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ドライのすすめ
ある日、ある夜、ある宿で。
灯りを落とした室内に影が揺れた。
月が徐々に傾き、表を歩く者も少なくなる時間だ。
ソルは隣に座るウィザの頬に触れた。
ウィザが機嫌よく目元を緩め、頭に被せていたタオルを取る。
久しぶりの二人部屋である。
そつなく整えられたベッドの付近には、どちらのものともつかない湯の匂いが漂っている。
何度か唇を触れ合わせながら、ウィザがもたれかかるように距離を埋めた。
水気を含んだ髪が一房、ソルの首筋に落ちる。
ソルは反射的に肩をすくませた。
「――――きゃああ魔物よ! 魔物が町に入ってきたわよ!」
「火炎よ!」
見もせず放った火柱が窓越しの魔物を直撃した。
熱風が部屋に吹き込み、ウィザが後ろ手に窓を閉め直す。
「おら乾いたぜ」
「男前ぇぇ」




