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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
序章
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7. 信頼度回復計画4


 俺は1つのことに気がついていた。


 さっきシールがユニを攻撃したとき剣を使わずに蹴飛ばした。

 剣を使えば間違いなく殺せていたのにそれをしないのはおそらくそうゆう()()なのだろう

 それとさっきから見えているあいつを使えば勝機はあるッ!!


 俺はジリジリと近づいて来るシールの不意を突いてつばぜり合いに持ち込み、わざと剣を弾かれながらユニの方に転がる。



「おぉ、ついにやる気を出したかぁ。

 って…………あぁ?

 俺の前で堂々と作戦会議かよ」


「いいや、作戦はもう出来てる。

 後はお前を倒すだけだ」


「面白いこと言うじゃねえかぁ。

 雑魚二人で一体何が出来る?」



 ユーゴは剣を構えてシールに勢いよく剣を打ち込む。

 ユニもそのあとに続く。



「二人いたって木剣じゃ話にならねぇ。

 それでこの俺を倒せると思ってんのかぁッ‼」



 そう言ってユニを蹴飛ばそうとしたが、不意に加速したユニには当たらない。



「何ぃ!?このガキさっきまでと動きが違うッ!!

 こいつ魔法を使えたのかぁ‼」



 シールはユニの剣を自分の剣で受け止め、左腕を魔法で強化して俺の剣を受け止めようとする。


 ここだッ。全魔力を使い身体能力向上(ブースト)ッ‼


 俺の剣はシールの左腕を掻い潜り、勢いよくシールの剣に当たった。

 片手で剣を持っていたシールが焦ったように声を出す。



「まさかッ‼」


「この場でお前を倒せる武器はな。

 シール、お前が持っている剣だッ!!

 そしてお前は今、片手で剣を持っているッ

 その状態で受け止められるかなッ?」


「クソッ!!クソッッッ!!」



 シールは悪態をついて下がろうとするが、ユニに足を引っ掛けられ、後ろに転んだ。



「このガキィィィッ‼やりやがったなぁぁッ‼」



 シールの剣が勢いよくシール自身に向かっていくが、シールは間一髪で剣の刃を左手で掴み、転びながらも受け止めた。



「左手を残りの全魔力で硬化ッ‼

 これでお前らの希望は終わりだぁぁッ‼」


「ユニッッッ‼」「はいッッ!!」



 名前を呼ばれると同時、ユニは返事をしながら高くジャンプし、全体重をかけて俺が押さえている木の剣を踏みつける。


 シールの左手首が変な音を立てて折れ曲がり、支えを失った剣がシールの胸に突き刺さった。

 血が飛び散り肋骨が折れ、シールは痛みに顔を歪ませる。


 しかし、胸に剣が刺さりながらもシールは俺を蹴飛ばした。




「クソォォォォ!!痛ぇぇぇぇ!!けどなぁぁッ!!

 この程度の傷で俺を倒せると思うなよぉッ‼」


「いいや、お前の負けだ。焦って魔力を使い果たしただろ?」


「それはお前も同じだろぉッ」


「なら、やっぱりお前の負けだ。

 さっきまでと違って魔法で体を強化出来ないんだからな」


「はぁッ?それがどうし――――」



 遠くからシュッと音がして、シールの首にぷすりと針が刺さった。



「あぁ?なんだこれ?こんなもんが俺………に………効く……わ…け」



 立ち上がろうとしていたシールがふらついて倒れた。

 それを見て、木の後ろから召し使いが出てくる。

 シールと俺が戦い始めてから帰ってきた召し使いは、シールの背後の木に隠れ、吹き矢を撃ち込む機会を伺っていたのだ。



「抵抗しても無駄です。

 体の大きなグリーン・グリズリーですら即座に眠らせる麻酔ですよ」



 シールは悔しそうな表情で倒れたまま動かなくなった。

 

 次は金髪頭と思ったが、召し使いがいつまにかトラーダを捕まえてグルグル巻きにしていた。

 それをまねて、俺も眠っているシールが目覚めても大丈夫なように縄できつく縛る。



「こいつも何かしら防具を着ていれば、慌てて魔力を浪費せずにすんのにな。

 ユニ、これが前言った魔法を過信するってことだ」



 縛り終えて後ろを向くと、ユニがシールを見て暗い表情をしていた。


 俺を助けるために勇気を振り絞って戦ってくれていたが、内心は怖かっただろうな。

 それにシールは両親の仇だ。

 思うことがあるだろう。



「この男が憎いか?復讐したいか?」


「………………よく分かりません。

 怖くて憎いけど、今復讐心で行動するのは良くないと思います。

 今ここで復讐して満足してしまえば、これからの人生を頑張れないような気がします」



 ユニの顔には、何も考えずに復讐してしまいたいという願望が見てとれた。



「私の父や母は民衆が日々の生活で苦しんでいるのを変えたいと言っていました。

 町が栄えても魔王が襲来すれば、何もかもがなくなってしまう。

 そのため、地方の貴族は自身の保身ばかりを考えるし、国も魔王を倒すことばかりで、民衆の生活は苦しくなるばかり。

 そんな民衆を救えるのは、余裕のある自分たちだけだと言ってました」



 俺に心を許してくれたのか、ユニは心の内を話し出した。



「両親が死んでからは、私がその思いを継いで民衆を助けたいと思っていました。

 それでどうしたらいいかクローテスお祖父様に聞いたら、魔王を倒して勇者になり、勇者になった後はその栄誉を利用して国王になり、最後に政治を変えれば、民衆を救えると言われました」


「もしかして、国王クローテスと同じ道を進むつもりなのか?」


「はい。国王になれなくても、勇者になれば十分民衆の助けになれます。

 だから勇者になりたいんです」


「次に来る魔王の討伐か……。

 最近は次の魔王が来るまでの期間が短くなっているから可能性はあるな。

 問題は倒せるかどうか。

 勇者に選ばれるかどうかだな……。

 それなら先生は俺じゃない方が良くないか?

 もっと強いやつとかの方が……」


「お祖父様は私が本気だと思っていないので、雇って貰えたのがボロボロの服を着た勇者だったんですよ。

 だから他にもっといい先生はいません。

 頼りにしてますよ」


「お、おぅ、任せとけ」



 頼りにしてますって言われてもなぁ。

 ん?頼りにしてます…。

 そういえばユニに聞きたかったことを色々と聞けたな。

 いつまにかちゃんと会話出来てるじゃん。

 殺されかけたけど、何とかなったな。

 何とかなるもんだな。



 その後、日が暮れても兵士が到着せず、シールとトラーダは目覚めた後も冷たい土の上で長い間縛られたままだった。



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