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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
第一の魔王討伐
82/82

82. 最終話


 第一の魔王討伐から数日。

 ユニは討伐直後から、クローテス主催の国を挙げた祭だけでなく、様々な貴族のパーティーに招待された。

 あちらこちらに顔を出し、それがようやく落ち着いた今日、朝日を拝みながら人を待っていた。

 こんな時間帯でないと予定が入ってしまうため、仕方なく早朝の待ちあわせだ。



「お、待たせちゃったかな? 勇者様」



 からかいながら現れたのはユーゴ。

 忙しかったので、ユーゴとはしばらく会話が出来ていなかった。



「怒りますよ。普通にしてください」


「まぁまぁ。事実だろ?

 今までの勇者とは違う、本命の第一の魔王を倒した勇者なんだからさ」


「だから嫌なんですよ。

 普通に話してくれる人が少なくなりました」


「終わったばっかりなのに苦労してるんだな」



 そう言うと、ユーゴはポーションを差し出してきた。

 リーナさんの新作で疲労回復の効果が高いらしい。

 それをありがたく受け取って、ゴクゴク飲みつつ、



「そう言えば、普通に動けるようになったんですね」



 少し前までユーゴは体を動かすこともままならない状態だったが、今は自分の足で立っていた。



「いや、リーナの魔道具で体を動かしてる。

 俺の魔力はあれ以降回復しないから、魔道具に使う魔力もリーナの物だ。

 つまり、今はリーナに支えられてやっと立ってるって感じ」



 回復はしていなかったようだ。

 それでも、自分で立って動いてるユーゴは元気そうに見える。

 


「それで? 話があるってのは?」



 と、ユーゴが尋ねる。



「色々と話しておくことがあるんです。後、相談も。

 まずはナティ先生について」


「あいつ、最近見ないな」


「以前行った海王祭の手伝いの為、王都を離れました」


「忙しい奴だな。悪魔の死骸と第一の魔王が一段落付いて、すぐか」



 ユーゴの言う通り、ナティ先生はすぐに行ってしまった。

 ようやくナティ先生の重荷がなくなったというのに、人助けの為に今も働いている。

 そんな生き様を素晴らしいとは思うけど………。



「ナティ先生みたいな生き方は、私には出来ないですね。

 他人の為に、そこまでする必要があるのかって考えてしまいます」


「別にマネしなくてもいいだろ。

 ナティが好きでやってることだ。

 それにしても、以前のユニならナティに賛同しそうだけど、何かあったのか?」


「そう………ですね。

 両親の言う通りに生きていたことを思い出したから、ですね」



 人々を思う心は、両親から求められた物だ。

 両親との別れを受け入れられず、教えられたその価値観が絶対だと思い込んでいた。

 でも、ユーゴを失いそうになったことで、その過去を思い出した。

 そして、迷ってしまった。

 誰かを助けようする私を助ける為に、自分以外の人を危険な場所に連れて行ってしまう。

 そうして私を助けようとする人を失ってまで、他人を助けたいのか、と。


 そして、人助けを躊躇したときに、自分のしたいことが見えなくなった。

 いや、最初からそんな物はなかったことに気付いた。

 誰かに与えられた使命をこなすばかりで、自分のやりたいことなんて考えたことすらなかった。



「私、分からなくなっちゃって。

 自分が何をしたいのか」


「ふっっ、似てるな」


「誰とですか?」


「昔の俺と」



 思い出してみれば、初めて出会った頃のユーゴは世捨て人みたいな風貌だった。

 投げやりな雰囲気もあったが、それがいつの間にか変わっていた。



「魔王討伐に向けて必死に頑張るユニを見てたら、いつの間にか俺もその気になったんだ。

 魔王を討伐して、平和を作るんだ、って。

 それと、仲間との日々が楽しかったことも思い出したんだ。

 みんなで馬鹿なことやって、ナティに怒られたり、リーナと色んなことしたり。


 ユニが魔王討伐してからは、リーナの為に生きてる。

 今の俺に出来る唯一の事だからな。

 それに、リーナは俺がいるだけで幸せそうなんだ。

 そんなリーナを見てるだけで俺も幸せになる」


「このタイミングで惚気ですか…」


「いいぞ、伴侶がいるってのは。

 惚気みたいになったけど、俺が言いたいのはさ。

 誰かといるだけで幸せになることもあるってこと。

 恋愛関係以外でも、ユニが仲良くした人がいるだろ?」


「ナルミシア……と……ツラック、ですね」


「その二人は今どうしてる?」



 二人の現在について、聞いている話を伝えた。


 ナルミシアは違和感を与えずに『想念伝達(テレパシー)』が出来るようになったため、今では他人の心の声を盗み聞き出来る。

 その為、これからの交渉ではナルミシアが付いた陣営はかなり有利になる。

 結果、ナルミシアは多数の貴族から勧誘と抹殺を狙われている。

 ナルミシアは、『今は安全』と言っていたけど、やっぱり不安だ。


 ツラックは貴族の三男で家族から酷い扱いを受けてきたが、貴族の時代が来るのを予見して、貴族の中で成り上がる為に動いている。

 ひとまず騎士として名をあげようと鍛練の日々らしい。



「なるほど。二人ともこれからの時代で活躍しそうだな。

 これからは貴族が政治の中心になるだろうし、ツラックのように、ユニもそれを前提に動いてもいいだろうな」



 ユーゴが知っているか分からないが、貴族の時代が来るのは確実。


 クロノさんを含めた元帥は第一の魔王討伐と同時に姿を眩ませた。

 魔王がいなくなったことで貴族が本格的に動き出すのを予期して、その前に逃げた。

 クローテスお祖父様も暗殺される前に政治から身を引くつもりのようで、後任が決まったら辞めると言っている。

 後任とは、これから覇権を取る貴族のこと。

 そうやって、今の政治指導者は消えていき、貴族が政治の中心になる。

 魔王討伐に向かわせるべき人材を懐に抱えて力を溜めていた貴族が、遂に動き出す。


 そして、ナルミシアとツラックはおそらくそれに巻き込まれる。

 いや、二人は自らその火中に飛び込むつもりかもしれない。



「二人の為に動くのもいいかもしれませんね。

 結果として一般の人の為にもなると思いますし」


「そんな感じだろ。

 結局、人はそんな簡単に変わらないからな。

 やりたいことが出来てから、少しずつ自分を変えればいい」



 ユーゴのおかげで何となく方針が決まった。

 


「それにしても、魔王を討伐したら全てが綺麗に終わると思ってましたけど、そう上手くはいきませんね」


「俺も昔そう思ってたよ。全然そんなことなかったけど」


「大きな壁を乗り越えたはずなのに、その先にはもっと厄介そうな壁が出てきて、どうしたらいいのか分からなくなります。

 もし、『前の方が平和だった』なんて事になったらと思うと、怖いです」



 ユーゴは頷きつつ、



「それでも前に進んだと思うしかない。

 魔王の次に貴族が敵になるなら、貴族も倒すしかない。

 その次に出てきた敵も倒す。

 今より良くなるって信じないと前には進めない」


「信じる、ですか……。

 ユーゴは今よりも未来の方が良くなるって思いますか?」



 ユーゴは少し考えてから、口を開いた。



「良くなるさ。良くしようとしてたら。

 俺は自分が幸せになるなんて思ってなかったけど、それでもこうして幸せに生きてる。

 伸ばした手の数だけ、自分にも差し出される手が増えたことでな。

 不思議なもんだ」


「良くしようとした結果、ですか……」


「そうだな。参考になるかは分からないけど」


「参考になりましたよ。私もとりあえずの方針が決まりました」


「貴族の揉め事に首を突っ込むことにしたのか?」


「えぇ。やっぱり私が一番活躍できる所だと思うので」



 話したい事を一通り話して、ユーゴとは別れた。

 私は王宮へと足を運び、ナルミシアやツラックと話すことにした。


 これから二人がどうするのか?

 この国をどうするのか?

 二人はどうしたいのか?


 そんな事を考えているだけで、予定もないのに忙しい気分になってくる。


 いつもの忙しい日々が終わり、新しく忙しい日々が始まった。



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