表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
魔界入り
58/82

58. 豪邸


「でぇぇぇやぁぁぁッッ!!」



 大声を上げて、鎧に身を包んだ大柄の男が薙刀(なぎなた)を大きく横になぐ。

 先端についた刀がユーゴの鼻先を掠めた。



「危なっ!!」



 ピョンッ、と後ろに飛んで避けると、ユーゴは剣を引き抜いた。

 大柄の男は薙刀を高く構え、すり足でにじり寄る。

 ユーゴは突然の攻撃に驚きつつも、冷静に会話を試みた。



「なぁ、話をしよう。

 何で俺を攻撃するんだ?」


「問答無用ッ!!

 貴様がか弱い女性を付け狙っていたことは知れておるッ!!」



 うーん、……否定できない。

 尾行してたのは本当だからなぁ。

 ただ、か弱いってのはどうなんだ?


 突然、ぶんぶんと薙刀を振り回す手が止まった。

 高く構えられた薙刀の刀身が明るく輝く。



「マズッ」



 距離を取るユーゴには目もくれず、薙刀は明後日の方向に振るわれた。

 刀身からは予想通り、魔力の刃が放たれる。

 その攻撃は二人の横を素通りしようとしたユニの召し使い、サリナの行く手を阻むように壁に当たった。



「そこの者、それ以上進むのなら、容赦せんぞ。

 死にたくなくば、そこで止まっておれ。

 女性を傷付けるのを我は望まん」



 サリナは大柄の男を睨みつけつつも、言われた通りにその場で止まった。

 こちらに向き直った大柄の男が振るう薙刀に、ユーゴは剣を当てて対応する。


 こいつ意外とやるなぁ。

 エリシアからの妨害を予想して、サリナと俺の二人で尾行してたのに、サリナも見つかったんじゃ意味がない。

 でも、この男は悪い奴じゃないだろうし、殺すのもなぁ。


 のんびりそう考えていると、大柄の男が膝から崩れ落ちた。



「行きますよ」



 サリナが吹き矢を懐に仕舞い、そう言う。

 


「殺した?」 


「いいえ。強力な睡眠薬なので死んでないでしょう。

 しかし、強力なので記憶障害や意識の混濁があるかもしれませんが」



 どうやら気を使ってくれたらしい。

 一般人が死ななくて良かった。



「で、どうします?」



 サリナが呆れたように尋ねる。

 この男とその前に数人を相手している間に、すっかりエリシアを見失っていた。



「ま、頑張って探すしかないだろ」


「『頑張る』って、もう暗くなってますが。

 見つかるでしょうか?」



 サリナは少し諦めているようだが、それも仕方ない。

 上手いこと時間を稼がれてしまったせいで、かなり距離を取られただろう。



「エリシアは人の目を引くからな。

 そこら辺のやつに聞いたら分かるんじゃね?」



 暗くなってきた今、あまり期待は出来ないが、他に方法もない。

 俺とサリナは近くにいた少年少女に目を付けた。

 ざっくりとエリシアの見た目を話すと、少年少女は思い出したように答える。



「さっき綺麗な人があっちに行ったよ。

 ねぇ、あーちゃん」


「うん、それとね。

 今、ガオーッてあっちから。

 ねぇ、いーちゃん」


「「うんうん」」



 少年と少女はスラスラと答えてくれた。

 


「ありがとう。助かったよ」


「「バイバーイ」」



 二人仲良く手を振る。

 少し離れたあの二人から視線を感じつつ、ユーゴとサリナは先を急いだ。



「あの子達が言ってた、ガオーッて音、なんだと思う?」


「さぁ? 行けば分かるでしょう」


「もし魔獣だったら?」


「あなたを置いて逃げます」


「……即答かよ」 



 サリナは元暗殺者だが、その技術は人が相手のときしか使えない。

 相手が魔獣ならさっさと逃げるのは仕方ないのだが、もし本当に魔獣が相手の場合、俺一人で戦うことになる。



「……なんとかなるか」



 暗闇を注意して進むと、案の定、誰かが襲ってくる。

 飛び出してきた男がやたらと痛がっていたのは不思議だが、サリナが容赦なく殴ったことで、戦闘はすぐに終わった。


 その後、周辺を散策するもエリシアを見つけることは出来なかった。

 近くにあった豪邸を怪しいと睨んだが、こんな真夜中に侵入すれば、いよいよ犯罪者だ。

 豪邸でサリナと待ち合わせることにして、その日は解散した。



「……あいつ、遅くね?」



 早朝、豪邸近くでユーゴは待っていた。

 サリナと合流でき次第、許可を取って豪邸に入ろうと思っていた。

 おそらく許可は取れないが、その時は仕方ない。

 侵入しよう。


 その時、豪邸の門が開いた。

 中から現れたのはサリナだった。

 にこやかな笑みを浮かべ、こちらに手を振ってくる。



「早く来て〜」



 いや、誰だよ。

 

 心の中でツッコミを入れつつ、サリナと合流し、豪邸に入った。

 どうやらサリナが豪邸に住んでいる有力者に取り入ったらしい。

 その有力者が昨日戦った大柄の男だったのは驚いたが、昨日のことはすっかり覚えていないようだ。

 そして、俺はサリナの従者という設定らしい。

 それっぽく振る舞わないとな。



「従者の方よ。

 拙者はベンケイという。

 よろしく頼む」


「ユーゴ……です。

 よろしく……お願いします」



 敬語はなれないな。

 基本黙っとくか?



「ユーゴ?

 …………聞き覚えのあるような………?」


「気のせい……だと思います」



 こいつ、記憶が残ってるのかもな。

 豪邸内を調べて、さっさと離れないと。


 そうは思いつつも、無料で食事と寝床を提供してもらえるようなので、ありがたい。

 


「ユーゴ殿、荷物を運ぶのを手伝ってもらえるか?」


「え? ……あっ、はい」



 従者だから雑用やらせる気なのか。

 まぁ、荷物を運びながら、豪邸内を見て回ろう。



「ユーゴ〜頑張ってね〜」



 サリナはあの演技を続けるつもりらしい。

 ちょっとウザいけど、サリナは自由に豪邸内を動けるだろうし、好きにやらせておく。


 それにしても、エリシアは本当にここにいるのか?

 魔獣の可能性も気になる。


 そんなことを考えつつ、ユーゴは荷物を運ぶのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ