※なお解釈は一例です
「××××!!」
人混みから怒声が上がった。
ウィザがぎょっとして振り向いた。
変わった柄のスカーフを巻いた女が肩をいからせて去っていく。
その側で頬に手形をつけた男が立ち尽くしていた。
周囲の人間は不思議そうに彼女らを見ていたが、やがてそれぞれ歩き出した。
「共有語じゃなかったね」
イストがこわごわと女の背中を見送る。
王家が各大陸の統一を唱えて100年弱。
文化も言語も全く違う者同士が話すため、王都の言語をベースに産み出されたのが俗に言う『共有語』だ。
聖都や王都の人間にとっては母語だが、だからこそ各大陸独自の文化をカバーしきれない、という欠点もある。
『共通語』になるにはもう少し時間がかかるだろう。
ソルはウィザを見た。
「なんつってた?」
「いや…………まあ、酷ぇ文句だよ。……町中で言う台詞じゃねえぞ……」
ウィザは珍しく度肝を抜かれた様子で女のいた方を振り返っていた。
彼のローブに縫いとられている紋様はある土地の民族独特のものだ。どことなくさっきの女のスカーフの柄に似ていた気がした。
イストがウィザを見る。
「彼女はなんて?」
「……訳せねえな。共有語にない単語が多すぎる。説明できなくはねえが、それも長くなるっつうか……」
ソルは呟いた。
「豆腐の角に頭ぶつけて死ね、みてーな?」
「トーフってそんなに固いのかい」
「プリンより柔らかかったよ」
「キミはなにを言ってるんだ?」
(※豆腐の角に頭をぶつけて死ね=お前は馬鹿だからこんな冗談も理解できないだろう、という煽り文句)




