表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者の先生と勇者になりたい少女  作者: 小骨 武
海洋都市編
27/82

27. 試験


 日差しが夏に向けてジリジリと暑さを増していた。

 しかし、未だ冷たい風が体を冷やす。


 ボオッ、と空中に火玉が現れる。

 手もとから数メートル先に飛んだ火玉は、地面に立てられた丸太に直撃する。


 余り火力がなかったのか、丸太は焦げ跡すらなく、地面に刺さったままだ。



「次の人」



 はい、と返事をして、目印の上に立った。


 暑すぎず、寒すぎずの快適な気温ですね。

 いい感じです。


 この前一人で練習したように、火球を生み出し、丸太にぶつけた。


 丸太は上部が破壊されて丸く欠け、全体は黒く焼け焦げた。



「よしっ」




 心の中で「絶好調です‼」と呟いて、元の場所に座った。

 隣には仲良しのナルミシアがいたが……、表情は暗い。



「ユニちゃんは凄いなぁ………あはは………」

「ナルミシアも……頑張ればなんとか………」

「…………………………………」



 確認しよう。


 王都第一魔法学校は『学校』だ。

 学校とは生徒が学ぶ場所であり、学校は生徒が学んでいるかどうかを定期的に調べる。

 試験、という形で。


 とは言っても、現在、王都第一魔法学校は貴族の三男が集まるような落ちぶれた学校だ。

 そんな学校のテストに合格することは難しくないし、簡単だ。

 生徒の中には、テストの日は学校の授業がないから楽、と言っている者もいる。


 その程度なのだ。

 

 しかし、その程度のテストに合格するのが非常に困難な者がいる。


 ナルミシアだ。



「次の人」



 ナルミシアは立ち上がり、緊張した面持ちでテストに挑む。


 ナルミシアが立った瞬間に、ユニ以外の生徒は少しずつ後ろに下がった。



「(落ち着いて、大丈夫。ユニちゃんがやったみたいに火を起こす‼)」



 ナルミシアの手の上で炎が渦巻き―――――爆発した。


 それなりに大きな爆発だったが、よく爆発させるナルミシアは、体から煙を上げる程度で済んだ。


 カサミナの「次の人」という声に促されて、元の場所に戻る。


 悲壮感溢れるナルミシアが座った場所の周りには、煙から逃れるために、誰も座っていない。


 あわわ、とユニが慌てて近寄ってくるが、ナルミシアは地面を見つめて動かなかった。




「こんなの無理に決まってるじゃんッ‼」



 ナルミシアの大きな声がお風呂場に響く。


 他の女子生徒たちはビクッと驚き、そそくさとお風呂場を後にした。


 最初は数名いたお風呂場に、今は二人。

 うえーん、と泣くナルミシアとそのナルミシアを洗うユニ。


 ナルミシアは魔道具のシャワーも使いこなせないので、爆発で汚れた体を洗うにもユニに手伝ってもらう必要があった。


 ユニはシャワーの効能でナルミシアの汚れを落としつつ、抱きついてくるナルミシアの頭を撫でる。


 頭を撫でるのは洗うためではない。

 魔力を込めればシャワーが自然と汚れを落としてくれるのでその必要はない。

 ユニはナルミシアを慰めるために撫でた。


 ユニの小ぶりの胸に泣きつくナルミシア。

 ユニが視線を下に向けると、自分の小さな胸の下に、大きな胸が揺れていた。


「いいなぁ……」と思いつつ、時間が迫っているのを感じる。

ゆっくりと休んでいる暇はない。

 他の生徒にはあるのだが、ナルミシアにはない。


 悲しいかな。

 テスト不合格者には補講があるのだ。


 ナルミシアは特別に、テスト当日に補講がある。


 ナルミシアの固有魔法想念伝達(テレパシー)

 自身と他者を魔法で繋ぐことで、無言で会話できる特別な魔法。


 しかし、それがあるせいで他の魔法はろくに使えない。

 固有魔法の代償は大きかった。


 そんなわけで、テストを突破することはほぼほぼ不可能だった。

 学校側もそれはわかっているので、テスト当日に補講が入るのだ。


 少し時間に遅れながら、ナルミシアと付き添いのユニは補講の場所にたどり着いた。


 やさぐれた様子のナルミシアを見て、補講を担当するナティはため息をついて言った。



「ナルミシア、さっさと終わらせて遊びに行ったらどうだ?真面目にやれば補講ぐらいすぐに終わる」



 魂が抜けたように虚ろな目のナルミシアは魔法を発動する。



 ―――――――――――――<接続(コネクト)>――――――――――――



 ナティの頭の中で、ザザッと騒音が響き、ナルミシアの声が聞こえた。



 ――――――――繋げたよ………―――――――――――――――――――――



 ―――よし、いい感じだ。ただ、ちょっと接続時の雑音が大きい。雑音が小さくなるように、もう一度接続してみてくれ――――――――



 ――――――はい………―――――――――――――<切断(ディスコネクト)>――――



 深呼吸を一回挟み、もう一度、想念伝達を行う。



 ―――――――――――――――<接続(コネクト)>――――――――――



 ナティの頭の中に、ササッ、と先程よりも小さな雑音が響く。



 ―――――――――繋げたよ……――――――――――――――――――――――



 ―――――良くなっている。その調子だ。次は横にいるユニにも同時に繋げてくれ―――――――――――――



 補講開始から30分後、合格扱いになり、ナルミシアの試練は終了した。



「こ、これでもう、夏休み一直線ですよ。後は楽しいことだらけです」

「うん……」



 ナルミシアにはいつもの元気がなかった。



「どうします?遊びに行きますか?」

「うーん……、もう寝る」

「そ、そうですね。疲れたと思いますし、今日のところは休みましょう」



 ユニはナルミシアの元気が出るように明るく接したのだった。



 その後、ナルミシアの大きな胸に、ユニの顔は挟まれていた。

 心地よい感触ではあったが、抱き締められていて脱出できず、ユニは空気を求めてもがいた。


 ユニは、『寝る』というのが『ユニを抱き枕にする』と同じ意味ということに、遅れて気付いたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ