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元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
海洋都市編
30/82

30. 偽物の海



「夏と言ったら~?」

「「「う、海~……」」」



 リーナが謎の音頭を取り、よく分からないながらも、ナティの生徒三人は決まり文句を言う。

 三人には全くもって馴染みがないので、どこかぎこちない。

 しかし、リーナはそれを気にせず海に向かう………訳ではなく、ユーゴの元に走った。

  

 なんだこれ……、と頭に疑問符を浮かべるユーゴの腕に、リーナの腕が絡み付く。



「ユーゴ~、今日はお祭り前の休日なんだし、一緒に遊ぼ~」

「お、おう……」



 元から露出度の高い服を着るリーナは、海という絶好の機会に、更に露出度を上げた服を着て、ユーゴを悩殺しにかかる。

 面積の小さな水着は、何かの拍子に大変なことが起こること間違いなしの危ういものだ。

 ギリギリのその先を攻めたリーナの水着は大きな胸を出せるだけ外に出していた。

 そんな状態のリーナがユーゴの腕を取ると、必然的に胸が腕に当たる。

 あえてユーゴの方を見ないことで、ユーゴの視線を胸に集める。

 くるっ、と振り返ってみると、ユーゴが慌てて視線を退ける。

 そんなことを繰り返して楽しそうに海に歩くリーナ。

 目のやりどころに困るユーゴ。


 二人に視線を送りつつ、ユニは手で体の下の方を隠す。

 もちろん水着は着ていて、リーナのような破廉恥なものではない。

 ないのだが、露出度の高い服を着たことのないユニには十分恥ずかしいものだった。


 上半身は、水着用の生地で、薄めの白い服を着ている。

 薄い生地では破れてしまうのではないか、と不安になるが、中にも水着を着ているため、それはあまり気にしていない。

 問題は下に穿いている青い水着だ。


 こちらは普通の水着、つまりはパンツのような形で、水着に慣れていないユニにとってはパンツそのものだった。

 盛んな男が集まる場所でパンツを晒しているのではないか、と思うと、ユニの顔は自然と赤くなり、内股でモジモジとしたままその場を動けないでいた。

 しかし、水着を隠して恥ずかしがっている姿が周囲を更に興奮させていることに、ユニは気づかない。


 これからどうしようか、と考えていると、誰かの指がユニの白い太ももをなぞる。



「ひゃあッ‼」



 声に反応して周囲の男から熱い視線が送られる。

 恥ずかしくなったユニは上の服を下に寄せて隠そうとするが、チラチラと下の水着は見えてしまう。

 見えても問題はないのに隠そうとするせいで、より一層視線が集まるのだった。


 

「何するんですかッ‼」



 ユニが怒って後ろのナルミシアを睨む。



「ゴメン、ついつい………」



 ナルミシアは初めての大人の水着を着ている。

 リーナに相談して普通の水着を買ったのだが、ユニ同様にナルミシアも水着に慣れておらず、ユニを盾にして恥ずかしがっているのだ。


 恥ずかしがっているのは女子二人だけではない。

 その二人から少し距離を取って立っているツラックも初めての水着である。

 ツラックもまた、下の方を隠していたが、理由は少し違うようだ。


 そんなうぶな三人が盛んな男達に襲われないように、ナティが睨みを効かせていた。

 ナティも水着を着ているのだが、女子二人とは色々と違う。

 腕や足は筋肉で盛り上がっていて、お腹の腹筋はくっきりと6つに割れていた。

 しかし、意外なことに、それなりに大きな胸が付いている。

 

 ユニはその胸が脂肪なのか筋肉なのか気になってしょうがなかった。

 そんな視線を感じたのか、ナティがすっ、と抱きしめた。

 開放されたユニが微妙な顔をしているのに気づき、ショックを受けたようだが、諦めたように「…これでいい…」と頷いていた。

 

 水に入れる時間は決まっている。

 長時間いると海の魔獣を引き寄せるからだ。

 その少ない時間を海で過ごさせるために、ナティは生徒三人を押して海に向かった。



「わぁー、ひろーい」



 ナルミシアが眼前の光景に声を上げる。 

 ナティは困ったような顔で説明した。



「ナルミシア、実はな、これは海じゃないんだ」

「ええッ‼ウソ‼」

「本当だ。これぐらいの大きさなら水の都にもある」



 目の前に広がる水溜まりが大きいのは確かだ。

 この水溜まりは、大陸で見れる湖の中では大きい方に入るだろう。

 ただ、これはちょうど昨年できたものなのだ。

 昨年の海の魔獣を捕まえる際に、窪みのあったこの場所に海水が流れ込み、知らない人が海と勘違いするほど大きな水溜まりができた。


 だから、これは本当の海ではない。

 しかし、「本当の海で遊ばれると監視が大変だし、遊びなら、こっちの湖でやったらいいんじゃね?」という考えのもと、遊べるのは湖だけになっていた。


 冷たい水を手ですくい互いにかけあったり、泳いだりすると、時間はあっという間に過ぎ去った。

 結局、本当の海を見せることが出来ないまま遊びの時間は終わり、ナティは少し悔しそうだった。


 

「そんなに気にすること必要はないだろ」

「ユーゴ、そうは言ってもなぁ、本物の海の素晴らしさは、本物の海じゃないと分からないんだ」

「本物の海を見ることは可能だろ。お祭りで見るわけだし」

「実際に体験するのがいいと思うが……」

「ほら、三人を見てみろ」

「……?……あぁ」



 海水混じりの湖の水を舐めてショッパイと騒いだり、足のつかない場所でプカプカと浮いて戻れなくなったり。

 見慣れない大量の水を前に三人は十分楽しんでいた。



「三人共満足したみたいだし、それでもいいんじゃないか?」

「ふっ、そうだな。ところでユーゴ、お前は何をしてたんだ?ずっと見かけなかったが……」

「それは……、まぁ……、楽しく過ごしてた……」

 


 リーナに、あんな店やこんな店に連れ込まれたことは語らず、ユーゴは適当にぼかした。



「それじゃあ、明日からだな」

「なんかあるのか?」

「明日から祭の準備だ。忙しくなる。ユーゴも手を貸してくれ」

「………それってもしかして、そこら辺にいるマッチョ基準の手伝いじゃないよな」

「それは………ユーゴがどう感じるか次第だ」



 色々と悟った顔のユーゴは、どうにかしてサボれないか、と考えるのだった。



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