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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
魔界入り
55/82

55. 魔界入り


 ユニの心配をよそに馬車は進み続け、意外にもあっさりと最前線へたどり着いた。

 早朝の朝日を浴びて、気持ち良さそうに伸びをするエリシアとは今日でお別れだ。



「お世話になりました。

 また何処かで会うようなことがあれば、そのときはお返しをさせてください」


「い、いえ、お気になさらず……」



 エリシアはペコリと頭を下げると微笑みながら去っていく。

 何となくエリシアを苦手に感じているユニは苦笑いで見送った。



「やっとか」



 少しやつれたように見えるユーゴがため息混じりに呟く。



「えぇ、やっと着きましたね」


「着いたことより、エリシアから離れられたことが嬉しいよ。

 あいつ、ずっと俺の隙を伺ってたからな」


「好きだったのかもしれませんよ」


「絶対違う。そんな優しい感じじゃなかった」



 スタスタと歩き出したユーゴの横に並んで、ユニも歩く。



「どこに行くんですか?」


「ちょっと挨拶かな。

 俺がユニにしてやれることは、もうほとんどないからな。

 とりあえず最前線の知り合いを紹介する」



 ユーゴの向かう先、最前線にそびえる壁は高く、表面はボロボロに見える。

 雑談に花を咲かせる兵士に挨拶をすると、すんなりと最前線の区画に入れた。


 その後、数名と顔を合わせたものの、思いのほかユーゴに知り合いは少ないようだった。

 


「第四の勇者ユーゴです」


「あ? あぁ、元勇者ってやつか」


「……まぁ、そうです」



 ユーゴが不本意だと言いたげに顔をしかめるが、適当にあしらわれて終わる。

 というやり取りを数回、なんとか最前線の話を聞ける程度の知り合いを数人作ったのだった。



「しばらくの方針は決まったな」


「はい、雑用ですね」


「あぁ、時期が来るまでは雑用だ」


「時期?」


「もうすぐ魔界から味方が来るからな。

 そのときに、一緒に魔界に行く」


「サラッと大事なこと言いますね。

 魔界に人がいたんですか?」


「いるんだよ。

 自己責任で魔獣や幼魔王、出来れば魔王を狩ろうとする連中がな」


「そこに私達も混ざると?」


「『達』じゃないな。

 ……俺はいけない。

 昔はいけたんだが、今はな。

 ユニのことは俺の代わりを知り合いに頼もうと思ってる」


「ユーゴとはここでお別れですか……」


「悲しい?」


「いえ、そんなに」


「俺はその言葉を聞いて悲しくなったよ……」


「別に死んだ訳じゃないですから、いつでも会えますよ。

 それより、仕事に行きますよ」


「はいはい、……って、立場逆になってる!!」



 それから1ヶ月ほど最前線で雑用の仕事をこなし、時期を待った。

 そして、



「おーい、門を開けろー」


「へーい」



 先輩兵士の支持に雑に返事しつつ、ユーゴは門を開けた。

 最前線のだだっ広い緩衝地帯の真ん中を、大きな荷物を背負った一団がやってくる。



「おーい、もしかして、そこにいるのはユーゴかー?」



 遠くからユーゴに向かって手を振る男。

 ユーゴも気だるげに手を振り返す。



「あの人達ですか?」



 と、横から仕事の手を止めたユニが聞く。



「あぁ、あいつらが最前線を超えていった遊撃隊だ。

 そんで、一番前で手を振ってるのが俺の知り合いだ」



 その男はユーゴの横、ユーゴと親しげに話すユニを視認するとニッコリと笑い、言った。



「あの女の子はユーゴの子供かな?」



  *  *  *  *  *  



「いやー、これは失礼した!!

 あまりにも若かったもんだから、勘違いしちまった」


「分かってもらえればいいです」



 その男は開口一番、ユニに、



「ユーゴの子供とは思えない、可愛い娘だなぁ」



 と言って、ユニを苦笑いさせた。

 男は形だけ申し訳なさそうにしつつ、ワハハと笑って誤魔化している。



「まぁ、それは置いといて。

 俺の名前はカイメル。よろしく!!」


「ユニです。よろしくお願いします」



 最初の気まずい空気を無かったことにして、会話が再開した。

 最前線から帰ってきたばかりのカイメルは疲れた様子もなく、快活にユーゴの説明を聞いている。


 ユニが他の最前線から帰ってきた人を見ると、疲れた様子で休む人が大半で、カイメルのように元気そうな人物は見当たらない。

 この人は凄い人かも、とユニは察した。



「そうか。てっきりユーゴが魔界入りすると思って喜んでたのになぁ」


「足手まといにはなりたくないからな。

 ユニだったら成長が見込めるが、俺はそんなことないし」


「ユーゴの分ぐらいは俺がどうにかしてやるから来ないか?」



 と、カイメルがユーゴを勧誘する。

 ユーゴは嬉しそうにしながらも首を縦に振らない。



「そうだなぁ。

 俺にも考えてることがあってな。

 それが上手くいったら魔界に行こうと思ってる」


「早めに頼むぜ?

 俺が老衰する前にな。ハッハッハ」



 ユーゴと親しく話す人物を、ユニはナティ以外で見たことが無かった。

 普段、元勇者と馬鹿にされることが多く、他人と距離を開けているユーゴ。

 そんな姿とは違って、どこか楽しそうに、嬉しそうに見えたのだ。

 ユニは気になったので聞いてみることにした。



「あの、カイメルさんはユーゴと一緒に魔王討伐に参加したんですか?」


「ん? 俺はタイミングが悪くてなぁ。

 俺が魔界に入ったときに、第四の魔王が人界に行ったみたいで、入れ違いになっちまった。

 俺も加勢したかったんだけどな」


「えっと、じゃあ、二人はどうやって仲良くなったんですか?」


「ここで会って、仲良くなったんだよ」


「ここ、って最前線ですか?」


「そうだ。強くなろうと思ったら魔界に近づいていくものなんだよ。

 そうやって集まった奴らだ。

 仲良くなるに決まってる」


「そう……なんですか」


「お前も行くんだろ? 魔界に。

 だったら仲の良い奴ぐらいできるさ。

 まずは俺が友達だ!!」


「あ、はい、よろしくお願いします」


「なんか他人行儀ッ!!

 ま、そのうち慣れるか!!」



 わっはっはと笑うカイメルに、ユニも笑顔を返したのだった。


 それから2日後の早朝。

 カイメルを先頭にユニが加わった遊撃隊は魔界に旅立った。

 それを他の兵士に鬱陶しそうにされながら、(やぐら)に登ったユーゴが見送る。



「行ったな。さてと、エリシアについて調べてみるか」



 ちょっと暇になったユーゴは自分の勘に従って、エリシアの動向を探る事にしたのだった。


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