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12 たずねれば、モフモフ。

 コンコンコン。


 扉を叩いて、しばらく待ちます。


 出てこない、留守かな? と、思い始めた頃、ゆっくりと内側から扉が開き……


「こんな辺鄙なところに、同族が何用だ?」


 40代半ばの、耳のとがった美形さんが出てきました。

 情報通りなら、縫製師さんのはずです。


 しかし、私はその後ろに広がる光景に、思わず声を上げてしまいました。


「うわぁ~! ぬいぐるみがいっぱい!」


 アシャの後ろからこっそり覗いていた、私は、乗り込もうとして止められました。


「こら、月詠。ダメだよ、勝手に人の家に」

「だってあんなにたくさんのぬいぐるみ! 近くで見たい」


 壁の一面に、たくさんのぬいぐるみが並べられています。

 あんなのめったに出会えません。近くで見たい! 頬を膨らませて抗議しますが、アシャはため息をついて、縫製師さんに謝ります。


「連れが申し訳ありません。ぬいぐるみには目がないヤツで」

「目はあるよ?」

「ちょっと黙ってて」


 ツッこんだら怒られました。何故。


 そうしていると、突然エルフ縫製師さんが笑いだしました。

 キョトンとして首をかしげていると、エルフ縫製師さんは弛く首を振って、いや、と言います。


「入るかね? 手にとっても構わんよ」

「本当ですか!?」


 大喜びで中に入り、ぬいぐるみたちの前に立ち止まり、眺めます。喉から声が漏れてるようですが、抑えられるわけがありません。


 あっちもモフモフ。こっちもモフモフ。


 ケモミミのモフモフとは全く別種の、けれど抗いがたい誘惑を与えることだけは同じ、様々な形をした愛らしさが、ところ狭しと並べられています。


「はわわわわ……かわいい~~~♡♡♡」


 こっちはウサギですね。額に一本角があるウサギさんが、灰色のとピンクに耳の先と手足の先が白いの、その水色バージョンと緑色バージョンになって、揃って並んでいます。

 トラの一本角バージョンもあります。牙がすごいけど、注目は肉球ですね。ピンクできちんと表現されています。

 こちらは鷲さんの頭に翼。でもこちらも肉球のついた手足がついています。カッコ可愛いです♪

 このあたりは、いろんな色の羊がいっぱい!手のひらサイズで、持ち歩きにも良さそうな羊のぬいぐるみが優しい色合いで作られています。

 こっちは、巨大なひとつ目、こっちはイノシシ人間と牛人間ですか? どれもデフォルメしてあるので、ひょうきんで可愛いですね。


 他にもいろんな動物の姿をしたモフモフがたくさん!ああ、撫でたい~モフモフしたい~!


「すごいですね。全部モンスターのぬいぐるみですか?」

「ああ、ここにあるのは全部そうだ」


 アシャとエルフ縫製師さんが話しています。

 そんなことより、撫でてもいいですか!?


「縫製師と聞いていたので、服なんかを作る方かと思っていました」

「おや? そういう依頼かな?」

「ああいえ……」

「そんなことより、撫でてもいいですか!?」


 素直に聞いたら、二人のエルフに、とってもあきれた目をされました。美形のあきれた顔……。


「そんなことより、月詠。オルゴール出して」

「ぬいぐるみを愛でるのが、そんなことだと!?」

「すみません、一体だけ、これにしばらく貸してもらえますか?」


 アシャは、縫製師さんに確認すると、ホワイトタイガーに牙と羽がついたぬいぐるみを私に見せ、オルゴールと交換だと言います。私は、オルゴールを出しました。


 ≪偏屈な縫製師 に 綺麗なオルゴール を渡しました≫


「これは……」

「無くしたオルゴールというのはそれですか?」


 ぬおお! これ、すっごい、いい毛足!

 アシャ、ナイスチョイスです!!


「ああ。私の……マレビトの友人がくれたものなのだ」

「そうなんですか」


 あああ、肉球の丸みがいいですね。柔らかさも硬さもちょうどいいです。


「これをどこで」

「この子が、路地裏で拾ったとか。きれいな音楽が流れるので、きっと誰かが探しているだろうと、魔道具師に磨いてもらったり、情報を集めたりしたようですよ」

「この子が、か?」


 ん? 製作者とおぼしきエルフさんに見られている気がします。


「素敵なぬいぐるみですね♪」

「ありがとう」


 ホワイトタイガーちゃんの腕を持って、ふりふりしたら、にっこり笑ってもらえました。なんだか、私の頭の上が、ずっとピコピコ動いている気がしていましたが、そういえば私にも猫耳があるんでしたね。エルフさんの耳が動いてるの見て思い出しました。そういえば、アシャのも動いてて面白いなーと思ってたっけ。


「君たちも、マレビトだな?」

「ええ。私も彼女もマレビトと言われる者ですよ」


 羽もあるし。触るの忘れてましたね。

 せっかくだから、この子のと比べてみようかな?


「そうか……なるほど」


 ホワイトタイガーちゃんの耳はふわふわ柔らかいですね。さて、私の耳は……はう! この、ヴェルベットのさわり心地! ほどよい弾力で柔らかく曲がった耳が形を戻す時に、ふんわりと撫でる感触も、これはまさに猫の耳!


「良ければ中で、茶でもどうだ」

「ええ、ありがとうござ……います……なにしてんの、月詠」

「えへへー、くらべっこ!」


 ホワイトタイガーちゃんの耳と自分の耳をモフモフしてたら、アシャに半目で見られました。

 さわってごらんなさい! 至福! 至福ですよ!!



来たのは、エルフさんのところでした♪


完全に無視してぬいぐるみに夢中ですが゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜


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