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ある日ある夜。ある酒場に悲痛な叫びが響いた。
「信じられない! 誕生日を忘れるなんて!!」
「忘れてたんじゃねーよ。知らねーし」
「知らない!? 知らないって、そんな……どうでもいいことみたいに……!」
よく聞く痴話ゲンカだな、とウィザは思った。
発生源が自分の戻るテーブルだと気づくまでは。
「遅れても祝おうって気持ちがあってもいいだろ!? オレは悲しい! キミのそういうところよくない!」
「おいなに騒いでんだ」
「ウィザ! ソルが自分の誕生日を知らないって!!」
神官が勢いよく振り返った。ふらつく指が空のグラスを指す。
向かいの戦士を指差したかったのだろう。
「年末で数えてっからいーんだよ」
「オレは友達の生まれた日を祝福したいんだぁぁ!」
「何杯飲んだ?」
「2本は空けてる」
「聞いてよぉおおおおお」
ウィザは自分の椅子を引いた。
ソルがイストのグラスに炭酸水を注ぐ。
「多分冬生まれだろとは言われてたよ」
「年末で合ってるんじゃねえか?」




