらえた暖かさとが混ざりあいます。
うん。ゆっくり、この世界を見ていこう。
アシャの後ろ姿に、微笑みました。
と、
その時です。
「つく……っ」
焦ったようなアシャの呼び声を最後に、私の目の前が、真っ暗になりました。
「え……何?」
何事かわからず、動こうとしたとき、目の前にウィンドウが開きました。
≪
戦闘不能になりました。
最終登録地点に移動します。
初ログインから5日経っていないため、デスペナルティはありません。
初ログインから5日以上かつ、レベルが10に到達すると、デスペナルティとして所持金の一部喪失、一定時間のステータス低下が課されます。
注意してください。
≫
〔………て………ぁ……〕
気がつくと、私は最初にこの世界にやって来た時に着いた、広場に一人、立っていました。
お読みいただき、ありがとうございました。
事件、発生!
何が起こったのかは、次回です。
また二日後になりますです。よろしくお願いします。
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