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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
第一の魔王討伐
72/82

72. クロノの記憶 ④



「ん……」



 目を開けると、そこはテントの中だった。

 そして、



「あっ、ホントに起きた!!」



 囲まれていた。

 俺が寝ている布団の周りにズラッと10人ほどがいる。

 嫌な汗が出てきた。

 こんな多くの人に見られながら寝てたのか。

 いや、そんなことを気にしてる場合じゃない。

 俺の予想通りなら、俺はこの集団に入れてもらうことになる。

 第一印象は重要。

 社会人なら当然だ。



「は、初めまして、クロノです」



 心の中でスーツに身を包み、気持ち的には斜め30度で頭を下げる。

 布団の中なので実際は軽く頭を下げただけだ。



「初めまして、俺はミキリ!!」


「ミキリさん、助けていただいて、ありがとうございます」



 ペコッとまた頭を下げる。

 視線が俺に集中しているため、やたら緊張する。



「一つ聞きたいことがあるのですが、皆さんは…」


「俺たちは魔王を倒す為に動いてる。討魔隊って言うんだ」



 積極的に喋るのは、この中で一番若そうに見える中学生か高校生ぐらいの年齢とおぼしきミキリさん。

 他の人は俺のことを観察しているようだ。



「クロノさんも討魔隊に入らない?」


「えっ?」



 願ってもないことだ。

 この討魔隊とやらに入るために遠くから来たのだから。

 しかし、確認することがある。



「先に確認したいことがありまして、あの、皆さんは」


「日本人だよ」



 質問を先回りしてミキリさんが答えた。



「日本人?」


「クロノさんもそうでしょ?」


「えぇ、そうですが、その、状況がよく分かっていなくて」


「状況は後で。討魔隊に入るの?入らないの?」


「あっ、入ります」



 一瞬の沈黙の後、ニヤッと笑った面々が背中やら肩やらを叩いてテントを出ていった。

 叩かれた際の痛みで、ケガをしていることを思い出した。

 ケガ人なんだから優しくしてほしい。



「あの人たちも?」


「日本人。大体は」



 一人、金髪の外国人っぽい人がいたので、その人は例外なのだろう。

 女性なのに、がたい良かったな。

 それはともかく、予想通り日本人の集団だったようで胸を撫でおろした。

 討魔隊とやらにも入れるそうだし、心配していたことは大丈夫なようだ。

 日本人の仲間がいると思っただけで気持ちが軽くなる。



「あの、それで状況は」


「クロノさんが聞こうとしていることについては分からない。

 俺たちも気が付いたら、この世界にいたんだ」


「世界?」


「うん、情報を集めたけど、あきらかに異世界だよ。

 つまり、俺たちは異世界転生したってわけ!!」


「あのちょっと意味が」



 俺が首を傾げると、ミキリさんが驚いたように言う。



「クロノさん、ライトノベル知らない?」


「あまり…」


「時代に取り残されてるよ」


「そうなんでしょうか……」



 ミキリさんはコホンと咳をすると、切り替えて、



「ざっくり言うと、俺たち全員死んで、新しい世界に来たってこと。

 しかも、最強の力を手に入れて。

 クロノさん、こっちの世界に来てからステータス画面を見たことあるでしょ?」


「ステータス?」


「能力値とか自分の能力とかが書いてる画面。

 ほら、見てると時間止まるやつ」


「あ、そう言えば」



 かなり前にゴブリンを倒したときに見た気がする。

 


「『次回以降表示しない』を選択したような」


「えぇッ!?それはないでしょッ!?」


「そんなにですか?」


「だって、自分でどのくらい強くなったか分からないじゃん。

 クロノさん魔獣と戦ってたけど、戦闘はどうやったの?」



 魔獣?ってのはバケモノのことか。

 さっき言ってた魔王も俺が戦ったかなり強いバケモノ…じゃなくて魔獣のことか。



「戦闘は能力を使ったら、倒せるからそれ以外には特に方法はないです。

 弱い敵だったら、能力を使わなくても、何となくで倒せますし」



 ミキリさんは納得がいっていないようで、



「クロノさんの能力ってどんなの?」


「勝手に体が動いて敵を倒してくれる能力です」


「オートプレイってこと?……便利!!」


「そうなのかな?」



 結局、重要な部分については分からなかったが、俺は討魔隊という異世界転生した日本人の集団へ参加することに成功した。

 思っていたのとは違う情報がたくさん手に入った。

 魔獣とか魔王とか、ほとんどはミキリさんが勝手に名付けたらしいけど、他の人もそう呼んでるみたいだ。

 集団に入ってすぐに分かったことだが、この討魔隊はミキリさんが率いているようだ。

 誰も彼に異論はないらしい。

 異世界転生というものを他の人もよく知らないようで、詳しいミキリさんに付いていく形だ。

 俺も異世界と聞いて困惑していたが、他の人もそうなのだろう。

 結果、元気に全員を導いてくれるミキリさんに全員が引っ張られていた。


 戦闘は危険だが、それぞれに特殊な能力を使えるようで、みんなで集まっていると大量の魔獣が相手でも怖くない。

 集団心理かもしれないが、よくわからない場所に一人でいるよりは集団の中にいたい。

 魔王を倒すためというのも、ミキリさんが強く主張したため全員がそう動いているようだ。

 中学生か高校生ぐらいの子に、全体の指揮を大人が任せてしまうのはどうかと思ったが、そんなことを言える雰囲気じゃない。

 ただただ、ミキリさんに付いていこう。

 俺は特に考えず、そう思った。



 俺たちは強かった。

 全員が特殊な魔法を使えた。

 ヒメカという人は『全能視』によって、色々な情報を手に入れられる。

 ホンダというボサボサ頭の人は『建築』によって、色々な建物、例えば家なんかをすぐに作れた。

 そして、ミキリさんの能力は『戦闘狂』。

 戦闘時間が伸びるにつれて、スピード、パワーが上がっていく。


 戦闘向けでない能力も複数あったが、俺の『絶対勝利(ハッピー・エンド)』とミキリさんの『戦闘狂』がずば抜けて強かったため、戦闘面は問題なかった。最初は。

 しかし、強かったと言っても、魔王も相当だった。

 大量の魔獣を寄越してくる魔王にはなかなかたどり着けず、危うく死人が出かけたこともあった。

 元々俺たちは魔王になんか興味はない。

 ミキリさん以外は魔王に全く興味がなかったため、死の危険性を感じたミキリさん以外のメンバー、当然俺も魔王討伐を諦めることを選んだ。

 討伐するメリットも無かったから当然だった。

 そうして、第一の魔王討伐は逃げる魔王に、追わない俺たちという、一応引き分けの形で終わった。


 それから、100年。

 魔王とは反対の方向に歩みを進め、結果として大陸の西に町を作った。

 その後、俺たちは歳を取らないことが分かった。

 転生者特典だとミキリさんは言っていた。

 俺たちの作った町は人が増え、町は発展し、国になり、繁栄した。

 そして、……壊滅した。



「全員大丈夫そうね」



 ヒメカがミニチュア・シェルターの中を見渡して言った。


 数秒前、俺たちは王都の店で他愛のない雑談をしていた。

 すると突然、



「上空から魔王の攻撃が来るッ!!防御魔法ッ!!」



 ヒメカが叫んだ。

 数人がよく分からず強化魔法で全身を固めたが、ヒメカはそれじゃダメだと言うように首を振る。



「…みんな……もっと寄って……ください」



 ボサボサ頭のホンダの言う通りその場の全員が集まると、ホンダは懐から小さな箱を取り出した。



「『ミニチュア・シェルター』展開!!」



 魔法で小さくなっていたシェルターは展開と同時、その場にいた全員を中に収納した。

 中は白い壁以外何もない空間。



「これで大丈夫なのか?」



 俺の問いかけにホンダとヒメカは無言で頷く。

 直後、大きな爆発音が聞こえたかと思うと、シェルターは横転していた。

 中にいるメンバーは全員異世界転生した人間だったため、ケガ人はなし。

 


「収まったな。出るか?」


「もう出ても大丈夫……」



 顔面蒼白になっているヒメカの言葉を信じて、俺が最初に出た。



「そんなことがあるのか……」



 シェルターから出てきた全員が言葉を失った。

 100年かけて繁栄した王都が数秒で壊滅していた。

 俺たちよりも高い建物はなくなり、瓦礫と死体しか残っていない。



「ヒメカ…何が起こったんだ……?」


「空から魔王が降ってきたの」


「俺たちが逃したやつか」


「違う。でも、凄い量の魔力だったから魔王だと思ったの」


「それで、そいつはどうなった」


「爆発した」


「………自爆かよ」



 第二の魔王は王都を吹き飛ばすために、わざわざやってきて死んだのだ。



「敵ッ!!」



 ヒメカの指差す方向で人型の炎が出現した。



「見たことない敵だ。ヒメカ、情報を」



 ヒメカの『全能視』を使えば、初見の相手でも全ての情報を得られる。



「倒した直後に爆発する。クロノなら大丈夫!!」



 俺は指輪から剣を取り出すと、その敵を即座に切り刻んだ。

 直後に爆発したが、ヒメカの情報があったので難なく回避。

 


「大したことないな」


「けっこうな数いるよ。魔王ぐらい強いやつも混ざってる」



 ミキリはあの場にいなかったから、シェルターに入れていない。

 俺が戦わないと。


「クロノと私で相手するしかないよ」



 短い金髪に、女性にしては筋肉質な肉体。

 防御に特化した能力『絶対防御』を持つレーナだ。



「俺とレーナで敵の相手をする。

 ヒメカはミキリや他のメンバーの捜索。

 ホンダは敵を迎撃出来る建物を出来るだけ多く作って、生き残ってるやつをそこに入れてくれ」



 最初の魔王の自爆以降、俺たちに大きな被害は出なかった。

 初激。

 たった一発の自爆で、多くの仲間が死んだ。

 一般人はほとんどが死んで王都はむちゃくちゃになった。

 幸い、俺が最初に出した支持によって、ミキリさんは一命を取り留めたが、手足の欠損という重症。

 数少ない戦闘に特化した能力を持っていたため、戦闘に参加させられないのは痛手だった。


 それから数十年。

 俺は『教会』という組織を作った。

 地球にあった宗教を広めつつ、俺たちの勢力を増やすため。

 俺たちは『元帥』と名乗り、国を背後から操るようになった。

 バベルを作って引きこもるようになったのも、それからだ。

 ここまでして、やりたかったこと、それは。


 第一の魔王の討伐。


 俺たちの安全な生活の為に、取り逃した第一の魔王を討伐することが元帥の目標になった。

 魔王を討伐する為には異世界転生した仲間が必要だ。

 別格の強さを誇る転生者がやはり頼りになる。

 しかし、第二の魔王の自爆によって、多くの仲間が死んだ。

 人員を増やす必要があるが、転生者は多くない。

 戦える能力を持った人材も稀だ。

 そんな訳で各地に『教会』を立て、転生者を見つけ次第王都に集めたのだ。

 


「クロノ、転生者が二人来たみたいよ」



 あの事件以降、目隠しを付けるようになったヒメカが俺を呼びに来た。

 ヒメカはあの事件のときに『全能視』によって、凄惨な現場や助けを求める人の死に際を多く見たらしい。

 見え過ぎる能力を封印する為の目隠しのようだ。



「今回の転生者はどんな能力か分かるか?」


「情報によると、医者がいるみたいよ」



 ミキリさんは手足の欠損という重症。

 それを治すことが出来れば、大きな戦力になる。



「医者か。会うのが楽しみだ」


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