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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
序章
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8. 学校行っといて



「被告人シールを終身刑とする」



 静まり返った部屋に裁判長の言葉が響いた。


 ユニの両親を殺害したこと。

 俺を殺害しようとしたこと。

 それ以外にも、多くの貴族や裕福な人々を殺したことが裁判で明らかにされた。


 遺族には死刑を求めて悔しがる者もいたが、彼らは理解していない。

 恐らく終身刑は死刑よりも重い判決だ。

 というのも終身刑は一生外に出る、又は連絡をとることができない。

 そのため、裏では危険な実験の被験体として終身刑になった人間は扱われている。

 これはごく一部の限られた人間しか知らないことで、俺も勇者だった頃に知ったことだ。



「裁判がやっと終わりましたね」



 疲れた様子のユニが落ち着いた声で言った。



「危うく、トラーダを取り逃がすところだったけどな」



 シールとトラーダを兵士に預けた後、トラーダの家族から大金が支払われ、即日釈放されるところだったのだ。

 そこで、ユニから国王クローテスに根回しをしてもらい、通常通りに裁判を行うことが出来た。


 トラーダが王族に取り入ろうとして暗殺者を使い、ユニの両親を殺害させ、ユーゴに対しても同様のことをした、と自白。

 シールと同じく終身刑。

 こっちの裁判は始まってすぐに終わった。


 裁判の最中、ユニはずっとつらそうな表情をして今にも泣きそうだった。

 とは言っても、理由は魔法に慣れていない人特有の凄まじい筋肉痛のせいだろう。


 そんな辛い表情のユニを見た裁判官らはひどく同情していた。



「筋肉痛はもう治ったか?」



 ユニは涙目で首を左右に振った。

 椅子に座っているだけなのに、足の筋肉が痙攣してプルプルと震えていた。



「まぁ、そうだよなぁ。

 普通ゆっくり慣らしていくものだから、突然使えばそうなるよ。

 酷い場合は筋肉が断絶するって聞いたし、まだマシな方じゃないか」


「分かっててやらせたんですかッ‼

 そんな鬼畜な人だとは思いませんでした‼」


「短時間だから大丈夫だと思ったんだよ。

 悪かったって」



 謝っても許さないという様子だ。

 体を動かさないようにしながらも、顔で抗議してくる。



「俺も緊急事態だったとはいえ、何も教えずにやらせたことは反省してるんだぞ。

 こう見えても。

 だから特別に、王都第一魔法学校に編入できるようにしておいた」


「………………はい?どうゆうことですか?」


「実は俺の知り合いがそこの学長をやってな。

 俺のお願いということで無理を聞いてもらったんだ。

 あそこなら魔法習得の設備が整ってるから、安心して魔法を使えるぞ」


「話が突然すぎません?

 って言うか、ユーゴはどうするんですか?」


「俺か、俺は………ちょっと武者修行をしようと思ってる。

 相手をするのが今の俺じゃ不安だろ?」


「………何か隠してません?悪巧みしてません?」


「そんなことないぞ…

(学長に借金してる金を返すためとか言えないッ!!

 真面目にやってる証拠のために、ユニを担保にするつもりとか言えないッ!!)」



 ユーゴは明らかに目が泳いでいたが、ユニは見なかったことにした。



「ところで学費はどうするんですか?

 私そんなにお金持ってないので払えませんよ?」


「ユニが優秀な成績を修めれば免除してくれるってさ。

 飛びきり優秀なら、すぐに卒業できるらしいから頑張れよ」



 あまりの適当さにユニがため息を漏らす。

 それとは対照的に、ユーゴは不敵な笑みを浮かべていた。



「よし、帰るか。

 その調子だと動けなさそうだし、俺が運んでやるよ」



 軽く抵抗するユニを背中に乗せた。

 目隠しをして天秤を指先で持った像を横切り、大きな裁判所を出る。


 周囲の人間からは仲の良い家族に見えているようだ。

 歳老いてシワの多くなった女性が、ユニと俺を見て懐かしんでいた。



「あ、あの、恥ずかしいので、降ろしてください」 

「降ろしてもいいけど自分で動けるのか?

 こんな道のど真ん中で突っ立ってたらぶつかるぞ」

「そ、それは……」



 反論したそうに口ごもるが、動けないのはユニ自身が一番分かっているのだろう。

 むぅ、と頬っぺたを膨らまして何も言わなくなった。


 活気のある人通りを抜けて人気のない道を進む。

 稽古をしていた別荘への道だ。



「ユーゴ、さっきの話で聞きたいことがあります」



 背中でしばらく寝息をたてていたユニが、いつのまにか起きていた。

 恥ずかしがっているのが分からないように、ユニはいつも通りに話し出した。

 恥ずかしがっているのはバレバレだが、そこがまた可愛い。



「私を学校に預けて終わりってことは有りませんよね?」



 俺が逃げる気なんじゃないかって不安なんだろう。

 安心させるために力強く言う。



「大丈夫、安心しろ。

 他にやることなんて大してないし、それに言っただろ。

 あそこの学校には知り合いがいるって。

 困ったら学長を頼ればいい」



 それでも不安そうではあったが、俺は特に気にせずいつものように考えていた。

 まあ、何とかなるだろ、と。



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