寝起きドッキリ
「ウィザのことなんだけど」
イストはおもむろに声を潜めた。
朝の食堂は静かな活気に満ちている。朝食を済ませた客が次第に席を立ち、もう少しすれば早めの昼食に訪れる客もあるか、という時間である。
「朝起こすたびに呪文を撃たれるんだよね。なんとかならないかな」
ソルは肩をすくめた。
「コツがあるんだよ」
イストとソルは宿の廊下を戻った。
ポケットから鍵を出し、逆の手で客室のドアをノックする。返事はない。
カシャン、と錠前が開く音がした。
ドアを開けた目の前の壁に窓があり、クロゼットと二人分の壁沿いに並んでいる。
二人部屋にはよくある間取りである。
ソルは空のシングルベッドを通り過ぎ、奥のセミダブルに向かった。
昨晩広めの寝床を勝ち取った魔導師は、窓から差し込む朝日をものともせずに熟睡している。
ソルはベッドに片膝をついた。
「ウィザ、起っきろー」
と、言いながら背中を揺さぶり、逆の手のひらで口を塞ぐ。
「ーーーーン゙ぅッ!?」
ウィザが鋭く呻いてソルの腕を掴んだ。
頭を振って逃れようとするのを押さえ、苦し紛れの蹴りを半歩ずれていなす。
掴まれていない方の手が、とん、とみぞおちを捉えた。
「おはよ」
「…………ン゙ゥ……」
迷惑そうな半眼がソルを睨んだ。
ソルはぱっと両手を挙げてイストを振り向いた。
「ま、こういう感じで」
「ちょっとした暗殺を見た気分だけど!?」




