『ルール無用』というルール
ある日ある町ある昼下がり、買い出しの終わりに寄った喫茶店で。
ウィザはティーフロートのストローに口をつけた。
昼過ぎの陽気に店をはしごしたせいで少し汗ばむ。
ソルを宿で待たせてはいるが、全体の予算を三割ほど浮かせたのだ。このくらいは役得のうちだろう。
隣のテーブルではタキシードの男がカードマジックを披露していた。流しの手品師か大道芸人だろう。
男の指がカードを表返すたび、客たちから控えめな歓声が上がる。
「そういえばさ」
と、向かいのイストが半分ほど減ったグラスを置く。
「ソルとカードをするといつもイカサマするんだよね。何か賭けてるわけじゃないんだけど、意外と負けず嫌いなのかな」
ウィザは言った。
「始めに『イカサマなし』って決めたか?」
「えっ」
★
「ソル、一勝負付き合え」
「おかえり。いーぜ」
ウィザはラグに腰を下ろした。特別高級な宿ではないが、家具の手入れは行き届いている。
ソルがベッド脇のキャビネットを開けた。
宿の主人の心遣いだろう。アメニティと共に数種類の賭けカードが収められている。
ウィザは扇形に広げたカードを切った。
「パスは三回まで。強さは逆回り」
「イカサマあり?」
「なしだ」
「りょーかい」
「待った!!」
イストは二人の間に飛び込んだ。
「『イカサマなし』って言ったらしないのかい!?」
「『なし』っつってんのにやるのはルール違反だろ」
「フェア精神があるのかないのか!!」




