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10 裏技過ぎるもの発動してます

「「えっ!」」


 驚いている間に、妖精チュアルくんは、契約書を読んで、てきぱきと仕切りだしました。


『月詠ちゃんの契約ごとは、僕が立ち会うね。こういう契約書は18歳以下には発動しなくなってるから。18歳以下用使ってもいいけど、せっかくだから僕がGM連名契約書作るよ。ハイ』


 そう言って、チュアルくんがほぼ同じ内容の契約書を取り出しました。

『GMが立ち会う』等の記述が追加されています。


「えっ、18歳以下?」


『うん、公開しないでね』


「もとより、実年齢は公開しませんよ。ぁ、ギルド内では諸注意として共有していいですか?」


『それなら大丈夫』


 チュアルくんとロップイヤーさんが話しています。私はチュアルくんに聞きました。


「あの……大丈夫なんですか?」


『うん、人となりは保証するよ。でも、情報売るときの相手は、ロップイヤーさん指定にしてね』


「わ……わかりました」


 なんだかすごい大ごとになった気がします。


『公開できない情報は、こっちでブロックしちゃうから、安心して喋っていいよ』


「あぁ、それは僕も助かる」


「ええと……」


 何がなんだか。


「つまり、僕が君に、今から独占インタビューする。インタビューの内容は基本的に秘密にする。GMが立ち会って、ゲーム的にNGな発言はブロックされる。『うさぎの情報屋さん』で公開したい情報は、都度交渉する。インタビュー代と、情報代は別。あ、公開するかしないかで情報代が変わることはないから。これでいいかな?」


 なるほど。


「わかりました」


『よし、オッケー。あーまず、僕から、すでに予測できてるだろうことは言っておこうかな。彼女はね、限定キャラだよ』


 えっ! それ言っていいの!?

 あ、そっか手に入れた方法や状況は言っちゃダメなだけかぁ。


『なので、けっこう常に、彼女のまわりにGMが張り付いてます。彼女の近くで問題行動すると、すぐにバレるよ』


「あー……やっぱりそうなんだ。『FHO』で、限定キャラが解放されたことは、Wikiに書いて大丈夫ですか?」


『いいよー。例によってゲット方法は不明で』


「了解です」


『情報料は、月詠ちゃんにのせてあげてね』


「『つくよみ』ちゃんていうんだね、よろしくー」


「あ、よろしくお願いします」


 あわわ、どんどん話が進む。

 私いる意味あるかな?


「まずー、種族と職業聞いていいかな?」


 ロップイヤーさんは、どこかから取り出した、メモとペンを構えます。

 チュアルくんがふわふわと浮いているのを、チラチラと確認しながら、答えました。


「種族は猫天使、職業はまだ、迷い中です」


「おお、種族名そのまんまなんだ。いいね、じゃあギルド内での呼称も「猫天使ちゃん」で大丈夫そう」


「はぁ」


 情報屋さんには、これから「猫天使ちゃん」って呼ばれるんですか、そうですか。


「職業は、けっこう選べる感じ?」


「そうですね」


「限定キャラには固有称号があるって噂なんだけど……」


「えと、(封じられた女神)(ってやつ)ですか?」


「あ、ブロック入った」


『称号があることは言っていいけど、名称と内容はNG~』


「了解で~す」


 ああ、なるほど、こんな感じでインタビューですか。確かに私だけだとうっかり言いそうです。


「衣装は、オリジナルかな?」


「ええと……はじめてログインした時からこうでした」


「じゃあ、オリジナルだね。服装タイプ? 装備タイプ?」


「服装タイプ? って何ですか?」


 ? なにか衣装にタイプがあるんですね。

 始めたばかりの初心者ですので、教えてください。時間があれば、ちゃんと調べますから!


「あ、そうか。このゲームでは、キャラクターの見た目のことを『アバター』って呼ぶんだけど、アバターが身に付けている衣装は、服装タイプと装備タイプがあるんだ」


「ふむふむ」


 自分の服装を見下ろします。ゴスロリは、どちらなんでしょうか?


「見た目だけに影響があるのが、服装タイプ。見た目にもステータスにも影響があるのが、装備タイプ、と考えていいよ。たまに、ステータスにも影響する服装もあるけど」


『ゲーム的には、ステータスを開いて、装備画面で『アバター』タブにしか映らないのが『服装』になっているね。『装備』タブから開いてごらん』


 ステータス画面を開くと、装備画面に『装備』と『アバター』の二つのタグがあるのが確認できました。


『(ここからブロック。月詠ちゃんは、この装備タブで装備できるもの、が装着できないんだ)』


「あ、なるほど……」


 どちらも変わらず、かわいい猫天使が表示されます。ステータスに影響がある『装備』は装着できないけど、見た目を変えられる『服装』は変更できる。なるほどなるほど。


「つまり、私のは服装タイプ――(のみってこと)ですね」


「? なんか途中ブロック入った? まぁいいかな」


 うぉう。すごい細かくブロックしてくれます。近頃のAIはスゴいですね。


『ちなみに、アバターでの見た目の方が、基本優先だよ。装備の見た目にしたいときはアバターをOFFにしてね(月詠ちゃんのは、実はできなくなってるけど)。』


 ですよね!


『素敵なアバター用の『服装』は、公式の課金アイテムの他、いろんなプレイヤーさんが作っているから、探しておしゃれしてみてね!』


「僕のこれも、プレイヤー製だよ。よければお店紹介するね」


「お願いします!」


 うわわ! 新しいゴスロリ衣装がゲットできるかも! ……って、


「て、時間! お金!」


『あ、クエスト中だったね。確か、時間内にお金集める系の』


「え! そうだったんだ、ごめんね!」


 あうあう、どうしましょう。間に合うんでしょうか?


「あっじゃあ、先に情報料払うよ」


≪ロップイヤー さんから、トレード申請が来ています≫


 え?


≪ロップイヤー さんから、35,000gz が届きました≫


≪ロップイヤー さんから、フレンド申請が来ています≫


≪ロップイヤー さんと、フレンドになりました≫


「じゃあ、詳細はまた今度送るね! 今日もらった情報は、『限定キャラが解放されたこと』以外に『限定キャラに僕が接触できたこと』もギルド内限定だけど、教えてもいいかな?」


『うーん、GM的には、月詠ちゃんがいいなら、いいよ』


「あ、はい。大丈夫です」


「ありがとう! また、インタビューさせてね♪」


 そう言って、ロップイヤーさんは見送ってくれました。


『じゃあ、困ったことがあったら、気軽に呼んでね♪』


 チュアルくんも、そう言って去っていきました。




 あんなに苦労した、お金が、ワタワタしているうちに、貯まってしまいました。

10話 契約書に関する設定


このお話の舞台となるゲーム、『フロックス オンライン(略称 FHO)』では、RMT禁止の一環として、


● ゲーム内アイテム、もしくはゲーム内マネー(gz)の譲渡

● 貴重なアイテムや、課金アイテムの譲渡

● 高額なゲーム内マネー(gz)でのトレード

● ゲーム開始から間もないキャラクターとのトレード


について、ゲーム内で『契約書』アイテムが交わされることになっています。

この『契約書』アイテムの内容はAIによる自動生成で、偽りを記入することはできず、また、記入後に間違った譲渡やトレードを行うことはできないので、詐欺行為の抑制にもなっています。

トレードや譲渡機能を使うと、自動的に生成されるため、特に手間はありません。稀少でないアイテムや低額gzのトレードでは、『契約書』生成の有無が選択できます。ちなみに額の違うgzのみのトレードは不可。

別のアイテムを譲渡トレードする場合には、また新たに『契約書』を生成、双方の許可をとることになります。


『契約書』アイテムは、専用のインベントリに収容されて、契約者はいつでも見ることができます。契約者が許可すれば、契約者以外に見せることもできますが、譲渡やトレードをすることはできません。


『契約書』の内容は、契約者たちの確認なく運営が確認でき、RMTの疑いがあれば監視がつきます。疑いが強くなると、警告やアカウント停止などの処置がとられます。


さらに18歳以下専用契約書には、『契約書』の内容を、保護者に通達する機能(18歳以下は、法律でゲーム開始時に保護者の承諾が、すべてのVRゲームに義務化されています。)や、後に契約者に不都合が起きた場合、契約が破棄され、交わされたアイテムやgzが、強制的に元に戻されるという機能がついています。強制徴収時に、gzを使ってしまって足りない場合は、マイナス表示になり、とても大変なことになるので、そういう人専用のクエストが用意されています。(一度目は、お金に関する講習。二度目からは強制労働。四度目はないと言われています)



月詠の交わした『GM専用契約書』にも、この機能がついています。父確認。



ちなみに、ロップイヤーさんは、β版からしょっちゅうゲーム内マネー(gz)の譲渡をしていたため、常に監視がついていますが、違反行為をしたことがない&質のいいWiki運営により、逆に運営から優良プレイヤー認定されています。でもまだAI監視は外れてません。護衛と化してるともいう。



ちなみに『gz』の読み方は『ギゼ』。



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